今の捕手、片手捕球とフレーミングの誤解

ワタシが野球を見始め、技術本を読み始めたのは、巨人V9終盤くらいの頃。捕手のキャッチングのところには、野村克也森昌彦らの記述があった。あの当時、キャッチャーミットでの捕球では、左手に嵌めたミットを後ろから支えるように右手を添え、捕球したミットをピクリとも動かさないニュアンスだったように思う。ミットの後ろに右手あるから、盗塁や牽制の送球対応にも早いハズだった。水島新司野球マンガドカベン」でも、両手でミットの芯で捕球し、「バシッ!」という音を響かせる捕手が描かれていた。

それが、捕手のファールチップ負傷が頻発して片手捕球がフツ~になり、右手を腰に回す姿勢に変わった。ドカベンでも、高3くらいから山田太郎は後輩にそう指導していた。

巨人で言うと、吉田や矢沢まで森の影響が残っていたが、山倉辺りから片手捕球とミットをピョコピョコ動かすのが当たり前になった。以後、村田や阿部や小林まで動くミットは巨人捕手の定番になった。ロッテから巨人に移籍したヒルマンは、村田のキャッチングに腹を立て、故障と偽ってアメリカに帰ったし、マイコラスの小林へのリクエストは書き立てられ、ダメなキャッチングの見本として挙げられるようになった。

動くミットのキャッチングは、投手のコントロールと捕手の練習量にも拠る。練習時に捕手が自分で受けず、他の補欠や2軍捕手やブルペン捕手にやらせ、片手捕球でもミットを動かさないトレーニングが不足したりする。

昔の捕手が、南海・野村や阪神・田淵を除けば投手の投球練習相手第1で打撃練習を免除されていたのに比べて、今の捕手は捕球量が格段に減っている。

古田や谷繁は、所属チーム投手の質に助けられた部分もあったし、捕手指導にも理解があった。

 

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谷繁氏が指摘する「フレーミング」の誤解。いまの捕手には「みっともないと思うことも…」
7/16(金) 11:11 Yahoo!ニュース
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谷繁元信氏。
キャッチャーとして、プロ野球史上最多となる2963試合の出場数を誇り、ゴールデングラブ賞を6度受賞した谷繁元信さん。プロ野球の審判からは、「谷繁選手のキャッチングが一番見やすかった」という声が出てくるほど、高い捕球技術を備え、ピッチャーとの信頼関係を築き上げてきた。ピッチャーを生かすには、キャッチャーの力が絶対に必要となる。キャッチングやワンバウンドストップについて、プロならではの考えを明かしてくれた。(前編)

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ボールをストライクに見せるのは技術ではない
──ここ数年、メジャーリーグの影響もあってか、「フレーミング」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。高等技術と見られる一方で、ミットを動かしすぎているキャッチャーもいて、賛否があるようですが、谷繁さんはどのように捉えていますか。

谷繁 本当によく耳にするようになりましたね。以前、古田敦也さんとこの話題になったのですが、一致した考えは「『ストライク』の球を『ボール』とコールされないためのキャッチング技術」でした。もう少し言えば、『ストライク』か『ボール』かどちらにも取れるギリギリのコースを、『ストライク!』と言ってもらうためのキャッチング。決して、ボール球をストライクに見せるキャッチングではありません。高校生にも、ここは勘違いしてほしくないところですね。ボール球はボール球ですから。


──現役時代、「ボール球をストライクに見せる」という考えはなかったですか。

谷繁 ないですね。アンパイアの方といろいろとコミュニケーションを取っていく中で、「キャッチャーがミットを動かすのは、ボール球をストライクに見せるため。だから、ミットを動かしたらボール」という話を聞いて、もうそのとおりですよね。人間の心理としてストライクを取ってほしいからミットを動かす。正直、今のキャッチャーを見ていると、「みっともない」と思うこともあります。アンパイアの心理を考えたほうがいいですね。


──何か、あがいているような感じがしますか。

谷繁 そうです、そうです。ボールはボール。そんなことをするなら、球がきたところできっちりと止めてあげる。そうすれば、アンパイアはしっかりと見てくれます。

(後編につづく)

谷繁元信(たにしげもとのぶ)
1970年生まれ、広島県出身。江の川高から1988年ドラフト1位で横浜大洋ホエールズに入団(98年に日本一)。2002年より中日ドラゴンズに移籍、落合博満監督の下、リーグ優勝4回、日本一1回に貢献した。2014年から選手兼任監督。2015年に現役引退、2016年に監督を退任。通算3021試合出場(NPB記録)、通算2108安打、ゴールデングラブ賞を6回、最優秀バッテリー賞を4回受賞。現在はプロ野球解説者として活動する。


大利
ベースボールチャンネル編集部

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