水島新司「ドカベン」意外な方法での得点。

水島新司ドカベン」、大甲子園以降の山田太郎の最大のライバルは中西球道になっていた。しかし、「ドカベン」全編通して、山田太郎最大のライバルは、やはり不知火だと思う。最初の登場は、鷹丘中最後の試合、対東郷戦のスタンドから。東郷小林の本塁突入にスパイクされた山田を、不知火がスタンドから現れ、徳川の酒とサラシで手当した。小林が山田を敬遠した時も、勝負を促した。高校では、神奈川県で雲竜の東海と不知火の白新が関門だった。(2年春夏だけ、1学年上の横浜学院の土門がいた。)割と、雲竜相手には真っ当に戦って勝たせていたが、不知火には山田が抑えられるコトが多く、岩鬼に打たせたり、特別代走香車に走らせたり、この意外な勝ち方をさせたりした。明訓高校時代、唯一の黒星を弁慶高校に付けられた2年夏は、大阪通天閣高校坂田三吉だった。坂田三吉と不知火守を比べたら、明らかに全て不知火が上回っていると思ったし、神奈川県最初の関門で終わってるのが、惜しかった。

プロでは、日ハムで土井垣将とバッテリーを組み、ノーヒットノーランデビューした。イチロー殿馬オリの優勝決定の相手も不知火&土井垣だった。確か、国内FA権取得で四国IDに移籍して以降、影が薄くなったように思った。

水島新司へクレーム言って良ければ、大甲子園の3年夏甲子園決勝が、全くの新キャラ紫義塾で、ラストが壬生狂四郎だったコト(それこそ、青田中西球道と決勝で引き分け再試合やれば良かったのでは?)と、最終編ドリームトーナメントの決勝相手は正統なドカベンライバルチームたる、四国IDでやって欲しかった。高1夏準決勝の犬飼小次郎との死闘を最後に見たかったコトだ。

でも、「巨人の星」「侍ジャイアンツ」みたいに巨人全面ではなく、最高の野球マンガだった。

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ドカベン』で学べる“超難解”野球ルール3選!プロでも悩む緻密すぎる描写とは?
9/9(木) 18:01 Yahoo!ニュース
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画像は『ドカベン』(秋田書店)第43巻・書影より引用
 日本中を沸かせた東京オリンピックパラリンピックは夏の終わりとともに閉幕を迎えたが、野球ファンにとって9月はペナントレースが佳境を迎える季節。ひいきチームの勝敗に一喜一憂している人も多いのではないだろうか。

【ランキング】ドカベン山田が圧倒的!「野球漫画史上“最強”のスラッガー」ランキング

 ところで、長い年月見ているとつい忘れがちになってしまうが、冷静になって考えてみると野球のルールって複雑すぎないだろうか? 一般に球技のルールは細かくなりがちではあるけれど、野球のそれは他の競技とは比較にならないほど。奥さんや恋人などあまり野球に興味のない人と一緒に見ていて「ルールが分からない」と言われるのは野球ファンあるあるのひとつだ。

 それでは逆に、なぜ野球ファンはその複雑なルールを理解できているのか? その答えは、幅広い世代に多大な影響を与えてきたひとつの野球漫画にある。

 それが、野球漫画の第一人者である水島新司氏の代表作『ドカベン』である。

週刊少年チャンピオン』で1972年に連載がスタートした『ドカベン』は、他の水島野球漫画のキャラクターも登場する『大甲子園』(1983年~1987年)を経て、1995年以降は『ドカベン プロ野球編』『ドカベン スーパースターズ編』『ドカベン ドリームトーナメント編』とシリーズを重ね、2018年に大団円を迎えた。

 非現実的な特訓で魔球や必殺打法などを編み出すような作品とは一線を画し、作戦・戦術や技術的な側面をフィーチャーしたリアル志向の路線を野球漫画に定着させた。とはいえ荒唐無稽な技などの要素がないというわけではなく、むしろたくさんあるのだが、その理由づけはおおむね理論的かつロマンにあふれ魅力的だった。また野球経験者や、ときにはプロですら見逃してしまうような細かなルールについてもしばしば描写されたのも特筆すべき点で、読者は主人公・ドカベンこと山田太郎をはじめとする明訓高校の活躍に心躍らせつつ、いつの間にか野球のルールまで学んでいたのだ。

 その代表的な例を、実際の作中シーンを3つ挙げて紹介したい。

ノムさんも首をかしげた「4つめのアウト」
 まず最初は、山田たちが2年生の夏、明訓高校が神奈川県予選で白新高校と対戦した試合で起きたプレーだ。白新のエース不知火守に9回までパーフェクトに抑えられていた明訓は、0-0のまま迎えた延長10回表でついに1死満塁のチャンスを作る。

 明訓の5番打者、微笑三太郎がスクイズを試みるも小フライになり、不知火がこれをダイビングキャッチ。三塁ランナーの岩鬼正美は帰塁せずそのままホームインしていたが、不知火はランナーの山田が飛び出していた一塁に送球、一塁手はそのままベースを踏みダブルプレーが成立、明訓は無得点でチェンジとなった……かに見えた。

 ところがベンチに戻った白新ナインはスコアボードを見て驚愕することになる。明訓に1点が入っていたのだ。結局これが決勝点となり試合はそのまま明訓が勝利する。

 あのノムさんこと往年の名選手にして名監督の野村克也氏も水島に「あんな嘘を書いたらアカンで」と言ったという逸話があるぐらいだが、結論から言えばこの描写が正しいのだ。

 このシーンについて理解するためには「フォースアウト」と「アピールアウト」の違いを知っておく必要がある。

 フォースアウトとは走者に進塁義務があり、守備側は走者にタッチしなくても塁を踏めばアウトにできる。それに対してアピールアウトは、守備側が指摘して初めてアウトになるプレーで、タッチアップが早すぎた場合やベースの踏み忘れなどがその例だ。ここで重要なのは、フォースアウトなら守備側の3アウトが攻撃側のホームインより時系列を無視して優先されるということだ。

 つまり、不知火は一塁ランナーの山田をフォースアウトにしたと思っていた。しかしこれは勘違いで、実際にはフライアウトで進塁義務がなかったためフォースアウトではなくアピールアウトで、先にホームインした得点が認められてしまったのだ。これを防ぐには、三塁ランナーの岩鬼をアピールアウトにする必要があった。これはいわば4つめのアウトで、3つめのアウトとして置き換えることができる。

 というのがものすごくはしょった説明だが、どうだろう、お分かりいただけただろうか?

 これは「ルールブックの盲点の1点」とも呼ばれ、同様のプレーは現実の高校野球プロ野球でも複数回起きているが、2012年夏の甲子園でのケースでは得点した側の選手が「ドカベンを読んで知っていた」とコメントしている。また、高校野球漫画『ラストイニング』(中原裕)でも描かれたことがあるなど、コアな野球ファンには逆におなじみのプレーだとも言える。

■現実より30年以上早かったビデオ判定
 そしてこの白新高校との試合では、もうひとつ面白いケースが描かれている。

 7回裏、白新の攻撃で不知火が放ったレフト線への痛烈な打球に、明訓の左翼手・微笑三太郎がスライディングキャッチを試みる。キャッチはしたものの地面すれすれで、ダイレクトなのかワンバウンドなのかが非常に微妙なプレー。ところが、それをジャッジすべき線審がなんと熱中症で倒れているという間の悪さ。審判団は協議の末、試合を放送していたテレビ局に依頼し、ビデオ映像を確認してジャッジしようとするが、肝心の場面は三塁手岩鬼の頭に隠れて見えない……。

 結果として、倒れていた線審が戻ってきてアウトを告げるのだが、この一連の流れは、現在プロ野球で行われているビデオ判定を想起させ、現実での導入どころか必要性が論じられるようになった時代からすらも、はるかに先駆けて『ドカベン』で描かれていたということになる。精緻な描写に加えて、野球という競技を知り尽くしているがゆえに発揮されるこうした先見性もまた、『ドカベン』のみならず水島野球漫画の魅力のひとつなのだ。

■グラブを投げてボールに当てたら三塁打?
 最後に紹介するのは、山田たちが2年生の夏の甲子園初戦での東東京代表・ブルートレイン学園戦。

 ブルートレイン学園の4番打者・桜が放った左中間への大きな当たりに、追いつけないと悟った明訓の中堅手・山岡がグラブを投げつけてボールを止めてしまう。ブルトレ学園の選手はすべて当時の国鉄の特急列車にちなんだネーミングになっていて、その名の通りそろって俊足なため、抜ければランニングホームランになってしまうことを危惧してのことだった。これを見ていた左翼手・微笑三太郎は「グローブを投げて当てちゃ三塁打ですよ」とたしなめるが、実際にはバッターランナーは三塁を回ってホームインし、結局はランニングホームランとなってしまう。

 このシーンは、アウトにならずに安全に進塁することができる塁の数についてのルール、いわゆる「安全進塁権」に関わるものだが、それに対する誤解をクローズアップしている。その中に「野手が帽子やマスク、グラブなどを故意に投げてフェアボールに触れさせた場合、3個の安全進塁権が与えられる」という規定があるのだが、同時にこれは「ボールインプレイ」、つまりタイムが掛かっていない状態なので、走者はアウトを賭して本塁に進んでもいいのだ。

 ちなみに、もしグラブがボールに当たらなければスタンドに入っていたと審判が判断すればホームランが宣告され、逆にグラブを投げたがボールには当たらなかった場合はおとがめなしとなる。

 ここまで紹介した以外に、両手投げで投球モーションに入ってもどちらの手で投げるのか分からない、赤城山高校の投手・わびすけこと木下次郎の変則投球フォームは、ルール改正により現在ではボークである、みたいな例もあったりして、そうしたルールすれすれのけれん味とリアリズムとが絶妙なバランスで成立しているのが『ドカベン』の魅力でもある。

 シリーズ完結まで含めれば総計200巻以上にもなる大長編だが、どこから読んでもその面白さは変わらない。いきいきと躍動するキャラクターだけでなく、ルール解説などその緻密な描写に注目して読み直してみるのもよさそうだ。
小田サトシ

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