ニュルブルクリンクを通じたクルマ作り

ニュルブルクリンクを6分半ちょい?約21キロを400秒、平均秒速50メートル、つまり時速180キロ。

ただ、近年のクルマ作りの傾向は大馬力大重量ながら、パワーウエイトレシオ2.0、トルクウエイトレシオ20くらい。市販車に馬力トルクや重量制限はない。いっそ、レーシングカーでも同様なタイムを取って見れば良いのだ。

個人的には、昔のGCカーで走らせたら、どうかと思う。70年代終盤のマーチ74SBMWとかで、2リッター直4NAで300馬力20キロ超、600キロ。今のクルマほど最高速が出なくても、コーナーは遥かに速いハズ。

今の過大装備・過大重量・過大サイズ・過大馬力・過大トルク・過大価格のクルマ作りを見直すには、コレ以外に契機はないように思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ポルシェやGT-Rが凌ぎを削ったニュルブルクリンク最速タイムの称号に異議あり!?
9/11(土) 11:00 Yahoo!ニュース
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ベストカーWeb
 2021年6月14日、ポルシェ911GT2 RSがニュルブルクリンク北コース(全長20.6km)において、これまでのAMG GTが持っていたラップタイム6分43秒616を更新し、6分43秒300という市販車最速の新記録を樹立した。

【画像ギャラリー】ニュル最速の栄光を求めてしのぎを削るクルマたちを写真でチェック!!

 新記録を打ち立てたポルシェ911GT2 RSは、ニュルブルクリンクスペシャリストであるマンタイレーシングとヴァイザッハのポルシェエンジニアチームが共同開発したマンタイパフォーマンスキットを装着した700psのスペシャルマシン。

 ニュルで市販車最速のラップタイムこそ、「世界最速の証」とばかりに、日産は加藤博義氏をテストドライバーに据え、1988年に最初のテストを行い、R32GT-Rをはじめ、歴代GT-Rをニュルで鍛え、タイムアタックを行ってきた。2000年代にはポルシェ911と日産GT-Rが繰り広げた、ニュルの最速ラップタイム争いが思い出させる。

 2008年4月にR35GT-Rが7分29秒3という市販車最速ラップタイムを記録したが、それを見てポルシェが「セミスリックタイヤを履いたのではないか、このタイムに疑惑がある」と日産に抗議したこともあった(後日、日産 水野和敏氏が反論)。最近ではメルセデスAMGも加わり、ポルシェとランボルギーニで市販車最速を争っている。

 またFF最速の名をかけて、シビックタイプRとルノーメガーヌRSトロフィーRのバトルも熾烈さを極めている。

 そこで、今、改めて問う!ニュルブルクリンク北コースのラップタイムに意味はあるのか?ニュルブルクリンク北コースで走ると何がわかって、どこがよくなるのか?レーシングドライバーでモータージャーナリストの松田秀士さんが斬る!

文/松田秀士
写真/ポルシェ、日産、メルセデス・ベンツベストカーweb編集部

■市販車最速6分38秒835が意味するもの
 
[関連写真]
2020年11月4日に6分43秒616を記録してニュル市販車最速となったメルセデスAMG GTブラックシリーズ
 ●AMG GTブラックシリーズ:2020年11月4日
6分43秒616(20.6kmコース)
6分48秒047(20.8kmコース)

 ●ポルシェ911GT2 RS マンタイパフォーマンスキット:2021年6月14日
6分38秒835(20.6kmコース)
6分43秒300(20.8kmコース)
※20.6kmは改修後のT13グランドスタンド前のショートストレート除くコース

 良いクルマとはなにか?長年モーターレーシングを生業にしてきた筆者自身、時々考え込んでしまうことだ。SUVやミニバン、さらには廉価なコンパクトカー、ハイブリッドや軽自動車といったモデルがしのぎを削る自動車業界。

 販売台数でいえば、ほんのひと握りのスポーツモデル。いったいニュルでタイムを出すことにどれほどの意味があるのだろうか?

 その前に、最近のニュルの状況を見てみよう。相変わらず、というか、やっぱり、というか。現在も激しいタイム合戦が行われていた。

 公道走行が可能な量産市販車のレコードタイムでは、直近の例でいうと2021年6月14日にポルシェ911GT2 RSに専用開発のマンタイパフォーマンスキットを装着して、2020年11月4日にメルセデスAMG GTブラックシリーズが叩き出した6分43秒616の記録を5秒弱短縮する6分38秒835を記録している。

 これは旧計測地点を基準にした20.6でのタイム比較だ。5秒弱というと大きな差に思える。ニュルの全長は20.6でコーナーの数は172。鈴鹿サーキットが1周5.807km。約1/4のスケールとして1周あたり1秒ちょっとの差である。ただし鈴鹿サーキットのコーナーの数はニュルの172に対して18だ。4倍しても72。ニュルの半分もコーナーがないことになる。

 ニュルは世界有数のハンドリングコースである鈴鹿サーキットもおよばない難コースであることが理解できるだろう。しかも今回ポルシェ911GT2 RSが記録した平均速度は185.87km/h。つまり超高速で走行したことになる。この平均速度での5秒弱の差がいかに大きなものかは想像に難くない。

 筆者自身、ニュル24時間レースに3度、サポートレースともいえるVLN(4時間耐久)に2度出場した経験があり、ニュルがどれだけ厳しいコースであるかを熟知している。

 今回最速タイムを更新したポルシェ911GT2 RSのエンジンパワーは700psで、そのパワー自体も強烈だがスーパースポーツの世界では意外にもありふれたパフォーマーだ。そのポルシェ911GT2 RSが大幅にタイムを短縮した裏にはマンタイパフォーマンスキットというエアロダイナミクスを含めたスペシャルキットの存在を無視できない。

 ネーミングにあるマンタイとはニュル24時間レースで常にトップコンテンダーであるマンタイレーシングのこと。ポルシェとの関係が深く、今回のパフォーマンスキットはポルシェ社との共同開発。キットを含めた共同開発により200km/hの速度領域でダウンフォースがF:49kg→70kg、R:93kg→200kgに増加したとしている。

 タイムアタックを担当したドライバーのラース・カーンのコメントも「まるで路面に張り付いたように旋回しブレーキングも驚異的」と表現している。高速のニュルであるからこそ空力への効果が大きく、それを支えるボディ、サスペンション、重量配分なども同時に進化が求められる。

 コーナリング比率で鈴鹿サーキットよりも頻度の高いニュルでタイムを上げるには、パワーではなくエアロダイナミクスの改善によるダウンフォース獲得である、ということを如実に現したポルシェ911GT2 RSの記録であったと思われる。

 つまり空力改善にはまだまだノリシロがあるということなのだ。このことは、いくら0~100km/h加速が速いスーパースポーツであっても、このニュルを走らせればそのパフォーマンスを生かし切れるとは限らないということを表している。

■いまやニュル最速は人々の煩悩=欲望=夢の象徴
 
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開発責任者の水野和敏氏とレーシングドライバー鈴木利男氏による開発チームはニュルブルクリンクでのテストを最重要視してきたのを思い出す。2008年当時は7分26秒70を記録し、現在の最速タイムは2013年9月30日に記録したGT-R NISMOの7分8秒679
 過去にはGT-RやLFA、さらにはインプレッサ、最近では現行クラウンもニュルでテストを行い、そのフィードバックが市販車に生かされてきた。実際、筆者自身JARIの高速周回路でGT-Rの最高速テストを行い300km/hオーバーを記録したが、このときの車両の安定性は素晴らしいものだった。

 ニュルには長い直線もあり、S字を切りながらアクセル全開で次々にシフトアップしながらの急な下り坂から平坦路に、そしていきなり登り坂へと、一般道では峠であってもおよそ考えられないような厳しいコースレイアウト。しかも路面はバンピー。スーパースポーツであれば300km/hを超える速度も記録するので、GT-Rのステアリングを握れば鍛え上げられた成果が車両にインプットされているのだと確信する。

 たしかに、スーパースポーツといえども日本の交通法規下でこのような非日常な速度を試せる場所はない。試したいならサーキットだろう。

 しかし、スーパースポーツを購入した人が皆サーキットを走って楽しんでいるかというと、そういうわけでもない。その記録を出したのと同じ仕様のモデルを購入して購買欲を満たしている、というのが本当のところだろう。人は煩悩に満ちている。

 仏教の世界では煩悩を解脱することで悟りの境地に参るとされるが、欲望は煩悩だ。もっと速く、という欲望無くしてこのようなモデルは完成せず、つまり煩悩の結晶がポルシェ911GT2 RSということになる。

 この煩悩マシンの捉え方は人それぞれだろう。そんな高負荷で走らせることもないのに、どんどんエスカレートさせたテストを行ってクルマを開発することになんの意味があるのだろうか?とういう意見が出てもおかしくない。ある部分、筆者もその意見に同意する。

 しかし、それがどれほど非現実的であったとしても、開発(=タイムアップ)を止める=煩悩の無いモデルになってしまうのだ。煩悩=欲望のないモデルに人はどれほどの夢を託せるのだろうか?

 もう少し多面的に見れば、夢を追い続けることを生業とする人々がいる。いちばん分かりやすいのが芸術家であり音楽家だ。見ることや聴くことによって幸福感や絶頂感を味わうことがある。

 筆者から見ればニュルのタイムアタックもそれと何ら変わるものではない。さらにクルマそのものへの技術革新に繋がっている。裾野の広い自動車産業の経済的発展にも貢献しているのだ。つまり夢の開発は無意味ではない。

■ニュルでテストした恩恵とは?私たちが感じる実用面で何か良いことがあるか?
 
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ニュルタイムFF市販車最速7分40秒100を2019年4月に樹立したルノーメガーヌ RSトロフィーR。2019年11月、鈴鹿サーキットでは2分25秒454を記録。ステアリングを握ったのはルノー開発ドライバーのロラン・ウルゴン氏。ちなみに、セットアップをアドバイスしたのは谷口信輝選手
 もっとドラスティックに考えて、このような高速高機能性能アップへの終わりのない開発は実用面で何か良いことがあるのだろうか?

 おもしろいのがFF車というカテゴリーにおけるタイムコンペティションがある。ルノーメガーヌRSとホンダシビックタイプRの戦い。FFはエンジンが横置きなのでトランスミッションもエンジンと並列に搭載される。

 つまりフロントがリアに比べて非常に重くなる。その重量はフロントタイヤに重くのしかかるのでグリップは良くなるが、フロントタイヤは操舵も行い、速度が増すと慣性モーメントも大きくなる。前後タイヤで荷重差によるグリップバランスの適性がキモとなる。つまりニュルのような高速のコースには適していない。

 実際、メガーヌRSは2019年に記録した最速タイムの時には4コントロール(4輪操舵システム)もデュアルクラッチも使用していなかった。これはニュルのコース特性が、高速コーナーが多いことに起因する。

 特に4コントロールはニュルのようなオーバー100km/hの中高速域でのコーナリングでは、リアはグリップ重視の同位相にステアされるので、かえってFFのウィークポイントであるアンダーステアーを誘発しやすいことが考えられるのだ。とはいえ、それまでに試行錯誤の上に開発されたこれらのシステムは現行モデルに生かされている。

 特に4コントロールはFF特有のフロントタイヤだけが摩耗する特性を見事に打ち消し、4輪のローテーションが可能となっている。

 またリアサスを硬めることでリアの安定性を出していたセットから、よりソフトにすることが可能となり、乗り心地も大きく改善している。これらは速さを求める試行錯誤のなかで見えてきた技術が一般路の速度域の中では有用であったということ。

 またニュルの高低差は実に300mにもおよぶ。1周の距離が長いから成し得るコースレイアウトなのだが、とにかくアップダウンが激しい。さらに出口が見えないブラインドコーナーの多さに驚かされる。路面の凹凸も激しく、路面の舗装も雑多で、そのμはエリアだけでなくどのラインを通るかによっても大きく変わる。

 特にウェットではチョイスするラインによっては致命傷となる。ここでは最近よく言われるボディ剛性だけではダメで、サスペンションのシステムやジオメトリー、そしてストロークの余裕が求められる。

 一般的に過去の欧州車が日本車よりも特にコーナリングが優れていたのはニュルでテスト開発をしていたからであり、その結果リバンプのサスペンションストロークが十分にあったから、ともいわれている。ニュルのように飛び跳ねる路面ではサスペンションの伸び側の路面追従性が重要になるのだ。

 このようなことを考えると、これからもますます技術革新によるタイムアップと、そこにヒントを得た一般車にフィードバック可能な技術が生まれると確信する。

 例えSUVやミニバン、あるいは廉価なモデルであったとしても、ニュルで得た知見やヒントがリーズナブルにキャリーオーバーされる可能性はある。

 ニュルでテスト開発することは、速さを求めることだけにフォーカスしているとは限らず意味のあることなのだ。

ニュルブルクリンク北コース市販車ラップタイムランキング(1周20.6km)

1位:6分38秒835/ポルシェ911GT2 RS(2021年6月14日)
2位:6分43秒616/メルセデスAMG GTブラックシリーズ(2020年11月4日)
3位:6分44秒97/ランボルギーニアヴェンタドールSVJ(2018年7月26日)
4位:6分45秒90/NIO EP9(2017年5月12日)
5位:6分48秒28/ラディカルSR8LM(2009年8月19日)
6位:6分52秒01/ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテ(2016年10月5日)
7位:6分55秒08/ラディカルSR8(2005年9月28日)
8位:6分55秒34/ポルシェ911GT3、992型、2020年9月20日)
9位:6分56秒4/ポルシェ911GT3 RS、991型(2018年4月16日)
10位:6分57秒/ポルシェ918スパイダー(2013年9月4日)
11位:6分59秒73/ランボルギーニアヴェンタドールSV(2015年5月16日)
12位:7分00秒03/フェラーリ488ピスタ(2019年)
13位:7分01秒30/ダッジ・ヴァイパーACR(2017年)
14位:7分4秒623/メルセデスAMG GT R PRO(2018年11月)
15位:7分5秒41/ポルシェ911GT3 RS、991型(2018年4月18日)
16位:7分6秒60/マクラーレン720S(2019年5月22日)
17位:7分8秒68/日産GT-Rニスモ(2013年9月30日)
18位:7分8秒82/マクラーレン600LT(2019年6月6日)
19位:7分11秒57/グンベルト・アポロスポーツ(2009年8月13日)
20位:7分12秒7/ポルシェ911GT3(2017年5月4日)
21位:7分12秒13/ダッジ・ヴァイパーSRT-10 ACR-X(2011年9月14日)
22位:7分13秒90/シボレー・コルベットC7 Z06(2017年4月24日)
23位:7分14秒63/レクサスLFAニュルブルクリンクパッケージ(2011年8月31日)
24位:7分14秒89/ドンカーブートDB RS(2006年)
25位:7分16秒04/シボレーカマロZL1 1LE(2017年)
26位:7分17秒11/ポルシェ911ターボS、991型(2017年8月24日)
27位:7分18秒00/ポルシェ911GT2 RS、997型(2010年)
27位:7分18秒00/ポルシェ911GT3、991型(2017年4月28日)
29位:7分18秒1/ドンカーブートDB RS(2004年10月24日)
30位:7分19秒1/日産GT-R(2012年)
31位:7分19秒63/シボレー・コルベットZR-1、C6型(2012年)

■FF最速ラップタイム
ルノーメガーヌトロフィーR/7分40秒100(2019年4月)
シビックタイプR/7分43秒8(2017年4月)
ゴルフGTIクラブスポーツS/7分47秒19(2016年5月)

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