3年奇面組&ハイスクール奇面組

3年奇面組で始まり、高校になったトコからハイスクール奇面組に変わった。登場人物はネーミングごとコミカル、内容自体は日々のコミカルな新規登場人物とのイベントをギャグにしたダラ目なストーリー。最後は、ぜ~んぶ夢だったというお話だった。

テレビアニメ化され、高井麻巳子岩井由希子のうしろ指さされ組や工藤静香斉藤満喜子生稲晃子うしろ髪ひかれ隊がOPやEDを担当した。作詞は秋元康がやっていた。声優も千葉繁ら、今でも活躍している。

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ハイスクール!奇面組』の最終回は「すべてが夢だった」。唯はどれだけ濃厚な夢を見たのか?
10/27(水) 9:01 Yahoo!ニュース 個人
柳田理科雄 
空想科学研究所主任研究員

イラスト/近藤ゆたか
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今日の研究レポートは……。

皆さん、『ハイスクール!奇面組』の最終回を覚えていますか?

1980年代に「週刊少年ジャンプ」に連載されたこのマンガは、最初『3年奇面組』として始まり、途中で主要メンバーが高校に進学してタイトルも変わって、計5年間の中学・高校生活が描かれた。

ところが、最終回になって突然「すべてはヒロインの河川唯が見ていた夢だった」という事実が明かされたのだ。あれはもう本当にビックリした!

いまでも忘れがたく、科学的にもたいへん興味深いので、この最終回について考えてみたい。

◆最終回が1回目につながる!
3年奇面組』の舞台は一応中学。

物語は、昼休みに、2年生の河川唯が窓から外を眺めてため息をつく場面から始まる。唯は、クラスメートの凡庸な会話に、物足りなさを感じていたのだ。

だが、気持ちを切り替えた唯は、声をかけてきた友達の千絵に「天気もいいし…トイレいかない?」と言い、千絵に「あなたは天気がいいとトイレにいくのかっ!?」とツッコまれる。

トイレに向かった2人が、廊下で出会ったのが「3年奇面組」の5人だった。彼らはみんな個性的な顔をしており、「せっかく個性的な顔に生まれてきたんだから 内面だって人と同じにはなりたくない」「同じような人間ばかりじゃ 人生おもしろくもなんともない」と主張する。

同じような思いを抱えていた唯は、彼らと親しくなり、一堂零を中心としたドタバタに巻き込まれる――。

こうして始まった『奇面組』は、はじめ1学年上だった零たちが落第するなどして唯と同じクラスになり、みんなで高校に進んで、タイトルも『ハイスクール!奇面組』となった。

楽しいドタバタ騒ぎに拍車がかかり、より人気が出たのはこの作品のほうかもしれない。

そして最終回――。高校卒業から2年が過ぎ、唯は短大を卒業して保母さんになっていた。零の自転車の荷台に乗っているとき、彼女の頭はふと真っ白になり……。

「ちょっと唯! 唯ってば!!」と名前を呼ばれる唯。気がつくと、そこは教室だった。

名前を呼んでいたのは千絵で、驚く唯に「あんた夢でも見てたんじゃない ここは一応中学2年10組の教室よ」と言う。

周囲を見れば、クラスメートたちが凡庸な会話を交わしている。唯は「そ それじゃ零さんたちは…一応高のみんなは… あれは みんな わたしの空想だったの? ……」と、半信半疑ながら、現実を受け入れようとする。

やがて、気持ちを切り替えた彼女は、千絵に向かって「天気もいいし…トイレ行かない?」。

そう、第1話の冒頭のシーンに戻ってきたのだ……!

この結果、第1話から最終話まで、すべての話が唯の夢だったことになった。

3年奇面組』全6巻、『ハイスクール!奇面組』全20巻の話のすべては夢だったのだ。

◆夢を見ていたのはいつ?
そもそも夢とは何か。人間は眠っているあいだに、起きているときに入ってきた膨大な情報を整理して、重要な情報だけを記憶する。このとき、昼間や過去のできごとが映像としてフラッシュバックし、それに自分で意味を与えるのが夢だと考えられている。

眠りには「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」がある。それぞれ違うタイプの情報を処理しており、見る夢も違うものになる。

ノンレム睡眠は「脳を休める眠り」で、このときに見る夢は抽象的で、深い眠りでもあるため、起きたときには忘れてしまう。

レム睡眠は「体を休める眠り」で、見る夢も、イメージが明確なストーリーのあるものになり、起きてしばらくは覚えている。

ここから考えると、唯が夢を見たのはレム睡眠のときだろう。単行本26巻分にも及ぶ具体的な話を夢に見たのだから。

ただしこれ、すごく危険な行為である。唯は教室の窓辺に立ち、窓枠に両肘をついたまま眠って、夢を見ていた。レム睡眠は体の眠りだから、筋肉は弛緩しており、ガクッと膝が折れたりしたら、窓枠で顔を打つかも……!

窓辺ではレム睡眠に入らないほうがよいです。

◆どれほど濃密な夢なのか?
それはともかく、教室で立って眠っているあいだに、コミックス26巻分の夢を見るとはすごい。

気になるのは、唯が寝ていた時間だ。第1話の冒頭で、校舎の時計は12時25分を指し、教室から「うおい昼休みだ」と声が上がっている。また、前後の描写から、彼女が夢を見ていたのは長くても5分くらいではないか……と思われる。

これに対して、見た夢の内容は、中学2年間+高校3年間=5年間(短大時代は描かれていない)とモノスゴク長期だ。閏年が1回あったとすれば、1826日分である。

この長い日々の夢をたった5分で見たということは、平均1秒で6日分の夢を見た計算になる。

 
イラスト/近藤ゆたか
人間は夢を見ているとき、脳波が変化するが、その時間は1~10秒くらい。夢を見ている時間は本当に短いのだ。もし、内容にして5時間くらいの夢を10秒で見るとしたら、時間の濃縮率は1800倍である。人間の脳ってすごいですね。

しかし唯の夢の時間濃縮率夢はそんなモノではない。1日の内容を学校生活中心の8時間だとすれば、それは2万8800秒。その6日分を1秒で見たなら、時間濃縮率は2万8800×6=17万2800倍だ。唯の夢は一般人の100倍も濃密なのだ。

◆気になる「最終回の後」
興味深いのは、これが「単なる夢」ではなかったことだ。

最終回の最後のコマは「天気がいいから」という理由でトイレに向かう2人の後ろ姿で終わるが、そのずっと先、廊下の向こうに、なんと零のシルエットが見える。

おそらくこの直後、2人は零に出会うのだろう。そしてそこから、唯の夢のとおりの『奇面組』のお話が始まる。彼女の夢は「正夢」だったのだ……!

これには筆者、ココロから感動してしまった。

唯の「零さんたちはわたしの空想だったの?」という想像は間違いで、零たち奇面組のメンバーはちゃんと実在したのだ。

しかしこの場合、唯はどんな経験をすることになるのだろうか。次のシーンで出会う零は、唯にとっては超おなじみの顔。その後の行動も言葉も、すべて夢で見たとおりのはずだ。そういう不思議な日々が5年続くことになるのか……。

よくわからないけど、ハッキリいえるのは、『3年奇面組』と『ハイスクール!奇面組』が間違いなく面白いマンガだったということだ。

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