ポルシェ928、911の鑑になったのか?

当時は、ポルシェ911が長くは持たないだろうと言われ、ポルシェ社内に於いて空冷RRの911に代わる新たなパッケージを模索した。

水冷化されたエンジンをフロントに置くなら、高速対応ハンドリングならFR。RR用ミッション&デフを活かしたリヤトランスアクスルレイアウトなど、随所にポルシェらしさを活かしたFRだった。

924については、当初VWから直4を供給されていたが、928のV8の片側バンクを搭載した944に代わった。

928、少し個性が強かったか?924や944は、小型スポーツカーの御手本的なスタイリングであり、後の日本のRX7や180~240SXらにも影響を与えた。しかし、928のランボルギーニミウラを思わせるポップアップ式リトラクタブルヘッドライトやリヤの大ボリュームリヤハッチは、ドコも誰もマネしなかった。

印象的には、ドラマ「パパはニュースキャスター」や「パパは年中苦労する」の田村正和の愛車的なイメージだった。

コレらのFRポルシェがあったから、RRポルシェが引き立った。最高の鑑であったろう。

VWアウディーの意向に合わせて、バカデカい車体にバカデカいエンジン載せたパナメーラには全くない味わいのクルマだと思う。

**************************

アウトバーンの王者 ポルシェ928 英国版クラシック・ガイド NA V8は堅牢 前編
3/19(土) 7:05 Yahoo!ニュース
 6
 
オールアルミV8にトランスアクスル
 
ポルシェ928(1977~1995年/英国仕様)
ポルシェ928の広告は強気に打たれた。「ドラマティックなポルシェ製4.5L V8を搭載した928は、これまでに製造されたどのクルマより、デザインや設計に力が注がれたラグジュアリー・スポーツクーペです」

【写真】ポルシェ928 最終型の928 GTSと現行の911 GTSも (53枚)

さらに続く。「多くの技術的な革新が盛り込まれ、設計も高水準。自動車評論家を刺激し、1978年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました」

スポーツクーペの受賞は快挙といえたが、ポルシェとしては、当然の結果だったのかもしれない。リアシートが備わるものの、サイズ的には子供用。夫婦のグランドツアラーには好適だった。

一方でポルシェ928の見た目は、モデルレンジの入り口にいた924との結びつきを感じさせるものだった。通常の911より高い価格は、ポルシェ・ファンを混乱させた。

フロントに搭載されたV8エンジンは、可能な限りリア寄りにレイアウト。前後の重量配分を最適化させるため、トランスミッションはリアデフと一体化される、トランスアクスル構造が取られていた。エンジンとは、強固なトルクチューブで結ばれた。

このV8エンジンは、オールアルミの新設計。油圧タペットに燃料インジェクションが採用され、オクタン価は95以上が指定された。最高出力は当初240psがうたわれたが、明らかにまだ伸びしろは残されていた。

重視されたのは、圧倒するような動力性能ではなく、粘り強さと扱いやすさ。ロードノイズや風切り音は聞こえるものの、エンジンは静かで、ドライバーを鼓舞することもなかった。だが、サスペンションは乗り心地よりも操縦性側へ振られていた。

アウトバーンの追越車線を突き進む
 
ポルシェ928(1977~1995年/英国仕様)
このような性格付けから、一部のドライバーには充分に響かなかった。それでも、ポルシェは928を進化させ、世界を席巻する能力を身に着けさせた。長距離もこなせるスーパーカー級モデルとして、価格も上昇していった。

928は生産終了までに、100馬力以上パワーアップしている。40%以上の上昇率だ。

トランスミッションは5速マニュアルも選択できたが、販売台数の約80%は、メルセデス・ベンツから調達したオートマティック。最先端の電子機器も搭載され、クルーズコントロールとエアコンはもちろん標準装備。ドアにも送風口が備わっている。

宇宙船のように印象的なスタイリングを描き出したのは、ヴォルフガンク・メビウス氏。ボディと一体型のバンパーを実現させ、後のモデルへも影響を与えている。

これから購入するなら、可能な限り整備記録がすべて残る車両を選びたい。サービスブックと荷室フロアのステッカーに記された、モデルコードが一致するかも確かめたい。

必要ならシリアスなパフォーマンスを披露する一方で、普段は穏やかなクルージングを楽しめる、FRのポルシェ928。RRとは異なり、リアタイヤがフロントを追い越そうという挙動もない。

ハンドリングはバランスに優れている。一方で、911のようなエッジ感は薄い。アウトバーンの追越車線を突き進む、キング・グランドツアラーといえるポルシェだった。

オーナーの意見を聞いてみる
 
ポルシェ928(1977~1995年/英国仕様)
イアン・ブランブル氏は、2002年に1978年式の928 S1を購入したという。「1978年のモータースポーツ誌でポルシェ928を目にして以来、夢の1台でした。V8エンジンを載せたクルマが欲しいと、ずっと考えてきたんです」

「走行距離は12万5000km。ボディの状態はあまり良くありませんでしたが、油圧などエンジンの状態は良好でした。車体とハンドブックのコードも一致しています」

「下まわりのサビを取り除き、再塗装してあります。ずっと大切に乗ってきましたが、現在はボディの補修中です」

「これまでにリアのコントロールアームとトランスミッションオイルシール、サンプ・ガスケットを交換。オドメーターの修理で、メーターパネルもバラしました。クラッチタイミングベルト、ウオーターポンプ、クランクシール、ダンパーも新調済みです」

次に控えている仕事は、ミスファイアと、サーモスタット付近からのクーラント漏れの修理だと話す。「殆どの作業は自分でしています。運転はとても楽しいですよ。もうすぐ20万kmを超えますが、基本的に調子は良いです」

英国で掘り出し物を発見
 
ポルシェ928 GT(1990年/英国仕様)
■ポルシェ928 GT
登録:1990年 走行:11万5800km 価格:4万9995ポンド(約774万円)

右ハンドルのMT車は非常に珍しい。さらにGTグレードだから、一層レアだ。ガーズレッドという色は好みを左右するかもしれないが、状態は良い。レザーインテリアは、レッドのパイピングでコーディネートされている。

整備記録がしっかり残っており、年式を考えれば走行距離も妥当。クラッチも交換したばかりだ。リミテッドスリップ・デフにエアコン、パワーシート、サンルーフ、パワーミラーなど装備も充実している。

専門店からの出品で、点検整備のほかにタイミングベルト交換を終わらせての引き渡しだというから、安心だろう。

■ポルシェ928 S4
登録:1989年 走行:18万6618km 価格:3万9950ユーロ(約620万円)

新車時にドイツで販売された928。当時は一般的だったAT車ということで、比較的安価だ。走行距離は伸びているが、売り手によれば、これまでのオーナーはポルシェ愛好だったということ。費用のかかるメンテナンスも、不備なく行われてきたそうだ。

インテリアの状態もかなり良好。しかし、パワーシートのクリーム・レザーは、距離なりにくたびれている。ダッシュボードやカーペットも、時間を感じさせる見た目のようだ。

中古車購入時の注意点などは後編にて。
マルコム・マッケイ(執筆) ジェームズ・マン(撮影) 中嶋健治(翻訳)

**************************