佐々木麟太郎ノーヒット、別に珍しいコトか?

花巻東・佐々木麟太郎、4打席ノーヒットで甲子園を去った。別に、珍しいコトではない。前評判高いとマークされ、研究される。スタイル的には大阪桐蔭・森友也に近い。ドコにタマが来ても、強いスイングに巻き込めば飛距離を出す。市立和歌山の投手はインハイに強いボールを集めるコトに集中していたように見える。

嘗て、浦和学院鈴木健は、"高校史上最強打者"の触れ込みで甲子園に来たが、尽誠学園伊良部秀輝に封じられてしまった。

個人対個人で見ても、PL対池田で清原は水野にノーヒット、桑田は水野からホームランを打った。早実大阪桐蔭で、斉藤の前に中田はノーヒットだった。

まだ2年春、あと3季甲子園に出て来る可能性はある。

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「怪物スラッガー花巻東・佐々木麟太郎、なぜセンバツで“完全沈黙”したのか
3/24(木) 12:35 Yahoo!ニュース
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清宮の数字を大きく上回る可能性
 
大きな挫折が“進化”に繋がるか。花巻東・佐々木麟太郎
 3月19日に開幕した選抜高校野球。出場32校が全て登場するまでの期間、目に付いた選手、プレーについて独自の視点から掘り下げて、現地からレポートしていきたい。今回、ピックアップするのは、23日に行われた第6日目、花巻東(岩手)対市立和歌山(和歌山)である。【西尾典文/野球ライター】

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 今大会、ナンバーワンの注目選手といえば、花巻東の2年生、佐々木麟太郎になるだろう。入学直後からファーストのレギュラーを獲得すると、大会前に積み上げたホームラン数はチームの先輩である大谷翔平エンゼルス)が3年間にマークした数字と並ぶ56本。歴代最多と言われる高校通算111本塁打を誇る清宮幸太郎早稲田実日本ハム)の1年秋時点の数字が22本だったことを考えると、佐々木の数字がいかに“規格外”と言えるかがよく分かる。順調にいけば、清宮の数字を大きく上回る可能性は高く、早くも来年の“ドラフトの目玉”という声も聞かれるほどだ。

 しかし、“令和の新怪物”が臨んだ初めての甲子園は、4打数ノーヒット、2三振で、チームも初戦敗退と悔しい結果に終わった。佐々木を完璧に抑え込んだのが、今秋のドラフト候補として注目されている、市立和歌山のエース、米田天翼だ。

 なぜ、佐々木のバットは完全に沈黙したのだろうか。最も大きなポイントとなったのが初回の第1打席だ。米田は先頭打者にいきなりストレートの四球を与えると、続く打者のバントも不運な内野安打となり、いきなりノーアウト一・二塁というピンチで佐々木を迎えた。

「強い気持ちで内角に」
 
花巻東・佐々木麟太郎(2021年撮影、写真提供:プロアマ野球研究所)
 米田が明らかに狙ったところに、ボールを投げられていない様子を見て、佐々木の長打、ホームランを期待したファンも多かったはずだ。ただ、そこから米田はストレートを3球続けて追い込むと、その後、佐々木に粘られながらも、最後は高めのストレートで空振り三振を奪って見せた。

「(佐々木は)ホームランのあるバッターなので、近めの速いボールで詰まらせることを試合前から考えていました。立ち上がりは浮ついていたところもあってボールも高めに浮いていましたが、あの場面では強い気持ちで向かっていこうと思って内角に投げました。特に、3球目の内角に投げられたボールは手応えがありました。ああいう場面でギアを上げて、速いボールで押し込めたことは大きかったと思います」(米田)

 最後に空振りしたボールは高めに大きく浮いたボール球であり、決して狙ったところに投げられたボールではなかったが、それまでの厳しいコースに来ていたボールの残像が影響した部分もあったのではないだろうか。

「事前に映像を見て高めに浮いてくるボールも多いと思っていたので、甘く入ったところを逃さないようにという意識はありました。(第1打席の三振したボールは)狙っていた高めだったんですけど、予想以上の高いところに思わず手が出てしまいました。あそこで打っていればゲーム展開も変わっていたと思うので本当に不甲斐ないと思いますし、責任を痛感しています」(佐々木)

「できなかったのは自分のセンスの無さ」
 続く2打席目以降の凡退も全て結果球(打席結果になった球)はストレートだったが、第1打席のチャンスで完全に抑え込まれたことと、何度フルスイングしても、米田の球をとらえられないことに対して、佐々木の焦りも募っていったように見えた。

「(米田は)ストレートの球速も出ていましたし、伸びがあって素晴らしい投手でした。そのボールに対して自分が遅れているというのは感じていたので、修正しようと思ったのですが、それができなかったのは自分のセンスの無さだと思います」(同)

 その後も佐々木の口からは「不甲斐ない」、「自分にはセンスがないので」という言葉がたびたび聞かれた。ここまで完膚なきまでに抑え込まれたのは、新チームになってからは一度もなく、その悔しさは相当なものがあったことは想像に難くない。

 しかしながら、センスがないバッターがここまで短期間にホームランを積み重ねることは不可能だ。今大会では快音は聞かれなかったとはいえ、フルスイングの迫力とヘッドスピードの速さは、やはり大きな可能性を感じさせるものだった。

選抜での悔しい経験が成長に
 また、プロのスカウトは、佐々木について「下級生だからまだ参考程度」と断ったうえで、以下のように話していた。

「(ボールを)高く打ち上げたいという気持ちがあるからだと思いますが、ちょっとすくい上げるようにして振りますよね。だから、どうしても体に近いところや高めの速いボールに対して、バットが出るのが遅れているように見えました。でも、あれだけ強く振れるのはやっぱり魅力ですよ。(昨年12月に両肩を手術した影響で)冬の間にあまり練習できなかったみたいですし、ここから考えて、いろいろと直していけば、もっと状態も上がってくると思いますね」

 今回の佐々木の結果を見て、2006年の夏の甲子園を思い出した野球ファンも多かったのではないだろうか。この大会では2年生ながら大阪桐蔭の4番を務めていた中田翔(巨人)が初戦で特大のアーチを放ったものの、続く2回戦では早稲田実斎藤佑樹(元日本ハム)の内角高めのストレート攻めに3三振を喫したのだ。

 中田はその後、速いストレートへの対応力をアップさせ、2年秋の近畿大会では推定飛距離170メートルの超特大弾、そして翌年春の選抜では2回戦で2打席連続ホームランを放つなどの活躍を見せ、ドラフトの目玉としてプロ入りすることになった。

 当時の中田と比べても、佐々木のパワーは全く遜色なく、選抜での悔しい経験が成長に繋がることも十分に考えられる。大きな挫折を味わった“怪物スラッガー”が、夏にさらなる進化を遂げて、再び甲子園の舞台に戻ってくることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部
新潮社

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