水島新司「ドカベン」最高の試合は?

水島新司ドカベン」最高の名勝負は?確かに、1年夏の甲子園決勝、明訓2-1いわき東の試合は、中身がギッシリだった。何より、土佐丸戦で里中の負傷、雨天順延1日空き医師から80球が限度と言われてなかった?いわき東緒方のフォークを殿馬は"リズムのないフォーク"と称した。ほぼ同じトコで落ちるフォークを当て続けるコトで、緒方のリズムや精神を揺さぶった。しかし、岩鬼は違った。初球ワンバウンドのフォークを、バックスクリーンにホームラン!三塁ベース踏み忘れでアウト。

守備は足利を塁に出しながら、ヒット・エンド・ランで外野前に落ちそうなフライを山岡が好捕してゲッツーや、三塁走者足利でスクイズをウエストせずワンバウンドでタッチアウトして凌いだが、3打席目里中のクセを掴んだ足利が二盗、2番のセカンドゴロで本塁突入、バックホームもセーフ、いわき東1点先制!

9回表、明訓最後の攻撃、里中は緒方のストレートに絞りセンター前!そして、1番岩鬼へ、土井垣は「岩鬼にバントさせて、殿馬以降に期待を・・・」と進言。岩鬼徳川家康監督に「アンタ、優勝監督になりたくないか?」と言い徳川は「優勝監督になりたいな、打て!」と返した。土井垣には「打てないヤツに、バントができると思うか?」と。緒方は前の打席までで岩鬼の悪球打ちを確信、ど真ん中ストレートを迷わず投げた。しかし、眩しい太陽でタマが見えず、悪球と同じになった。今度はバックスクリーンを超えた!

9回裏、先頭は緒方、里中を捉えラインドライブの二塁打送りバントで一死三塁。里中の一塁送球はゴロ、限界が近付いていた。渾身の一球を平山が三塁へファールフライ、スタンドに入りそうな・・・岩鬼は猛然とフェンスに登り、緒方はタッチアップの態勢へ。岩鬼は捕球、山田へバックホーム!低い、確実に捕球するなら後ろだが、アウトにするならハーフバウンド捕球に賭けるか、山田は前に出てハーフバウンドキャッチ、アウト!ダブルプレーでゲームセット!

個人的には、1年秋の神奈川県決勝、横浜学院戦を挙げたい!土門剛介が、東海戦で左手負傷した山田と明訓に立ち塞がる。いきなり、1番投手土門は金属バット、復帰間もない里中のシュートに釣られそうになり、ワザとバットを落とす。ボールのストレートにも引っ掛からない。外の変化球でカウントを取り、勝負はインサイドストレート、詰まったレフトフライのハズが、そのままホームランで先制!その1点を横浜学院土門は守る。ピッチャー返しのライナーを右足で止め、外野2人を三塁手一塁手の前に守らせた。同点にしたのは山田、金属バット片手打ちで速いゴロを打ち、油断したセンターを抜いた、ランニングホームラン!しかし、追い付いた後の土門の打席、再三の敬遠指示に気を抜いた里中のタマを二塁打、盗塁警戒で牽制したが、ベースカバーとタイミング合わずセンターへ抜けた。バックアップの山岡がトンネル!土門が生還し、2-1のリードで9回裏へ。二死一二塁で山田、捕手谷津は山田の片手打ちに対して変化球攻めを進言、山田は両手打ちに戻し、変化球をカット、四球を選び、次打者微笑三太郎に回した。微笑は、四球の次の初球を狙いフルスイング、バックスクリーンに飛び込む逆転サヨナラ満塁ホームラン!

試合後、深紅の大優勝旗が盗まれた。

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野球マンガの最高峰『ドカベン』で一番の名勝負は?…元プロ野球選手らが語り尽くした!
8/21(日) 9:03 Yahoo!ニュース
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©水島プロダクション
 漫画『ドカベン』は野球少年たちのバイブルだった。殿馬の「秘打・白鳥の湖」、岩鬼の「悪球打ち」、里中の「さとるボール」を全国の少年たちがこぞって真似した。必殺技とリアルな駆け引きが最高に面白かった。野球マンガの金字塔をファン3人が語り尽くす。

【写真】漢・岩鬼の「悪球打ち」伝説

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今回のディープ・ピープル
金村義明/’63年、兵庫県生まれ。’82年に近鉄へ入団。フルスイングが人気を集め「いてまえ打線」の中軸として活躍した。’99年に引退。現在は解説者

コージィ城倉/’63年、長野県生まれ。漫画家、漫画原作者。代表作に『砂漠の野球部』『おれはキャプテン』など、漫画原作の代表作に『グラゼニ』など

石田雄太/’64年、愛知県生まれ。ベースボールライター。NHKディレクターを経てフリーに。著書に『イチローズ・インタビューズ』『大谷翔平・野球翔年』など
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野球を教えてくれた漫画
 
Photo by iStock
 金村 僕が甲子園の優勝投手になったのは高校3年生の時の'81年ですから、早いものでもう40年以上が経ちます。ちょうどその年に『ドカベン』の主人公である山田太郎も高3で、甲子園で戦っていました。

 城倉 僕は金村さんと同い年です。野球少年の僕らにとって、金村さんは同世代の大スターでした。そして当時の野球少年が必ず読んでいたのが、『週刊少年チャンピオン』で'72年から連載が始まった漫画『ドカベン』です。

 石田 僕はお二人と違い、野球はやっていませんでした。'74年の2月に父親に連れられ大洋ホエールズの草薙キャンプを見に行ってから突然火が付き、野球を見ることに夢中になりました。

 以来、野球漫画も片っ端から読み尽くしましたが、『ドカベン』はとてもリアルな野球漫画で、野球を覚えるのにすごく役に立ちました。

 金村 僕も漫画でバッティングを覚えたようなもんです(笑)。

 城倉 『ドカベン』では、数々の名勝負が繰り広げられました。名投手の不知火守率いる白新高校との息が詰まるような投手戦、土佐丸高校との死闘など、どの試合も忘れられません。

 ただ、僕の中の一番の名勝負は1年夏の甲子園決勝で対戦したいわき東戦です。

 石田 えっ、そうなんですか。じつは僕の一番もいわき東戦なんです。いわき東は俊足を武器に点を取り、それをエース緒方勉を中心に守り切るという、「ザ・高校野球」のようなチームです。

 この試合でも、チーム一の俊足、足利速太を中心に1点を取りにいき、それを山田率いる明訓高校が必死に防ぎます。その駆け引きが本当にすごかった。あれだけ高校野球の戦術をリアルに描いた試合は他にありません。

 城倉 いわき東の選手たちは地元の炭鉱が廃鉱になってしまうため、試合が終われば、みんなバラバラになってしまう。そんな設定も泣かせます。

「秘打・白鳥の湖」はよく真似しました
 金村 水島先生自身、中学卒業後に父親が借金をしていた水産問屋に丁稚奉公に行った苦労人だから、そのようなストーリーを思いつくのでしょう。

 先生は甲子園の試合は全部観ていたのと違いますか。自分がやっていた草野球でも、打率から防御率まで全部データを残していたくらいですから、データも細かく取っていたと思います。

 石田 フォアボール一つにしても、大事な場面では必ず全球描いていました。プロセスは野球の駆け引きや勝負の上でとても重要な情報だと思いますが、水島先生はそこを丁寧に描いています。野球記者の仕事をするようになって『ドカベン』を読み返し、あらためてすごいなと思いました。

 城倉 人差し指と中指の間にボールを挟み、縫い目に指を掛けずに投げる。僕はいわき東戦でフォークボールの投げ方を学びました。足利の盗塁の仕方も超リアル。あんなにカッコよく盗塁する選手を描ける漫画家は水島先生のほかにいません。

 ただ、その一方で試合は、太陽の光が目に入ってボールが見えなくなった明訓の1番バッター・岩鬼正美がホームランを打つという荒唐無稽な終わり方で決着します。でも、「岩鬼は悪球打ち」という方程式ができていたから、読者は納得できる。超リアルとファンタジーを両立させているから『ドカベン』は面白いんです。

 金村 悪球打ちの岩鬼だけでなく、明訓のピッチャー・小さな巨人里中智やいつも微笑を絶やさない微笑三太郎など、インパクトのあるキャラクターが揃っていました。中でも僕が好きだったのは殿馬一人。身体を高速回転させてボールを打つ「秘打・白鳥の湖」もよく真似しました。

 石田 僕が好きだったのは白新の不知火です。おそらく山田と一番多く対戦した投手ではないでしょうか。投げ方が美しいし、帽子を切って片目だけ覗かせているのもカッコよかった。明訓に阻まれ一度も甲子園には出られませんでしたが、僕の中ではとんでもないピッチャーというイメージでした。

岩鬼のモデルはあのスター選手
 城倉 インパクトの強さで言えば、やっぱり岩鬼をおいてほかにいません。いわき東戦では、先頭打者の岩鬼がワンバウンドしたフォークボールをバックスクリーンに叩き込みます。ところが、三塁ベースを踏み忘れて得点になりませんでした。あれは長嶋茂雄と同じです。悪球打ちもそうですし、走り方、守り方も、ショーマンシップに溢れた岩鬼のプレーは長嶋そのもの。そのことにしばらくしてから気づきました。

 石田 里中のモデルには元阪急の山田久志投手説と、同じく元阪急の足立光宏投手説の二つがあります。お二人とも、水島先生から「おまえがモデルや」と言われたらしいのですが、どちらだと思いますか? 
 金村 足して2で割ったのと違いますか(笑)。里中は「さとるボール」を投げますが、二人ともシンカーを放りましたからね。

 石田 山田太郎のモデルは、誰ですかね。見た目だと野村克也さん? 
 金村 山田太郎は左打ち、野村さんは右打ちですからどうでしょう。

 城倉 元巨人の森祇晶の可能性はありませんか? 森さんは左打ちですし、四角い顔も、体つきもそっくりです。ゲームを支配するという山田太郎と似た雰囲気も森さんにはありました。

 石田 そういえば、「巨人の森みたいにしょっちゅうマウンドに来るな!」と、山田が岩鬼に怒鳴られるシーンがありました。

 金村 モデルではありませんが、ドカベンと聞いてまっ先に思い出すのは香川伸行さんです。浪商で牛島和彦さんとバッテリーを組み、甲子園で活躍。「ドカベン香川」と呼ばれました。僕より2つ年上ですが、漫画の主人公が現実に出てきたようでびっくりしましたね。バットコントロールが柔らかく、山田太郎同様に穴がないバッターでした。

 「週刊現代」2022年8月13・20日号より

 本記事では、伝説の「いわき東戦」やキャラクターの魅力について話し合われた。後編記事「もうひとつの『甲子園伝説』…『ドカベン』の神回『土佐丸戦』を元プロ野球選手らが語り尽くす」では、神回と言われた「土佐丸戦」の謎や作者・水島新司の制作秘話に迫っていく。
週刊現代講談社

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