この東大歴史学者さん、「歴史学者が絶対にやってはいけないコト」として、それぞれの人物について、心情や思考などについて述べるべきではないという。
歴史学には重要なルールがある。
「歴史学は人間の内面には立ち入れないし、軽々に立ち入ってはならない」
というのだが、それ自体が歴史学に対する偏説の1つではないの?
歴史の面白さとは、ソコにあるのではないの?学者だからこそ、人物について書かれた文献や記述などを元に、出展を明らかにしつつ、「どう考えたから、どう行動した。」と述べるべきなのではないのか?
ワタシ個人、源頼朝が平家討伐後に義経を追討する心情や思考は何だったのか、別に梶原景時の讒言を100%信じたワケではあるまい?
上杉謙信が武田信玄に塩を送った理由は、ホントに自分の好敵手への援助に近い情だったのか?むしろ、武田信玄に貸しを作り、信玄の眼を織田信長や今川義元や斎藤道三らへ向けさせる意図はなかったのか?
もちろん、勝手な類推なら、歴史ドラマの脚色レベルだが、歴史学者が文献や記述に基づく出展を明らかにした学説は、むしろ出すべきモノのように思う。
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東大教授が警告する「歴史学者が絶対にやってはいけないこと」
9/3(土) 12:32 Yahoo!ニュース
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『歴史学者という病』――そんな題名だけ聞くと、さぞかし怖い本のように思うかもしれない。しかし、実際に読んでもらえればわかるが、この本は歴史学者・本郷和人の人生を本人が語りながら、生きていくことの辛さや不可解さ、そして、面白さや可能性などについても触れている。そこで特別企画として、この本にはあまり収録できなかった話を中心に「人生相談」風にまとめてみた。題して「人生の難問は歴史学者に聞け。本郷和人のルサンチマン人生相談」です!
第八回は、「どこまでが歴史学の守備範囲?」です。
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今回の相談事項
「歴史ドラマを見ていて、時々「どこまで事実なんだろう」と考えることがあります。時代考証として歴史学者の先生が関わっていることもありますが、歴史的な事実とフィクションはどこで線引きされているのでしょう?」
「歴史ドラマ」と「歴史」の明確な違い
私のような歴史学者が講演をしたりすると、この手の質問をよくいただくことがある。
答えは、わりとシンプルで、「小説やドラマと銘打っているものならば、それは多かれ少なかれ脚色されたフィクションが盛り込まれている」ものだ。
つまり、いかに良くできた歴史ドラマや歴史小説を読んでも、それをそのまま史実だと信じてはいけない。
ドラマに時代考証が入っていても、それはあくまで「指摘」を行うものであり、最終的な決定権はテレビ局や演出家・脚本家などが持っている。
これは、とても当たり前のようでいて、意外に多くの方々混同してしまう点である。
「北条政子の気持ち」を語るのは歴史学者の仕事ではない
歴史学には重要なルールがある。
「歴史学は人間の内面には立ち入れないし、軽々に立ち入ってはならない」というものだ。
これは著名な歴史学者である佐藤進一先生も述べておられた鉄則中の鉄則だ。
残念ながら、最近の若い歴史研究者の中には、歴史上の人物の心の中や感情を忖度し、さもその人物の胸中を代弁するような発言をする方がいる。
歴史上の人物の心の中へ分け入り、「北条政子はこんな気持ちだった(はずだ)」「織田信長はこんなことを考えていた(に違いない)」などと語ったりする、これは歴史学者として大変危険な行為である。
それは作家や文学研究者の仕事だ。
対象が歴史上の人間であれば、その人物像を、歴史史料に現れる外面的な行動によって丹念に読み込んでいく、いかなる「行動」をとったのかを史料で網羅的に押さえこんでいくのである。
かくいう私も、テレビに出演したときなどに、根拠に乏しい説を自分で勝手につくりあげたり、歴史上の人物の心中を想像して断言したりしたようなことは一度もない。
エンタメ性の強い番組には時として難しい発言もあるが、断定はしていない(つもりである)。
そう、歴史学というのは、徹頭徹尾、科学的な態度が求められるものなのである
構成:森田幸江----------
『歴史学者という病』好評発売中!
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本郷 和人(東京大学史料編纂所教授)
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