山本由伸、今頃アーム式の話?

オリックスのエース、山本由伸。現在は利き脚でない側を上げずに、前へ踏み出すフォームで物議を醸しているが、この記事ではブレーク前のフォームの話だ。

マチュア時代、アーム式と言われる投げ方から、変えられて全く活躍デキずに投手を辞めた/プロ野球を引退した投手はいっぱいいる。池田⇒南海畠山とか。

アーム式の腕の振りに限らず、投げ方を変えられてダメになる投手も多い。花巻東⇒西武菊池はオーバースローに変えられ、肩の手術すら受けた。ハンカチ王子斉藤は日ハムで、去勢フォームに変えられ、単にフツ~な投げ方の小さい投手で終わらされた。

山本由伸、そういう意味で自分の確固たる意志をキチンと徹したのだと思う。通してブレークしたから、全てが認められた。あの独特の投げ槍トレーニングなども、その一環だ。

スカウト山口和男って、あの背番号14の山口だよネ?イップスと言われていたか、トライアウトでも150キロ超出したのに、引退したハズ。カレの経験も活かされたのではない?

今回の左足を上げず、溜めず、前に速く大きくステップするフォーム、個人的には溜めるコトで打者とのタイミングをハズす"間"を作るメリットなどをなくしてるとも思うが、チャレンジとしてやれば良いと思う。

印象的には、突っ込み加減に見えてるけど。

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「この中に僕の味方は一人もいません」山本由伸が語った、とある“周囲の猛反対”〈WBCでは4回1安打無失点の好投〉
3/13(月) 6:12 Yahoo!ニュース
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 2022年の日本プロ野球オリックス・バファローズはリーグ連覇、そして、26年ぶりの日本一を飾った。もちろんチームの力が結集しての戴冠ではあるものの、その結果にエースである山本由伸投手がもたらした功績は計り知れないものだろう。

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 今回行われるWBC 2023の投手陣でも中心的な役割を担う山本投手。しかし、入団直後の同投手は、その独特なフォームに対し、周囲からさまざまな意見が寄せられていた。山本由伸はそうした事態をどのように捉えていたのか。

 スポーツ・ノンフィクション作家の中島大輔氏による『 山本由伸 常識を変える投球術 』(新潮新書)の一部を抜粋し、紹介する。

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2年目の春季キャンプでの“事件”
 
©文藝春秋
「この中に僕の味方は一人もいません」

 2018年2月にオリックスの春季キャンプが始まって数日経った頃、当時、山本が契約していた運動用具メーカー「オンヨネ」の代理店プロスペクトで働く阪長友仁が宮崎市清武総合運動公園を訪れると、そう打ち明けられた。

 1年目とは大きく異なる投球フォームに改造して2年目の春季キャンプに臨んだ山本は、周囲の猛反対に遭った。球団スタッフの立場から、山口和男が振り返る(注:山口は1999年ドラフト1位でオリックスに入団した元投手で、2009年引退後にスカウトに転身)が振り返る。

「期待された中での2年目のスタートで、『投げ方が変わっている』という連絡を球団から受けました。自分はキャンプ初日からチームに帯同していたわけではなく、チームに呼ばれて実際に見たとき、投げ方が全然違うなというのはありましたね。本人はしっかり自己分析ができて、先を見据えていろんなことができる子だとわかっていたので、球団としてはその投げ方がダメということではなく、故障のリスクだったりを考えてのことで、全てを否定していたわけではないです」

オリックスで特に出会いが大きかった人物
 山口に当時の“事件”について訊くと、婉曲な答えが返ってきた。

 野球界の常識で考えれば、オリックスが山本の投球フォームに反対するのは当然だろう。ピッチングは肘から先をしならせるように使うものと考えられ、山本のように肘を曲げずに腕を伸ばしたまま投げるのは「アーム投げ」と分類される。バッティングセンターで見かけるような、アームを旋回させてボールを投げるマシンが由来で、肩や肘への負担が大きいとされる投げ方だ。

 じつは春季キャンプに臨む前から、周囲の猛反対に遭うことは山本自身も想定済みだった。とはいえ、高卒2年目の投手が大きなショックを受けたことは想像に難くない。当時の心情がよく伝わってきたのが、「オリックスで特に出会いが大きかった人」について尋ねたときの答えだ。

 山本が挙げたのは3人の名前だった。元投手コーチの酒井勉、スカウトの山口、そして2019年から巨人でプレーしている中島宏之の名を挙げた。

全員否定の中、唯一応援してくれたのは…
 理由にしたのは、いずれも2年目の春季キャンプでの対応だった。

「3人は初めての自主トレが終わった後の2月のキャンプで、僕を否定しなかったんです。中島さんはそれまで1回もしゃべったことがなかったけど、アップをしていたら『最近どうや?』みたいな感じで来てくれて、『こういうことがあって、あまり良くないです』と言ったら、『そんなんやってみてダメだったら、やめたらいいやん。やるならやったらいいやん』って言ってくれました。他は全員否定の中で。酒井さんにも『何を考えてやっているの?』って聞かれて、話したら『それならいいんじゃない』って。(山口)和男さんは最初、たぶん上の人に『止めろ』みたいに言われて来たと思いますけど、次の日にすぐ来て、『お前の話を聞いてなかったわ』って。説明したら、すごく応援してくれて。で、周りの人にもうまく言ってくれてという感じですね」

 繰り返しになるが、野球界の常識から考えれば、オリックスの反応は“普通”だろう。

 対して山本の立場からすると、自身が信じて挑戦を始めたことが周囲の猛反対に遭った。すべてを否定されるような感覚に陥ったはずだ。

 以上を一言で表せば、両者の間には「齟齬」があった。当事者の山口が振り返る。

「自分が自信を持ってやってきたことに関して、そういうネガティブな感じで捉えられると、自分がやるべきことを否定されていると感じるのは当然だと思います」

山本の「やり抜く強さ」を信じた良き理解者
 球団からすれば、金の卵を傷つけるわけにはいかない。

 対して山本からすれば、投手人生を懸けて取り組み始めたばかりのことだった。

 両者の間には、決して容易に埋められない「溝」が生まれた。普通の高卒2年目の投手なら、「四面楚歌」で自分の方法を貫けなかっただろう。

 だが、山本には信じたことをやり抜く強さがあった。そして、良き理解者がいた。

 球団との間に橋を架けたのが、担当スカウトの山口だった。上層部の命を受けて新たなフォームをやめさせようとした翌日、なぜ、もう一度話しに行ったのだろうか。

「ピッチングコーチを含めて球団がどういうふうに考えているかを伝えたら、本人の表情があまりにも曇っていたので、溝を埋められればと思いました。それでも本人は『この投げ方でやっていきます』という強い意志を持っていたので、『それは違う』と否定することは自分にはできませんでした」

 山本の奥底にある芯の強さを感じると、山口は立場を変えて、改めて本心を伝えた。

「何か新しいことをしようと思えば、結果が出るまではいろんなことを言われると思うけど、信念を持ってできるのであれば頑張れ。そう声をかけたんですよね。今までの野球界にはない腕や身体の使い方をしていたので。それが1年で結果を出してくれました。自分自身も球団の人間として由伸と付き合わないといけないところもありますし、同じピッチャーの先輩として付き合わないといけないところもある。いろんな角度から山本由伸と接しないといけないので、当時は自分自身もすごく悩みましたし、辛い思いもしました」

独特なフォームは「アーム投げ」なのか
 二人の言葉を振り返ると、投球フォームの変更がどれほどの衝撃を周囲に与えたのか、よく伝わってくるだろう。

 誰が見ても明らかにわかるように、プロ1年目とそれ以降で山本の投げ方は大きく変わった。

 では、独特なフォームは世間で「アーム投げ」と分類されるようなものなのだろうか。同じ右投げの投手として、山口が見解を示す。

「自分は由伸の投げ方をアームだと思ったことは1回もないです。テイクバックが体から離れるので『肩に負担が来る』とか、いろんなことを言われていると思います。でも、由伸はテイクバックからトップをつくるときに肩甲骨や肩関節をうまく使えるのでアームだとは一切思わないですね。トップの位置からリリースまでの距離がとれる分、腕の振りを加速させる距離が長くなるので、いいボールを投げられる。理論的には合っていると最初に見たときも思いました。ただし球団の考えでもある、故障のリスクがどうなのかなという疑問があったくらいです。アームだから、とは思わなかったですね」

技術の高さによる腕のしなり
 一般的にピッチャーの投球動作は、並進運動と回転運動に分けられる。最初に始まるのが前足を踏み出す並進運動だ。簡潔に言うと助走のようなもので、下半身で大きく前に行くことでリリースに向けて勢いがつきやすくなり、続く上半身中心の回転運動でスピードを生み出しやすくなる。これらの動作中に身体の各所でうまく力を発揮し、連動させることで球速や球威が高まっていく。

 山本の投球フォームでは腕の使い方に目が行きやすい一方、大きな特徴は前足によるストライドの大きさにある。だから山口が説明するように、肘を上げたトップの位置からリリースまでの距離がとれ、より大きな力を生み出せるのだ。

 オリックスの山岡泰輔やソフトバンクの松本裕樹らとトレーナーとして個人契約する前述の高島誠も、山口の見解に同意する。山本が独特な投げ方をできる秘訣は「胸郭」のしなやかさにある、というのが高島の解説だ。

「おそらく前足を大きく踏み出してストライドの距離をとりたいんですよね。そのときに上半身は後ろに残っているから、頭は突っ込まない。でも、下半身は最大限前に行けます。その下半身の動作が十分にないまま上半身が前に行って腕を振ると、腕だけで投げるような形になる。そういう身体の使い方をしているからアームのように見えるけど、あれだけ前に行って腕をしならせられるのは技術の高さなんです」

球の出どころが見にくいフォームは投手にとって大きな武器に
 上半身が後ろに残っていながら下半身を前に大きく踏み出せると、回転運動を始める際にひねりの力をより大きく発揮できる。「捻転差」と言われるものだ。逆にこの動作がうまくできないと腕だけで投げるような形になるため、球威は弱くなり、肘にかかるストレスも大きくなる。

 アーム投げが良くないとされる理由の一つは、腕が早くから一本に伸びることによって打者に見やすくなることも挙げられる。

 対して山本は「プレートの真ん中を踏んでストライドを長くとるため、バッターから腕が見えない」と高島は解説する。投手がボールを投じてから打席に到達するまで0・5秒以下という野球の世界では、球の出どころが見にくいフォームは投手にとって大きな武器になる。

 以上の利点もあって、近年流行しているのが「ショートアーム」と言われる投げ方だ。テイクバック時に腕を伸ばさずに曲げたままトップに向かう投げ方で、ダルビッシュや大谷も取り入れている。投手はリリースまでのタイミングを合わせやすいことに加え、打者にとって腕の振りを見る時間が相対的に減ることも利点と言える。

山本の投球フォームの合理性
 そうした潮流があるなか、逆行するような山本の凄みを高島はこう表現する。

「腕を大きく振ることでバッターにバレるという側面も大きいから、他のピッチャーはテイクバックを小さくしようとします。でも小さくすると、ある意味で腕のしなりを生みにくい。ということは、山本投手の投げ方はしなりが大きいんですよ。それでいてバッターに腕の振りが見えないのはすごくメリットです。普通、あそこから腕を持ってくるのはなかなか大変だろうなと思いますね。その精度がどんどん上がってきているからケガもせず、あれだけ後ろを大きく使える。そうやって自分の身体を大きく使えているのはすごいことです」

 トレーナーの高島、元プロ投手の山口が共通して挙げるのは、山本の投球フォームの合理性だ。自身の身体をうまく使い、最大限に力を生み出している。

 同時に口にしたのは、山本の投げ方は難度が極めて高く、普通の投手が形だけをマネすると故障のリスクも伴うという点だった。
中島 大輔/Webオリジナル(外部転載)

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