エンジンの排気音、笛と同じ!

ワタシは、エンジンの味わいは加速感と音だろうと思う。個人的には、太い音より細く高い音が好きだ。

エンジンの排気音、吸気排気に依る吸気管⇒シリンダー⇒排気管と空気が動く笛のようなモノだ。1気筒当たり排気量が大きいと低い音、小さいと高い音になるのは、アルトリコーダーとソプラノリコーダーの原理と同じだ。

ワタシは、つい先々月まで15年近く、アルピナB12-5.0BMWに乗っていた。E32型750の5リッターSOHCV12を、アルピナが圧縮比アップチューニングしたクルマだ。1.8tの4ATなのに、ソレまで乗っていた、ニッサンR34型スカイライン25GT-Vの2.5リッターDOHC直6の5MTよりレスポンスが遥かに良かった。

修理部品がなくなったとのコトで、買い替えざるを得なくなり、BMW Z3-2.2にした。2.2リッターDOHC直6のATだが、1気筒当たり排気量は5リッターV12より小さく、キレイな高い音がする。もう1台10年ちょい持ってるポルシェ996カレラがあるが、3.4リッターDOHCフラット6で、ガサガサ音だ。

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【感動エンジン】「駆け抜ける歓び」を徹底追求。BMW=エンジン製造会社の匠技
2023.06.12 06:40掲載 カー・アンド・ドライバー
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「シルキー」以上の快感を主張、それがBMWエンジン

いったいこの心地よさは何だろう? 右足にじわじわ力を込めていくと、スムーズすぎず荒くれすぎない、ちょうどいいあんばいの摩擦を伴って回転を上げていく。その摩擦がパワーフィールと見事に連動しているから、右足はもっとそれを求めて踏み込む。摩擦は高回転域においてさらに細やかになるが、決してスベスベではない。シルキーという表現は、実は違うと思う。このエンジンの気持ちよさはスベスベ感ではなく、極めて細かな粒子のザラザラ感にある。

【CD取材ノート】最上のBMWエンジンはM1用の「M88ユニット」。全域味わい深い、まさに名機と呼びたい! by西川淳

このエンジンとは、たまたまこの原稿を書く直前までドライブしていたE46・M3(2001年)のS54エンジン、つまり3.2リッターのストレート6である。このころまでのBMW製・直6エンジンは、M用の「S型」でなくとも官能性が強かった。たとえばM54エンジンを積んだE46の330あたりなら驚くほど安く程度のいいユーズドカーを見つけることができるうえ、素晴らしいエンジン体験が満喫できる。真の内燃機関にじっくり向き合ってみたい方にはお勧めだと思う。いわゆる「シルキー」をNAで堪能できる最後の世代だといっていい。

BMWといえば、ファンならずとも元はというと「バイエルンのエンジン製造会社」であったことを知っているだろう。正真正銘のエンジン屋だった。けれどもそのルーツはなかなか複雑である。いい機会なので歴史を振り返ってみたい。

まず1910年にグスタフ・オットーが航空機製造会社を創業。1916年に倒産し、BFWバイエルン航空機製造会社)として再出発した。それとは別にエンジン製造会社として近所で1913年に創業したRAPPは、1917年にBMWバイエルンエンジン製造会社)という会社名に変更していた(ちなみにこのRAPPがBMWになったとき、現在の丸いエンブレムの元デザインが生まれたといわれている)。

第1次世界大戦にドイツが負けると、敗戦国における航空機製造は禁じられ、RAPP改BMWはベルリンのブレーキ会社(クノール・プレムゼ)に吸収され、BMWの名前は一時的に表舞台から消えた。

1922年、BFWクノール・プレムゼ両社の主要株主だったカミッロ・カスティリオーニがBMWの商標を獲得する。そのうえでBFWを現本社地のミュンヘン、ミルバーツホーフェンへと移転、正式に「BMW」という名前に変更した。そして2輪車(1923年)、さらにはディキシーを買収して4輪車(1928年)の製造へと乗り出したのである。これが現在につながるBMWの始まりだった。

いずれにしても、BMWがエンジンとそれを搭載した乗り物を製造する会社として始まったことは間違いない。もっとも第2次大戦後、1950~60年代初頭のBMWラインアップといえば、彼らの現在のビジネスにたとえると1シリーズと7&8シリーズのみという極端さだった。要するにボリュームゾーンのモデルを持っていなかったのだ。

当然ながらBMWの経営は一気に傾いた。倒産するか、ライバルに買収されるか。救ったのが現オーナーのクヴァント家であった。彼らがブランド戦略にメスを入れた。誕生したのが1962年登場のノイエクラッセ(=ニュークラス、後の5シリーズ)であり、1966年の02シリーズ(後の3シリーズ)だった。そしてこのとき、キドニーグリルとホフマイスターキンク(独自のサイドウィンドウ形状)の両方を持つサルーンが誕生した。現代のBMWビジネスは1960年代から始まったといっても過言ではない。

直列6気筒BMWらしさの象徴。レースシーンでの活躍とMモデルが魅力を牽引

新生BMW史は再びエンジンを中心に語られることになった。戦前より優れたエンジン、とくにストレート6を生産してきたが、その技術力をベースにいっそう進化させたのだ。筆者は直6ユニットを積む戦前の名車、328ロードスターの試乗経験があるが、エンジンだけは本当にモダンで気持ちよく回ったことを鮮明に覚えている。そんな彼らのエンジン設計に対する情熱は戦後も決して冷めることはなかった。ノイエクラッセや02を継いだ3シリーズや5シリーズという実用モデルにも、よく回るエンジンが積まれるようになっていく。

エンジンのBMW。その存在をことさら強調することになったのが、BMWモータースポーツ社、のちのBMW・M社による一連の高性能モデル&専用エンジンの開発だった。端緒は1973年からレースに本格投入された3.0CSLである。アルピナも大いにかかわったツーリングカーレース・プロジェクトは大成功を収め、市販車とレースカーの両方におけるビジネスの将来性をBMWは見出していた。

名機が誕生する。Mの元祖というべきモデル、M1のリアミッドシップに縦置きされた3.5リッターストレート6、マニア好みに呼ぶとM88エンジンである。この名機から数々の派生エンジンが生まれ、通常のラインアップに積まれていく。現在のMハイパフォーマンスモデルの原型が生まれたのだった。

Mを最初に名乗ったのはE28(5シリーズ)のM535iで、エンジンは635CSiや735iなどと同じ3.5リッターSOHC(M88ベースのM90)だった。後から登場したE24(6シリーズ)ベースのM635CSiに、こんどは名機M88のモトロニック仕様というべきM88/3を積んだ。このモデルこそが事実上、M伝説の始まりといっていい。

以降、BMW・Mからはストレート6に加え、V8やV10といったクルマ運転好きが泣いて喜ぶ名機が誕生。そのいずれもが、冒頭で記したエンジンフィールを持っている。シルキーを超えた、その絶妙な感触はクルマ好きを「運転ジャンキー」にさせる魔力を秘めている。

最新のMモデルはもちろん、標準仕様の6気筒や8気筒エンジンにも他ブランド製とは一線を画す、回して楽しいエンジンフィールがある。ディーゼルエンジンでさえそうなのだ! それがBMWらしさというものだろう。

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