ニッサンのスカイラインとシルビア、どちらも基本は日本国内メイン車両だ。成り立ちでは、片やプリンス自動車にルーツがあり、尚スカイラインGT-Rで名を上げた直6エンジンを積むクルマだし、片やオープンカーのフェアレディーに対し、コンポーネンツ共用したクローズドクーペたるシルビアは、フェアレディー/ZがインターナショナルGT/スポーツカーに上級移行してからも直4エンジンを積むクルマだった。
日本国内では、グループAなど日本最高峰レースにスカイラインGTS-RやGT-R、WRCなどラリーにシルビア200SX(エンジンは300ZXの3リッターV6ターボ)らが使われていたハズ。
80年代終盤、税制が改定、2リッター超車両の税金が緩和され、2リッター直6を積む車両、トヨタセリカXX⇒スープラやニッサンスカイラインらが上級移行する流れになった。同時に、日本国内では運輸省が車両パワー表示280馬力規制が行われた。本来、表示を規制されただけで、日本はドイツ同様、表示以上の性能実装を義務付けられている。600馬力でもカタログだけ280馬力、280馬力ギリギリでも280馬力だ。
R33以降のスカイライン、GT-Rを含めて、無差別級への性能向上想定を誤った。市販ベースグループA想定のR32スカイラインGT-Rを微少変更微少向上レベルのモデルチェンジしかデキなかった。日本最高の4ドアセダン/2ドアクーペが、3ナンバー無差別級移行でトヨタクラウンやニッサンセドリックグロリア・シーマとも比較されるコトになり、チャチさが取り沙汰される形になった。
逆にシルビアは、S13⇒S14の失敗が全てだった。技術とは、各規制に対応した機能向上であるのに、5ナンバー寸法いっぱいだったS13に対して、走る止まる曲がるを向上する手段をサイズアップ、ソレもトヨタセリカの愚を後追いし、今のマツダNDロードスターのような2・3センチの拡幅だった。無差別級ではタダの非力車両だ。若いユーザーにとって、憧れのクルマの裏切りは、モデルサイクルに留まらない。もうS15の頃には、違うユーザーになっている。失う累計ユーザー数は大きい。
外国車両も似たレベルの拡大拡幅をやっているが、特にヨーロッパでは1.4リッター以上は無差別級なのだ。だから、日本とはレンジが異なっているのに、おかしな設定適用をしてしまったのだ。
せめて、R33以降のスカイラインが5ナンバーのままの"5ナンバー最強車両"としていたらどうだったか、或はキチンとシーマやQ45を鑑みた性能想定をした無差別級車両にしていたら、もっと違う経過になっていたろう。
S14シルビアが"5ナンバー車両"としてS13を改善したクルマだったら、5ナンバーRWD車両絶滅危惧な状況で、ユーザー離れを少しは食い止めたろう。
***************************************
ヒット作の「次」は難易度高し!? なぜ発売当時R33GT-RとS14シルビアは「不人気だった」のか
5/14(火) 17:30 Yahoo!ニュース
256
「R33」と「S14」が当時不人気だったワケ
日産スカイラインGT-R(R33)と日産シルビア(S14)はファンからあまり良い印象を持たれていないイメージがあるがどうしてそうなったのか背景とともに解説している
「初代が創り、二代目で傾き、三代目が潰す」という言葉があるが、クルマでもなんでも、大ヒットした次のモデルは難しい。
【画像】ファンが今でも多い日産スカイラインGT-R(R32)などの画像を見る
国産スポーツでいえば、S13シルビアのあとを継いだS14、R32スカイラインの後継車だったR33、初代ロードスターNAに二代目NB、初代インテグラタイプR(DC2)の次のDC5……。
いずれもパフォーマンスは先代を上まわっているはずなので、評価や人気は今ひとつだった。
これはなぜなのか?
ひとことでいうと、エンジニアの価値観とファンの価値観に隔たりがあったためだろう。自動車メーカーのエンジニアは、クルマを進化・進歩させるのが仕事。一方、ファンとは変化を望まない集団のこと。
音楽などがわかりやすいが、ファンは同じ曲想の音楽を何度も聞きたいわけで、「新しい音楽性を求めて」とかいい出して、路線変更をするバンドやアーティストは、多くの場合、人気が低迷していく運命にある。
「快楽はある種の反復性のうちに存する」と喝破した先賢がいたが、「同じものを求めてやまない人」こそ、もっとも典型的で正統派ファンの姿なのだ。
だから、ファン層が厚ければ厚いほど、変化に対する反発は強く、シルビアはずっとS13のままでいてほしいし、スカイラインはずっとR32のままでいい、と思うのが正しいファン心理といえるわけで、その点でクリエイティブなエンジニアとの相性は最悪な関係になりやすい。
S14シルビアなどは、ボディサイズは大きくなったが、剛性はアップし、リヤサスペンションも進化。タービンもボールベアリングになり、可変バルタイもついて、S13よりもずっとポテンシャルは高くなったが、シルビアファンの食指は動かなかったのだ。
R33スカイラインも、空力は改善、前後の重量バランスも適正化。ボディも筋金入りで高剛性となり、ホイールベースが延びて居住性まで向上。そのうえアンダーステアも弱くなったのに、R32から乗り換えたいと思った人は少数派だった。
シルビアもスカイラインも、S13、R32がヒットし、S14、R33で路線変更。そしてS15、R34でそれぞれ回帰方向に向かったわけだが、いずれもS14、R33を飛ばして、S13→S15、R32→R34に進んだら、もっと多くの人に受け入れられて、もっとヒットした気がするのだが……。
エンジニアとファン、どちらも立場が違うので、どちらが正しい、どちらが間違っているとはいえないが、メーカー側に「同じものを求めてやまないファン」に対する愛情が深ければ、相思相愛の関係が長続きしたに違いない。
長年第一線で活躍しているミュージシャンや作家は、その愛情を持って同じテイストの作品を送り出している人ばかりのはず。
「なにも足さない、なにも引かない」というわけには行かないだろうが、大ヒットしたモデルは、できるだけいじらず、見えないところを改良する。
それが理想なのだが、理想とはつねに難しいのが現実だ。
藤田竜太
記事に関する報告
***************************************