FRポルシェ、RR911に取って代わるハズが・・・。

タイプ901だった911が出て、このRRは70年代を生き延びるコトはできないだろうと考えられ、次のモデルの検討を急いだ。

片や、VWアウディーのユニットを共用したFRスポーツ、片やポルシェのフラッグシップ足り得る5リッターV8を積むFRだった。どちらもフロントに水冷エンジンを積み、RR用のミッション&デファレンシャルを流用、むしろフロントエンジンと重量配分改善に寄与できる、リヤトランスアクスルレイアウトのFRになった。924⇒944、928とも、ポルシェの名に恥じないデキの名車だった。実際、924⇒944は、世界中のFRスポーツから真似された。日本では、トヨタレビン/トレノ、ニッサンシルビア/ガゼール、マツダRX7、三菱スタリオンなど。

しかし、73の911カレラRSが状況を一変させてしまった。ロードでも、モータースポーツでも、この2.7リッター空冷フラット6は大好評だった。そして、ポルシェファンにとって、911こそがポルシェのイメージを占めてしまった。

むしろ、924⇒944⇒968と928の方が生産を打ち切り、実質911オンリーになった。それは、90年中盤、914/6の後を受けたボクスター/ケイマンが出るまで続いた。

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RRじゃなくてもやっぱりポルシェ! じつは名車揃いだったFRモデルを振り返る
2022/04/25 15:02 Auto Messe Web1

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新時代を感じさせた「トランスアクスル・ポルシェ」の系譜

 ポルシェと言えば初作の「356」からその後継の「911」へと、リヤに水平対向エンジンをマウントするパッケージを踏襲。なだらかなシルエットは、今やスポーツカーのアイコンにもなっています。しかしその一方で、一般的なフロントエンジンの後輪駆動もリリースしてきました。今回はフロントエンジンのポルシェを振り返ります。

ポルシェにとって特別な「930ターボ」! 初のターボ搭載車は大排気量NAに挑んだ挑戦者だった

914の後継車として企画された924はポルシェ初のフロントエンジンを採用

 ポルシェの主力モデルだった「356」が、後継車となる「911」にその座を譲ったとき、価格が高くなり過ぎたことから911に356のエンジンを搭載した「912」が登場。その後継車として1969年のフランクフルトで発表されたモデルが「914」。リヤエンジンにこだわってきたポルシェとしては、初のミッドエンジン車でした。ポルシェとフォルクスワーゲンVW)が共同で開発したことから、前後に十分なラゲッジスペースを確保するなど、使い勝手にもよく配慮されたクルマでしたが、やはり2シーターというのは厳しかったようです。

 そこで914の後継モデル「924」を開発するうえでは、4シーター(2+2シーター)であることが絶対条件となり、フロントエンジンの後輪駆動で、2+2シーターの2ドアクーペというパッケージングが採用されました。ポルシェとしては初のフロントエンジン車でしたが、やはりポルシェ、ミッションをリヤに置いてデフと一体化し、エンジンからの動力をトルクチューブで伝える「トランスアクスル」を採用。前後の重量配分を改善しようと心掛けていました。

 エンジンもVWの空冷フラット4ではなく、VWの系列下にあったアウディの車輌リストから、「アウディ100」に搭載されていた2L直4 OHVエンジンのブロックを使用し、新たにOHCヘッドを開発して組み合わせた「XF型」を搭載。1984ccから125psを引き出していて、1.1t強のボディにも十分なパフォーマンスを与えていました。

 914のサスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リヤはセミトレーリングアームをトーションバー・スプリングで吊ったものが組み込まれていました。911や914でデータが十分に蓄積されているサスペンション形式でしたが、やはりコストを抑えるためでしょうか、VWの「ビートル」や「ゴルフ」のパーツが使用されていました。

 ちなみに、ポルシェとVWの共同開発で始まったプロジェクトですが、開発途上の段階でVWの経営陣が交代。共同開発のプロジェクトからVWが抜けることになり、以後はポルシェ単独でのプロジェクトとして開発が進められました。それでもビートルやゴルフのパーツを使うことにしたのはやはりコストの問題から、だったのでしょう。

 先にも触れたようにボディはリヤにガラス製のハッチゲートを持った2ドアクーペで、デザインを担当したのは社内デザイナーで若手のハーム・ラガーイでした。ロングノーズと短いキャビンとショートテール。ガラスのハッチゲートを設けたことでスポーツカーの定番だったシルエットが、ずいぶんモダンなものに生まれ変わっていました。そして今度はこれが新たなスポーツカーの定番となっていきます。

924の後継発展モデルでは、さまざまな手法で性能を向上

 シングルカムの2L直4で1975年に発売された924でしたが、やはりスポーツカーを手に入れたいというユーザーやその予備軍からは「もっとパワーを!」との声が寄せられていたのでしょうか、1980年には2L直4にターボを装着して170psまで最高出力を高めた「924ターボ」が登場。

 さらに翌81年には、まったく新しい2.5L直4エンジンを搭載する「944」が登場しています。これは、後述する上級モデル、「928」が搭載していたポルシェ自身が開発したV8エンジン(の片バンク)をベースに開発した「M44/02型」エンジンで、2479ccから155psを発生していました。85年にはM44/02型を「KKK」製の水冷式インタークラー付きのターボで武装した「M44/51型」エンジンを搭載する「944ターボ」が登場。こちらの最高出力は220psで、最高速も245km/hに達していました。

 さらに87年には944と944ターボの中間モデルとして「944S」が登場しています。944との最大の違いは、エンジンのヘッドがシングルカムからツインカム16バルブに変更されたことです。このヘッドも、後述する928系の「928S4」から転用されたものでした。89年には排気量を2990ccまで拡大した「944S2」が登場。最高出力は211psに達していました。ただエクステリアに関しては、944以降ではオーバーフェンダーを装着していましたが、ここまでは924オリジナルのボディは基本的に共通。89年にはカブリオレも誕生しています。

 91年のフランクフルトでは、944の後継モデルとして「968」が登場しています。エンジンに関しては944S2の2990ccの直4ツインカム16バルブをベースに、「ヴァリオカム」(ポルシェが特許を取得していた可変バルブタイミング機構)を組み込んでいて、最高出力は240psに達していました。エクステリアではヘッドライトが一般的なリトラクタブル式からランプユニットが起き上がるタイプに変更されていたのが最大の相違点。ボディの基本シルエットは924/944と共通でしたが、ドアパネルなど多くのパーツが専用に開発されたものとなっていました。

V8とヴァイザッハ・アクスルを搭載した豪華なGTカー・928

 さて、ここまで924から944、そして968と直列4気筒エンジンをフロントに搭載して後輪を駆動するシリーズの流れを紹介してきましたが、そのなかでも何度か触れてきた上級モデル、「928」についても触れておくことにしましょう。

 928は1978年に登場したポルシェのフラッグシップモデルで、搭載しているエンジンは4474cc(95.0mmφ×78.9mm)のV型8気筒、「M28.03型」で最高出力は230psでした。そのコンパクトなV8エンジンをフロントミッドに搭載し、デフと一体式となったトランスアクスル式のミッションにトルクチューブで駆動力を伝達して後輪を駆動するパッケージは、924/944/968に続いてポルシェとして2機種目のFRモデルとなっています。

 フラッグシップスポーツだった911とは異なり豪華なグランツーリスモを目指した928は、エンジンも水冷で、カムシャフトをコッグドベルトで駆動し、ハイドローリック・タペットなど最新技術を惜しみなく盛りこんでいました。フロントがコイルで吊ったダブルウィッシュボーン式、リヤがコイルで吊ったセミトレーリングアーム式のサスペンションが装着されていましたが、後輪のトーインを機械的に制御してコーナリングフォースを安定させる「ヴァイザッハ・アクスル」がリヤに組み込まれていたのが大きなエポックとなっています。

 エンジンに関しては80年に登場した「928S」では、ボアを2mm拡げて排気量を4664ccに拡大し最高出力は270psとなり、85年に登場した「928S2」ではさらにボアを3mm拡げて排気量を4957ccまで拡大。最高出力も292psと、300psの大台にあと一歩というところまで引き上げられていました。その後も何度かパワーアップが繰り返され、最終モデルとなった「928GTS」ではストロークを7mm延ばして排気量を5397ccにまで拡大。最高出力は350psにも達していました。

 またこれは市販モデルではなく試作モデルの範疇となるのですが、84年にはフェリー・ポルシェの75歳を祝ってスポーツワゴン風にフル4シーターに仕立てられたワンオフモデルが製作されました。現在はドクターズカーの名でポルシェミュージアムに展示されています。ホイールベースやルーフラインを伸ばしたエクステリアは、これがパナメーラの先祖か、と感慨新たでした。

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