水平対向12気筒と180度V型12気筒

ボクサーエンジンと180度V型は別モノと言うのだが、例えばフェラーリで365/512BB=ベルリネッタ・ボクサー(水平対向エンジンのクーペ)と命名したのは、他ならぬフェラーリ自体じゃないの?

このエンジンをBB⇒テスタロッサ⇒512TR⇒F512Mと引き継いで使ったハズ。

F512Mを最後に、ミドシップ12気筒はなくなり、V12のFRに交替するコトになる。

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「ボクサーエンジン」と「180度V型エンジン」は別もの! 水平対向エンジンの識別は「クランクシャフト」にあった
3/14(月) 17:31 Yahoo!ニュース
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「ボクサー」の通称はピストンの動きから
 
日本での水平対向エンジンと言えばご存知スバル。ボクサーエンジンとも呼ばれており、エンジンの動きが「ピストンがパンチを打ち合うような動きをしている」ように見えることからその名が名付けられたと言われる。
 クルマ好きにとって「ボクサーエンジン」には特別な響きがある。スバルにとって最初の登録車からつづく伝統でありコアテクノロジー。また、ポルシェ911も歴代モデルがボクサーエンジンを積んでいることをアイデンティティとしている。

【画像】フェラーリ512BBのフロントスタイリング

 そんなボクサーエンジンの定義とは、どんなものであろうか。

水平対向エンジン」とも呼ばれることからわかるように、当然ながらシリンダーは水平(180度)にレイアウトされていることが大前提だ。そして、ボクサーエンジンの語源は、「ピストンがパンチを打ち合うような動きをしている」という点にある。

 すなわち、向かい合ったシリンダー同士で見ると、片方が下死点(ヘッドからもっとも離れた位置)にあるときは、もう一方も下死点にいることになる。逆に、一方が上死点(燃焼室側)にあるときは向かい合う反対側のピストンも上死点にある。エンジン透視図でみると、向かい合ったピストンがともに下死点にあるとき、まさにクロスカウンターのように見える。これこそが水平対向エンジンが“ボクサー”と呼ばれる所以だ。

 じつはシリンダーが水平に並んでいるからといって、どのエンジンもボクサー的な動きをするとは限らない。向かい合ったピストンの動き方とシリンダーレイアウトはまったく別の話になる。もちろん、シリンダーが水平に並んでピストンが動けば、各バンクがパンチのようにピストンを往復させているわけだから、それをもってボクサーエンジンと呼んでいいという見方もある。

 その代表例といえるのが、1970年代のスーパーカーブームの主役ともいえる「フェラーリ512BB」だ。512という数字は5リッター12気筒であり、BBというアルファベットが示すのはベルリネッタ・ボクサーのこと。すなわちクーペボディでボクサーエンジンという意味だ。

 しかし、512BBの12気筒エンジンがボクサーエンジンかというと異論もあるだろう。なぜなら、前述したように向かい合ったピストンが左右対称的の動きをするかといえば、そうではないからだ。

 このエンジンでは、向かい合ったピストンはそれぞれ同じ方向に動く。つまり、片側が上死点にあるとき、反対側は下死点にあるということになる。ボクサーエンジンと違い、ピストン同士がクロスカウンターのようにぶつかり合いそうな動きはしないのだ。そのため、こうしたエンジンについては、ボクサーエンジンではなく、バンク角180度のV型エンジンと呼んで区別することもある。

 それでも広義の分類において、ボクサーエンジンも180度V型エンジンも、いずれも水平対向エンジンとして表記されることもあり、シリンダーのレイアウトだけでいえば、そう記すのは間違いではない。180度V型エンジンをボクサーエンジンと呼ぶのは間違いといえるが、そう断言するとフェラーリに怒られてしまうかもしれない……。

ボクサーと180度V型はクランクシャフトで区別できる
 
ポルシェもスバルと同様に水平対向エンジンのパイオニア的存在だ。空冷時代の911に搭載された、水平対向の6気筒エンジンは「フラットシックス」なんて呼ばれたりもしていた。
 さて、ボクサーエンジンと180度V型エンジンが真逆ともいえるピストンの動きをするのはクランクシャフトの設計が完全に異なっているからだ。

 クランクシャフトとはピストンの往復運動を回転に変えるパーツであり、ピストンとはコネクティングロッドによってつながっている。そして、コネクティングロッドを「クランクピン」と呼ぶのだが、ボクサーエンジンの場合は、向かい合ったピストンにつながるクランクピンが180度違う場所についている。

 一方、180度V型エンジンの場合は、向かい合ったピストンでクランクピンを共有している。そのため、クランクピンの位置がたとえば右側バンクに近づいたときには右側のピストン位置は上死点となり、反対に左側のピストンは下死点にあるといった動きになる。

 つまり、水平対向エンジンを外から見ても、その中身がボクサーエンジンなのか、180度V型エンジンなのかは区別できない。しかし、クランクシャフト単体を見れば、ひとめでわかるというのが、このふたつのエンジンの識別ポイントというわけだ。

 もっとも、経験則でいえば、180度V型エンジンというのは12気筒でしか成立しえないともいえる。主にフェラーリが量産した水平対向12気筒エンジン(512BBやテスタロッサなど)をはじめ、レーシングエンジンとして生まれた水平対向12気筒エンジンにしても、そのほとんどは180度V型エンジンとなっている。水平対向12気筒エンジン=180度V型エンジンと考えていい。

 逆に、4気筒や6気筒においてはクランクピンを共有する180度V型タイプのクランクシャフトは成立しない。つまり、12気筒以外の水平対向エンジンは、クランクピンが180度ずれたクランクシャフトを持っており、ボクサーエンジンに分類されるといえるのだ。
山本晋也

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