エンジン=DOHC、SOHCやOHVは少数派。

元々、イタリアンスーパーカーの昔のDOHCやロータスヨーロッパなどでは、1気筒当たり2バルブ(吸気と排気各1)だった。SOHC/DOHC同じ2バルブでも、カムプロファイルを吸気側/排気側に独立して設ける発想だったハズ。更なるハイパフォーマンス化には、吸気側/排気側それぞれのバルブ面積を増やすために4バルブ化した。既にF1ではV8やV/水平対向12気筒でも4バルブだったが。

日本では、ニッサンがR381の片側バンクからS20型直列6気筒にDOHC4バルブを採用して、KPGC10型GT-RやS30型432Rには搭載されていたが、主力はSOHCのL型だった。トヨタも2000GT用の3Mくらい。それが、80年代中盤以降、DOHC(1気筒当たり)4バルブで、普及し始めた。ちなみに、ヤマハは二輪四輪とも吸気側3バルブ/排気側2バルブの計5バルブを作った。

トヨタは、以後の新エンジンをDOHCに方向づけした。しかし、ニッサンは90年代モデルでもSOHCグレードを残していた。トヨタは、DOHCに統一しながら、ハイメカツインカムという燃費志向のDOHCをラインナップしていた。

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気がつけば軽も商用車もみんなDOHC! 「SOHCエンジン」を最近見かけないワケ
11/14(月) 10:00 Yahoo!ニュース
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エンジンの性能を追求するうえで進化を繰り返したバルブ方式
 
SOHCエンジンはそれまでのエンジンを高出力化するために編み出された技術である
 エンジンの動弁メカニズムとして、一時は大半を占めていたSOHC(シングル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)方式を、最近ではほとんど目にしなくなった。代わって主流となったのがDOHC方式だ。なぜなのか?

【写真】日本車初のDOHCエンジン搭載車は軽トラ!

 動弁機構の進化は、自動車エンジンの歴史をたどってみるとよくわかる。自動車が普及し始めた頃のバルブ開閉機構は、シリンダー側方に吸排気バルブを配置するSV(サイド・バルブ)方式が一般的だった。メインテナンス性が良好、騒音が低いといった理由で広く採用されていたが、エンジンの性能向上を果たしていく段階で、シリンダー上方に吸排気バルブを配置したほうが有利だということになり、シリンダー上部に吸排気バルブを配置するOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)方式がとって代わるようになった。

 SV方式に較べ、燃焼室形状のデザインの自由度が高いことから燃焼効率の向上を図ることができ、SV方式からバルブ開閉機構の主役の座を引き継ぐかたちとなっていた。

 さらに、自動車に高速性能が求められる時代が到来すると、OHV方式より高出力型、高効率型のエンジンが求められるようになった。というのは、エンジンの高出力化を図るうえで有効な方法は、エンジン回転数を引き上げることが端的な手法と考えられてきたからだ。しかし、エンジン回転数を上げていくうえでネックとなるのは、吸排気バルブの正常な作動と動弁系の動きだった。

 OHV方式では、シリンダー下方に位置するカムシャフトからプッシュロッド→ロッカーアーム→吸排気バルブと長い駆動伝達システムが必要となっていたが、カムシャフトをシリンダー上部に配置することでプッシュロッドを廃し、カム山から直接短いロッカーアームを駆動して吸排気バルブを開閉するSOHC方式のほうが、高速回転対策として有利になることは明らかだった。動弁系の慣性質量が減ることにより、より正確な高速回転運動が可能になるからだ。

 なお、SOHCには、ロッカーアームの形状、配置を工夫することで、吸排気の流れをスムースに行えるクロスフローヘッド(半球型燃焼質)の設計も可能で、吸排気バルブをカムシャフトと平行に一直線上に配置する標準的なターンフローヘッド(ウエッジ型あるいはバスタブ型燃焼室など)より高効率化(高性能化)が可能である。

燃焼効率を追求するとかえって複雑な機構を必要とするSOHC
 
だが、その後エンジンの効率化が求められると現在の4バルブDOHC方式が一般的になっていった
 しかし、逆に言うと、SOHC機構で効率的な燃焼室形状を得ようとすると(クロスフローヘッド化)、動弁系にロッカーアームが必要となり、動弁系の慣性質量を増やすことにもなってしまう。

 動弁系の慣性質量の増加は、そのこと自体が高速回転時の正確な動弁系の動きを妨げることになり、より高速回転で高出力を得ようとした場合には、カムシャフト(カム山)からバルブまで動弁系の簡素化が必要不可欠で、このために考え出されたのがDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)方式だ。

 この方式は、吸排気バルプそれぞれに専用のカムシャフトを設けるかたちとなるため、理想的な燃焼室形状といわれる半球型燃焼室を形成しても、吸排気のカム山がダイレクトにバルブを駆動できるため、より高速回転が可能になる。この半球型燃焼室によるDOHC方式が2バルブDOHCで、世界的には1980年代前半まで量産車メカニズムとして最高峰に位置付けられ、多くの高性能エンジン(ほぼスポーツタイプ用)が量産化されてきたが、これを上まわる吸気2/排気2の4バルブDOHCが量産実用化され、ペントルーフ型燃焼室との組み合わせにより高性能エンジンの最高位に立った。

 当初は、高回転/高出力に主眼の置かれた方式だったが、燃焼効率に優れることから低公害エンジン(時代背景に合致した標準型式と言い換えてもよい)の基本型式としても注目されることになり、現在にいたっている。

 さて、一時期見られたSOHCエンジンが影を潜めた理由だが、4バルブDOHC方式の生産が一般化し、かつてのように高コストな方式ではなくなったこと、SOHC方式で燃焼効率の高い理想的な燃焼室形状を設定しようとすると複雑な動弁メカニズムが必要となり、むしろコストパフォーマンスの悪いエンジンとなってしまう可能性が高いこと、などが挙げられる。

 もちろん、現在でも工夫を凝らしたSOHC方式はあり、たとえばヘッドまわりをコンパクトに仕上げたいなどの設計意図により、出力性能以外の目的によって実用化された例も見ることができる。
大内明彦

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