F1空力デバイスセレクション

F1空力デザイナーの叡智の結晶、画期的空力デバイスとして挙げられるのは、

1. グラウンド・エフェクトカー:ロータス78(1977年)

2. ダブルフロア:フェラーリF92A(1992年)

3. Fダクト:マクラーレンMP4-25(2010年)

4. 6輪マシン:ティレルP34(1976年)

5. アクティブサスペンション:ウイリアムズFW14B(1992年)


例えば、1のグラウンドエフェクトの最初はロータス78だが、一応完成形としてはロータス79のハズ。まして、ロータスがグラウンドエフェクトで挙げた成果はコレだけ。ウィリアムズやブラバムの方が、コレを活かし切った。

2のダブルフロア、フェラーリがF92Aでやった。ハイノーズで車体底面に多量の空気を導くが、底面&ディフューザーで処理できない気流を二重底の隙間に流す狙いだった。しかし、ハッキリ二重底にしたその分、マシンの重心が上がってしまった。断じて、エンジンのせいではない。

3のFダクト、あまりハッキリ見たコトないので、言及しない。

4の6輪、小径前輪を4輪にし、それらを前面スポーツカーノーズで隠すコトで、空力向上する狙いがあった。翌年以降は、グッドイヤーが小径前輪の改良を止めたため、バランスを崩した。

5のアクティブサスペンション、元は87年ホンダターボエンジンを得たロータスがドゥカルージュの下で採用した。ドライバーはA・セナ&中嶋悟、A・セナはノーマルサスペンションのウィリアムズより遅く少ないタイヤ交換に活かし、ストリートコースで2勝、終盤モンツァまでランキングトップを走った。A・セナのマクラーレン移籍に伴い、ロータスはアクティブサスペンションを止めた。

ロータスはアクティブサスペンションを止めたが、他チームは並行開発していた。ウィリアムズはR・パトレーゼ&T・ブーツェンで開発、FW14で完成させた。N・マンセルではミスが多く、91年は届かなかった。92年N・マンセル、93年A・プロストでチャンピオンを獲得し、アクティブサスペンション自体が禁止された。

 

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F1空力デザイナーの叡智の結晶。画期的空力デバイストップ10……成功作も、そして失敗作も Part2
12/28(水) 19:51 Yahoo!ニュース
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ロータス78(1977年)
 速いF1マシンを生み出すためには、空気をいかにコントロールし、味方につけることができるか……これが最も大切であるとも言える。70年以上にも及ぶF1の歴史の中で、数々のエポックメイキングな空力パーツが登場してきた。

【フォトギャラリー】あの6輪やファンカーも! 独創的F1マシン10台:一度見たら忘れられない名(迷)車たち

 そのうち5つを紹介しよう。

1. グラウンド・エフェクトカー:ロータス78(1977年)

 1960年代後半にウイングが登場して以来、F1マシンの空力は劇的に進歩していった。そんな中1970年代には、フロア下の気流を使ってダウンフォースを生み出す方向が検討されていった。

 そんな中最初の成功例となったのは、ロータス78。左右のサイドポンツーンの下をウイング形状にし、後方を跳ね上げる格好にして強力なダウンフォースを手にした。グラウンド・エフェクトカー(ウイングカー)の誕生である。

 翌1979年には78の後継であるロータス79が速さを見せ、チャンピオンを獲得。ただ、フロア下の気流が乱れると突如としてダウンフォースが失なわれ、コントロールを失うという事故が多発。このため、1983年からはグラウンド・エフェクトカーの使用が禁止された。

 このレギュレーション変更では、フロア下は平らにしなければならなくなったが、後端を跳ね上げる”ディフューザー”を設けることで、グラウンド・エフェクトカー同様のダウンフォースを手にできることになった。

 そして2022年、レギュレーションがさらに改定され、グラウンド・エフェクトカーが復活。ただ1970年代同様、複数のマシンが床下の気流が不安定になることで生じるポーパシングに悩まされることになった。

2. ダブルフロア:フェラーリF92A(1992年)
 
フェラーリF92A(1992年)
2. ダブルフロア:フェラーリF92A(1992年)

 フェラーリが1992年に投入したF92Aは、フロアとサイドポンツーン下面の間に隙間が設けられており、ディフューザーの上に向けて気流が通過するような構造になっていた。これによりディフューザーの効果を最大限に活用し、大きなダウンフォースを発揮させようとしたのだ。

 ただこのマシンは速くなかった。最大の問題はエンジンである。エンジンはパフォーマンスが低く、さらに信頼性も低い代物。しかし当時のフェラーリは”エンジン部門”の発言力が大きく、チーム内で「エンジンが悪い」と言えるような風潮ではなかった。そのため、空力面が槍玉に上がった。

 シーズン終盤には、ギヤボックスを横置きに変更。これによって、フロアとサイドポンツーンの間の隙間が塞がれてしまうことになり、かえってマシンのパフォーマンスが低下してしまうことになった。

 もし開発が順調に行き、エンジンにもパワーがあれば、F92Aは駄馬ではなく優駿となっていたかもしれない。

 このダブルフロアは、後にトロロッソも踏襲。2022年シーズンには、アストンマーチンアルファロメオフェラーリなどもこのダブルフロアを彷彿とさせるデザインのサイドポンツーンを登場させた。

3. Fダクト:マクラーレンMP4-25(2010年)
 
マクラーレンMP4-25(2010年)
3. Fダクト:マクラーレンMP4-25(2010年)

 2010年にマクラーレンが登場させたFダクト。マシンの前方のダクトから空気を取り入れ、それをマシンの内部を通してリヤウイングのフラップ背面に開けられたスリットから噴出する。これによって、ダウンフォースを必要としない高速走行時にリヤウイングの機能をストールさせ、最高速を向上させようとしたのだ。

 これは、コクピット内に設けられた開口部を塞ぐことでコントロールしていた。逆に開口部を塞がなければ、通常通りダウンフォースを発生。レギュレーションで禁止されていた空力パーツを動かすということをせずとも、ダウンフォースの量をコントロールすることができた。

 このシステムも非常に有益であり、マクラーレン以外のチームもこれを取り入れ、マシンのパフォーマンス向上に繋げた。

 ただこのFダクトは2010年限りで使用禁止となり、翌年からはリヤウイングのフラップを機械的に動かすDRS(ドラッグ・リダクション・システム)が導入。求める効果は、Fダクトと同じであると言っても過言ではない。

 このDRSはオーバーテイクを狙う際に使うことができるようになり、現在でも使われている。

4. 6輪マシン:ティレルP34(1976年)
 
ティレルP34(1976年)
 1976年にティレルがP34を登場させた。このマシンは小さな前輪が左右にふたつずつ、大きな後輪が左右にひとつずつ取り付けられた、6輪車だった。

 発表された当初は嘲笑されたが、いざ走ってみると高いパフォーマンスを見せ、注目を集めた。

 ティレルは前輪を小さくすることで、F1マシンの中で最も空気抵抗を生み出すタイヤの前面投影面積を削減し、最高速を引き上げようとしたのだ。しかし、タイヤの径を小さくしてしまえば、タイヤにかかる負荷のバランスが悪くなってしまう。そのため左右にもう1輪ずつタイヤを追加し、6輪とすることで対処したのだ。

 そういう意味ではエポックメイキングな空力デバイスと言えるだろう。

 6輪車はティレルは翌1977年まで使い、ウイリアムズやマーチ、フェラーリなどもテスト車両を開発するなどした。しかし、P34だけに対応したサイズのタイヤ開発が滞り、次第にパフォーマンスが低下。78年以降は6輪車は登場しなくなった。そして後にレギュレーションで、タイヤは4輪までと規定されることになった。

5. アクティブサスペンション:ウイリアムズFW14B(1992年)
 
イリアムズFW14B(1992年)
 アクティブサスペンションは、アクチュエーターなどを擁してサスペンションを能動的に動かし、マシンの姿勢を制御しようというもの。一見するとサスペンションであり、空力パーツではないように思える。しかし目指していたのは空力的な安定性であり、空力パーツと言って差し支えないだろう。

 ロータスが開発の先陣を切り、ウイリアムズがリ・アクティブサスペンションとして1992年のFW14Bで大成功を収めた技術。車体底と路面の間のスペースを一定にすることで、安定してダウンフォースを発生することができ、高い戦闘力を発揮した。ナイジェル・マンセルがこれを武器に同年のチャンピオンに輝いたが、ドライビング自体は非常に難しいらしく、チームメイトのリカルド・パトレーゼは大きく差をつけられた。路面と車体底のスペースを一定にするということは、車体が路面の凹凸に合わせて上下動するということになり、ドライバーにかかる負荷が大きいのは確かに想像できる。

 ウイリアムズに続き、フェラーリマクラーレンベネトンロータスなど、数々のチームがアクティブサスペンションを開発。1993年には一気にトレンドパーツとなった。しかし、”可動空力装置である”との判断が下された結果、この93年限りで使用が禁止された。

 当時使用が禁止された背景には、開発費の高騰という名目もあったが、当時よりも科学力が著しく進歩した現代ならばより容易に使うことができるという声もあり、復活を期待する声が度々上がっている。

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