F・ポルシェの"遺産"VWビートルとは?

A・ヒトラーの支援の下、F・ポルシェは国民向大衆車の開発を命じられた。

フェルディナントは、当時の普及技術レベルを鑑み空冷小排気量エンジン、FF用の良いコンポーネンツもなかったので前は舵で後ろ駆動、キャビンスペースを稼ぐため(プロペラシャフト不要で、後席も広く採る)後軸後ろにエンジンを置くRRレイアウトにした。(高速ハンドリングを念頭に置くため、FFは可能性なかった。)モノコックと呼ばれる応力外皮にするなら、御椀型に作るのが強度剛性が高い。御椀を左右切り落としたようなこの形は、空力にも良く作用した。

S・ローザやW・ロールなどのドライバーも、このクルマで運転の基礎を学んだ。

このビートルと呼ばれたこの形、以後の後継ポルシェにも引き継がれた。また、RRレイアウトのお陰で、縦置のミッション⇒エンジン⇒デファレンシャルと並べた。しかも、911後継模索した924以降のFRポルシェを作る際、本来ならエンジン+ミッションを180度移動させても良さそうなところ、エンジンだけをフロントに配置してリヤトランスアクスルレイアウトを採る下地にもなった。

全ての起源は、ビートルからなのだ。

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なぜフォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1)は偉大なのか?
1/28(金) 20:42 Yahoo!ニュース
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取材車のビートルは1975年型で、ヤナセで販売された正規輸入車だ。
1970年~1990年代に販売された“ちょっと、古い、クルマ”に焦点を合わせ、クルマをこよなく愛する俳優・永山絢斗が当時の車両の正体を暴く“探偵”に扮します。永山探偵をサポートする“物知り少年”は自動車評論家の小川フミオ(少年O)とGQ JAPAN編集部のイナガキ(少年I)のふたり。今回取り上げるのは、フォルクスワーゲンの「ビートル」(タイプ1)だ。

【写真を見る】今に走る1975年型ビートルの詳細(29枚) シンプルだけど奥深いタイプ1を徹底チェック!

映画でおなじみのビートル
少年I:僕が子どものころ、お母さんに「赤ちゃんはどこから来るの?」と、尋ねたことがあります。すると母はしばらく考えてから「イヌに咬まれると赤ちゃんが出来るのよ」と。しばらくして、僕の家の近所のひとが3つ子を出産しました。そこで僕は思いました。あぁ、彼女はきっとグレートデンに咬まれたんだなって。

少年O:もじゃっとしたヘアスタイルに、黒縁の眼鏡に、黒いタートルネックセーターで、神経質そうな喋りかた……。

探偵:それと、今回“探偵”するビートルとは、どういう関係があるんですか。

少年I:へへへ、映画『スリーパー』のウディ・アレンのマネ。映画のなかでアレンが、ダイアン・キートンをビートルのとなりに乗せながら、変なジョークを言うんです。

少年O:『スリーパー』は、1973年にアレンが監督したSF映画で、米国ではかなりウケたと聞いています。200年冬眠していた主人公が、未来の全体主義国家から逃走をはかるさい、洞窟のなかでホコリまみれになっていたビートルを見つけて、それで走るんです。使われていたのは1960年型の「デラックス」ですが、たしか映画のなかでは1990年型ってなっていたような……キーのひとひねりでエンジンがかかる。米国人の“ドイツ製品は頑丈”神話ですね。

探偵:1970年代のアメリカ映画に、ビートルはよく出てくるみたいですね。

少年O:アレンの大ヒット作『アニー・ホール』(1977年)では、キートンがビートル・カブリオレに乗っています。スティーブン・キングの原作を映画化した『デッドゾーン』(1983年)でも、クリストファー・ウォーケンが乗っていました。そういえば物語では、ウォーケンはビートルに乗っていて事故に遭ったことで5年間も昏睡状態に陥ったあと、特殊能力を身につけて目がさめる。ビートルと冬眠とか昏睡って相性がいいって、米国人は思っていたのかな。

実に“キュート”なんです。
少年I:今回の1975年型ビートルは、冬眠もせずに元気に走りまわっているクルマです。フォルクスワーゲン グループ ジャパンの広報を務めていらした池畑浩さんが、2008年に購入以来、フォルクスワーゲン車への知見を活かしてしっかりメインテナンスして乗っていらっしゃいます。

探偵:僕は1989年生まれなので、ビートルの名はよく知っていても、実車を運転する機会には恵まれていませんでした。あらためてじっくり拝見すると、角がまったくないスタイリングにまず、やられますね。実にキュートなんです。

少年I:ゴルフll乗りの探偵としては、やっぱり気になるところですか?

探偵:そうですね! ビートルの存在自体は昔から知っていましたので。

少年O:ドイツやブラジルやメキシコで、トータル2000万台以上作られたのは、存在感によるところが大きいように思えます。

少年I:池畑さんのビートルはドイツ北部のエムデン工場製です。ドイツでの生産が終了したのは1978年といい、いま同工場では「ID.」シリーズというピュアEV(電気自動車)が生産されています。

探偵:時代の流れを感じさせますね。

少年O:ビートルが最初に完成したのは1936年と言われています。設計者のフェルディナント・ポルシェ博士は、米・フォードに、経済学でフォーディズムとも呼ばれた大量生産方式を見学にいったりしたそうです。戦前、たいへんすぐれた工業国だったチェコのタトラは、同社のリアエンジン車である「タイプ97」(1933年)の特許を侵害したと訴えました。そういうこともあったんでよ。

探偵:当時としてはかなり先進的なクルマだったんですよね?

少年I:リアエンジンを後車軸より後ろにオーバーハングさせ、それで駆動輪にしっかり荷重をかけるなど、すぐれたアイディアはポルシェや、それに前後を逆にしてアウディにも引き継がれました。

少年O:ビートルが本格的に生産されるようになったのは1946年。ドイツが降伏したあと、占領軍がドイツの戦後復興策の一環として、産業育成策を採択したのがきっかけです。当初、ナチス政権が“国民車構想”として積立金を募って、申込者全員に当時「KdF(英語だとStrength Through Joy)ワーゲン」と呼ばれたオリジナル・ビートルを供給する計画だったんです。敗戦でこの企画は挫折しましたが、“タイプ1”とも呼ばれたビートルは命脈を保つことになりました。まさか北米でヒップなクルマとして大ヒットするとは、ポルシェ博士も予想していなかったんじゃないでしょうか。

少年I:日本でも“カブトムシ”って直訳されて愛されましたね。ビートルって甲虫の意味だから、角のないタイプ1はむしろコガネムシとかゲンゴロウだろうと思っていました。池畑さんによると、ボディの溶接後の仕上げの美しさも魅力だそうです。粗く仕上げてそこにモールをつけてごまかすような姑息なことをいっさいやっていない、すばらしい作りのクルマ、と大絶賛。

運転が楽しい!
探偵:運転させていただくと、“ほわーん”としていて、たいへん気持ちがいいんです。1192ccの空冷水平対向4気筒エンジンは、34psしかないようですけど、“ヒューバタバタ”と独特のサウンドとともに加速していく様子は、予想いじょうに快感です。ステアリングはやや接地感がないように思いますけど、クルマに任せていればまっすぐ走っていく。高速ではぐんぐんと速度計の針が上がっていくのもじつに頼もしいです。

少年I :そう思っているひとが世のなかにけっこういるのでしょうか。最近、かつて以上に、路上でビートルに出合う率があがっているような気がします。池畑さんによると、全長4m、全幅1.5mのボディ寸法のおかげで、軽自動車なみに扱いやすいそうですし。

探偵:エアコンもカーナビもないですが、現代でも通用しますよ。むしろ、ドライバーと近いドライブ感覚は、他ではなかなか得がたいものがあります。

少年I:おかげで、中古車の価格も上がっているんだそうです。「ミニ」と双璧ですね。池畑さんは、当時販売代理店だったヤナセと、ビートルの専門店である横浜・本牧の「フラット4」で整備をお願いしていらっしゃるそうです。補修用パーツに困ることもほとんどないそうです。

探偵:このスタイルが好きなら、いまも乗れますね。後席もじゅうぶんに使えるし。夏はツラいかもしれませんが。すてきなカーライフが楽しめるはずでず。

少年O:1980年代に都市部の小学生のあいだで流布していた、ある種の都市伝説です。黄色いビートルとすれちがったら幸せになれる、っていう。

探偵:なぜ黄色なんでしょう。

少年O:当時、ビートルが適度に多かったんで、とくに東京のようにガイシャが多い街では、それなりに出合うチャンスもあったんです。ただし黄色はかなり少なかったので、その稀少性と幸福を手に入れるチャンスとを結びつけたんでしょう。

探偵:なるほど。でも実際に乗るとしたら、どんな色のビートルでも、幸せになれそうですね。

【プロフィール】 俳優・永山絢斗(ながやまけんと)
1989年3月7日生まれ。東京都出身。2007年『おじいさん先生』(日本テレビ系列)で俳優デビュー。連続テレビ小説『おひさま』や『べっぴんさん』(NHK総合)、『ドクターX~外科医・大門未知子~ 第5シリーズ』(テレビ朝日系列)、そして2021年には『俺の家の話』(TBS系列)に出演。映画では2010年の『ソフトボーイ』で第34回日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞。

出演情報/
・2022年2月20日(日)23:00放送・配信WOWOWオリジナルドラマ『にんげんこわい』第3話『紺屋高尾』主演。


まとめ・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) スタイリスト・Babymix ヘア&メイク・新宮利彦 撮影協力・川崎キングスカイフロント東急REIホテル

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