AE86、トヨタレビン/トレノ

AE86トヨタレビン/トレノ、直列4気筒を積んだ2リッター迄のこのクラスでは、トヨタとして最後まで残ったFRだった。他のカローラ/カリーナ/スプリンター/コロナ/セリカ系をFFにしてしまった。ニッサンでは、直列4気筒2リッター迄のクラスはシルビア系をFRに残した。トヨタはA60系セリカの後はWRC車両を70スープラにチェンジしたが、ニッサンは240RS以後200SX(エンジンは3リッターV6ターボだったが。)に引き継いだ。

ニッサンはずっとシルビア系をFRで作り続けたが、トヨタは92型レビン/トレノ以降FFに変えた。しかし、トヨタはこのクラスのRWD車両として、FFコンポーネンツを移動したミドシップを新設した。MR2は初代が1.6リッターでAW11、2代目は2リッターでSW20になった。

AE86レビン/トレノは、トヨタ最後の5ナンバーFRだった。当時リッター100馬力のエンジンはなかったが、約900キロの車体は軽かった。本来はプロペラシャフトがなく軽いハズのAW11型MR2は、1,000キロを超していた。

FFコンポーネンツ、エンジンとミッションとデフを一体化したモノの制振は、エンジン&ミッションとデフをプロペラシャフト結合によるテコの原理が使えるFRより大変だ。

唯一の1.6リッターFRとしての需要を支え、土屋圭一や織戸学谷口信輝らのクルマとして人気を博した。

ワタシ個人は、ジーコが今も乗っているA60セリカの平目/ブラックマスクが好きだったし、S12シルビアが好きだったが。

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名機4A-GEに軽いFRシャシー 若者も吸い寄せるAE86 トヨタ・カローラ・レビン 
2022/05/15 11:05 AUTOCAR JAPAN1

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ほかのクルマが欲しくなくなるエンジン音

静まり返った真夜中に、冷えたエンジンを目覚めさせる。隣の住人へ申し訳ないと思いつつ、シートポジションを確認し、そっと住宅街を後にする。思わず気持ちが高揚する。

【画像】FRの名車 AE86トヨタ・カローラ・レビン 最新のGR86とGRカローラも 全85枚

こんな瞬間、いつも筆者は英国で展開されていたフォルクスワーゲン・ゴルフの広告を思い出す。俳優のリチャード・バートン氏が、4代目ゴルフのステアリングホイールを握っていたものだ。不穏な音楽に包まれながら。

ロンドンのような場所は、深夜でも街が眠ることはない。街灯の下では、若者たちが朝を迎えるのを惜しむように、他愛のない話を続けている。ガラガラの深夜バスが、するりと通りを抜けていく。

とはいえ、都心を運転するなら夜が1番。鮮やかなネオンで照らされ、商用車やタクシーも少ない。

ほんのり温かい夜にピッタリなクルマと、今晩は一緒だ。5速MTを2速へ落とし、アクセルペダルを煽る。明かりの消えたオフィス街に、ツインカム・エンジンの雄叫びが反響する。

この小さなクーペは、際立ってパワフルなわけでもないし、最速でもない。スタイリングも、息を呑むほど美しいわけではない。だが、ウインドウを開いて7000rpm近くまで吹けるエンジン音を耳にすれば、ほかのクルマが欲しいとは思わなくなる。

今回ご紹介するのは、少し古いトヨタミドシップのMR-2や、ハリウッド映画で名声を高めたスープラではない。ずっとベーシックなモデルだ。

雷を意味するレビンとトレノ

近年のトヨタは、明らかに違う。メカニズムをBMW Z4と共有しつつ、伝説的なスープラを見事に復活させた。スバルと共同で4シーター・クーペのGT86を発売し、世界的に高い評価を集めた。さらに、GR86へ進化させてもいる。

日本のAUTOCAR読者なら、いまさらかもしれないが、この86という数字には起源がある。巨大なパワーをあえて否定し、軽くバランスに優れたシャシーとドライバーとの一体感を重視しよう、と思わせたオリジナルがある。

それは、40年近く昔のカローラ。正確にいうならカローラ・レビンと、日本国内のディーラー・ネットワークのために派生した、スプリンター・トレノ。コードネームが、AE86だったのだ。

レビンは古代英語で稲妻を意味する単語で、トレノはスペイン語で雷鳴を意味する。トレノがリトラクタブル・ヘッドライトで、レビンは横に長い固定式のヘッドライトと差別化されていたが、基本的な内容は殆ど同じといっていい。

本日お借りしたツートーンのAE86型のカローラ・レビンは、英国トヨタのヘリテイジ部門が管理する貴重な1台。英国市場へ正規輸入されたクルマで、1986年から1987年にかけて作られた後期型となる。

若い世代でご存知なければ、カローラと聞いて当たり障りのない4ドアサルーンや5ドアハッチバックを連想しても、まったく不思議ではない。AE86型のカローラがスポーツカーだっとは、思いもよらないだろう。

軽量なFRシャシーに4A-GE型エンジン

カローラ・レビンは、細いヘッドライトへつながるくさび形のフロントノーズに、端正に傾斜したファストバック・シルエットを備えた、紛れもないクーペだ。スタイリングに派手さはないが、端的にスポーツカーが表現されている。

ターボチャージャースーパーチャージャーといった、過給器は載っていない。自然吸気の1.6エンジンに、5速のマニュアル・トランスミッションが組み合わされ、当時としては一般的だったフロントエンジン・リアドライブ(FR)のシャシーを持つ。

しかし一度ムチを入れれば、普通の組み合わせが、それ以上の輝きを放ち出す。車重は軽く、日本仕様の2ドアボディなら900kgしかない。直列4気筒エンジンの重さは、しっかりしたデフとアスクルが相殺。前後の重量バランスは理想に近いものだった。

フロントサスペンションは、フロントがマクファーソンストラットで、リアがリジッドアスクルの4リンク。前後ともに、コイルスプリングとディスクブレーキが組まれている。

さらにAE86を際立たせていたのが、1587ccのダブル・オーバーヘッド・カム(DOHC)エンジン。4A-GE型と呼ばれるユニットで、シャシーとのベストマッチングを披露した。特別なモデルにした立役者といえる。

この4A-GE型ユニットは、当時のトヨタが新しく設計したもので、1983年に発売されたAE86から導入が始まった。驚くほど軽量でありながら、充分パワフルだったことが最大の特徴。英国仕様では、自然吸気で125psを発揮した。

当時のトヨタ車らしいインテリア

バルブアングルが広く、インテークポートが大きく、レッドラインは7800rpm。高回転型ユニットの傑作の1機として数えられる。

加えて、トヨタ・バリアブル・インダクション・システム(T-VIS)を採用。デュアル・インテークに備わるバタフライバルブを4200rpmで切り替え、エンジンの回転数に合わせてトルクとパワーを最大化するよう、吸気量を調整していた。

お借りしたシルバーとブラックのカローラ・レビンは、ノーマルに近い。だが、綺麗に曲げられたエグゾースト・マニフォールドと、抜けの良いスポーツ・エグゾーストが組まれ、甘美なサウンドを放つ。

走行距離は7万2000kmを超えたばかり。キーをひねると、1.6LのDOHCエンジンは一発で始動した。心地良い音響が周囲を包む。

近隣の睡眠を邪魔しないように、そっと路地を出発する。ドライバーズシートは快適。数分もかからず、カローラ・レビンへ身体が馴染む。

ブルーのクロス張りシートに、プラスティック製であることを隠さないブラックのダッシュボード。いかにも当時のトヨタ車らしいが、ヘッドライト・スイッチを包むメーターパネルの照度調整ダイヤルなど、気の利いた機能も点在している。

夜の暗がりに合わせて、メーターの明るさを絞る。8000rpmまで振られたタコメーターと、時速140マイル(225km/h)まで振られたスピードメーターは、大きく見やすい。

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