引き継いだのは、"カウンタック"という名前だけ!

新旧などと気安く表現して欲しくない。

ランボルギーニカウンタック、名前は引き継いだが、実際に引き継いだのは名前だけ!

VWアウディーグループ、フェルディナント・ポルシェの"ビートル"を全くコンセプトもストラクチャーも違うゴルフの皮替に使った。ソレに続いて、ランボルギーニに於いて、レースに全く関わりない車両に"SVJ"を使い、機能と関係ない雰囲気だけ似せたクルマに"カウンタック"の名を付けた。

ランボルギーニカウンタックベルトーネのチーフになったM・ガンディーニが、当時の目一杯の技術を結集して、効率良くムダを削ぎ落とし時速300キロを目指した。しかし、プロトのLP500で容量不足が見えた箇所を焼き直したのが、生産型のLP400だ。真後ろ窓の視界と、エンジン高を詰めないため、ミウラのダウンドラフトを使用できずにエスパーダらのサイドドラフトを使用せざるを得なかった。そのため、LP500になかった、サイドのNASAダクトを空けた。冷却も苦しく、ラジエーター用空気取入口を設けた。

この時期、4リッターV12で得られる程度の馬力で300キロ以上を達成すべく、前面投影面積を小さくし、車体前方から鋭いクサビに整形した。車体上面流は速く流れるが、車体下面流はあまり速くない。高速域でフロントを強く抑え過ぎ、リヤが甘くなる。そんな、まだ風洞や空力理論も明確でなかった時代を模索したデザインだった。

このカウンタック、単に模倣しただけのフェイクでしかない。シアンにそれっポイ殻を被せただけだ。このクルマはダウンドラフトだ。バカみたいにリヤ車幅を拡げ、サイドのNASAダクトは吸気でないなら無意味な飾りだ。昔の倍の馬力&トルク、安定しても抵抗になりかねない4WD、先端の伸びた鼻の下、ドアは上へ開くシザースではなく、斜め上方へ拡がるインセクト。ただでも車幅広いクルマの、昇降改善の目的を果たさない。

スタンツァーニのコンセプトやガンディーニのデザイン意図をホントに理解せず、上っ面だけ取り繕うクルマだとわかる。

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ランボルギーニカウンタック」の新旧比較!
7/12(火) 12:11 Yahoo!ニュース
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手前が新型「カウンタック LPI800-4」、奥が「カウンタック 5000クワトロバルボーレ」
現代によみがえったランボルギーニカウンタック」は、時代が変わってもスーパーカーらしいデザインを継承できているのか。新型カウンタック「LPI800-4」が日本に上陸し、先代「5000クワトロバルボーレ」と並べて展示されたので、じっくり観察してきた。

【写真】横から見ると「らしさ」全開! 新型「カウンタック LPI800-4」の写真を見る

伝統のウェッジシェイプを継承

カウンタックランボルギーニの象徴であり、スーパーカーの代表格だ。クルマに詳しくない人でも名前を聞いたことはあるだろう。ランボルギーニ初のミッドシップスポーツカー「ミウラ」の後継として、1971年のジュネーブモーターショーでプロトタイプ「LP500」が登場。3年後に市販型の「LP400」が発表された。


その後は「LP400S」「LP500S」「5000クワトロバルボーレ(4バルブという意味)」、最終型の「アニバーサリー」を経て1990年まで、プロトタイプから数えると20年近くも存在し続けた。

低いノーズからフロントウインドーへとラインが一直線につながり、前端を支点として跳ね上がる「シザードア」を持つなど驚きにあふれたスタイリングは、ピニンファリーナとともにイタリアのカロッツェリア(架装工房)として有名だったベルトーネのチーフデザイナー、マルチェロ・ガンディーニが描いた。

一般的にはフロントに置くラジエーターをレーシングカーのようにサイドに配し、通常とは逆にV型12気筒エンジンの前側にトランスミッションを配置するなど、パッケージングも独創性にあふれていた。

カウンタックのあとを受けた「ディアブロ」「ムルシエラゴ」「アヴェンタドール」はすべて、このパッケージングを継承している。だからカウンタックに似た「ウェッジシェイプ」(楔形)を受け継ぐことができたといえるのだ。

そのカウンタックが復活したのは2021年。先代の誕生からちょうど50周年という節目の年だった。そして今回、日本に上陸した実車を見ることができた。

発表会では車名の由来についても紹介された。このクルマ、本場の発音では「クンタッチ」という。ベルトーネがあったピエモンテ州の方言で「ワォ!」という感嘆詞が「クンタッチ!」であり、プロトタイプを見た瞬間、関係者から発せられた驚きの言葉をそのまま車名に起用したそうだ。しかしながら私たちは長年、英語読みの「カウンタック」に慣れ親しんできたので、ここではカウンタックで通させていただく。

らしさ満載! 新型「カウンタック

ランボルギーニは同社初のマイルドハイブリッド車(MHEV)として2019年に発表し、63台限定で販売した「シアン」をベースに新型カウンタックを開発した。シアンはアヴェンタドールが積む6.5リッターV12エンジンにモーターを組み合わせ、システムでの最高出力は819psをマーク。新型カウンタックはこれと基本的に同じパワーユニットを積むが、最高出力は814psとなる。

車名のLPI800-4は、先代から使われている縦置きミッドシップを示す「LP」に、ハイブリッドを意味する「I」を加え、3桁数字は最高出力を表し、末尾の「4」は4WDを示したものだ。

会場にはクワトロバルボーレも並んでいたので、新旧カウンタックを比較できた。

新型のボディサイズは全長4,870mm、全幅2,099 mm、全高1,139mmで、クワトロバルボーレの4,140mm×2,000mm×1,072mmと比べるとかなり長くなった。V12の排気量が5.2リッターから6.5リッターに拡大し、モーターが追加となっているうえに、衝突安全性向上のため前輪とキャビンを離し、キャビンスペースにゆとりを持たせたことなどが全長拡大の理由だろう。

しかしながら、真横から見たときのシルエットはそっくり。エンジンの前にトランスミッションを配し、ラジエーターをサイドに置くという、先代以来のパッケージングを引き継いでいることが大きい。

シザードアは先代では真上に跳ね上がった。ムルシエラゴまではそうだった。しかしアヴェンタドールでは、やや外に張り出しながら跳ね上がるようになった。プラットフォームの一新に伴うもので、新型カウンタックもこの開き方だ。

しかしながら、ドアに刻まれた「NACAダクト」(NACAはNASAの前身)と呼ばれる独特の形状のインテークは先代以来の復活。これだけでカウンタックらしさが格段にアップしている。台形のホイールアーチは、クワトロバルボーレなどに装着されたオーバーフェンダーのオマージュだという。

鏡越しでも拝めるV12エンジン

ノーズは細いバンパー、ウインドスクリーン前の上下に薄いインテークなど、先代のプロトタイプLP500に似た部分が多い。サイドウインドー後方にあるインテークの形状もクワトロバルボーレに比べれば簡潔で、LP500に通じる造形だ。

リトラクタブルヘッドランプが継承されなかったのは、衝突安全性能の確保を考えれば仕方ない。大きく寝かされたウインドスクリーンが六角形だったのは先代の特徴。新型はノーズの一部をブラックとすることで、それを強調していた。

ルーフには台形の凹みがある。これも先代LP400まで存在したディテール。後方視界が限られることから、ここに小さなリアウインドーを用意したのだ。新型ではここからエンジンフードへ向けて凹みを連続させている。

エンジンフードの裏側に鏡があって、中に収まるV12を鏡越しに見ることができるという粋な演出もあった。エンジンがやや左にオフセットしているのは、トランスミッションから前後輪に力を伝えるシャフトを右側に配置したためだ。

リアはコンビランプの形状で先代の面影を受け継ぎつつ、発光部は六角形にデザインされたうえで全体が上下に薄くなり、下にエンジン放熱用グリルや4本出しマフラーが重なって、先代以上にアグレッシブな眺めだ。

大きく変わったのはインテリア。インパネの造形は今風になるとともに、最新のスーパーカーとして必要な快適装備が盛り込まれた。シートは低いが背もたれはさほど寝ておらず、ペダルは衝突安全性を考えて手前にあるなど、ドライビングポジションの違いも確認できた。


残念なのは、生産台数が先代のプロジェクトナンバーに由来する112台のみで、多くのスーパーカーの限定車がそうであるように、すでに全車が完売していること。経済的に買えないことは承知だが、誰が見てもカウンタックの新型とわかる姿だっただけに、もっと多くの人たちの夢を実現させてもいいのではと思った。


森口将之

1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。
森口将之

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