R32GT-Rニスモは、ノーマルより遅いって?

ノーマルだと遅くて乗れない?んなワケ、ないじゃん!表現がおかしい。

単にピーキーな取り扱いになると言うだけで、遅くなるワケではない。チューニングの変わったクルマをドライビングする上で、よりピーキーになるチューニングをされたクルマをそれまでと同じドライビングをしたら、確かに遅くなる。しかし、キチンとそれを見越したピークに合わせたドライビングが必要になる。

オートバイでも、より高回転にシフトしたエンジンを前と同じ感覚でドライビングしたら遅く感じ、より上を回すドライビングにチェンジする必要がある。

そうした要素を排除した表現でしかないように思える。

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すべては勝つために! 伝説の限定車「R32 GT-R NISMO」が「意外」と遅かった理由とは
4/23(金) 18:38 Yahoo!ニュース
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ノーマルでは遅くて乗れないR32GT-R NISMO
 
500台の希少性と専用装備で注目されたR32スカイラインGT-R NISMO
「R32スカイラインGT-R NISMOについて書いてください」という依頼が来た。「あれは改造しなけりゃ遅いしさぁ、よっぽどパルサーGTI-RやブルーバードSSS-R(後期型のSR20DET搭載車)のほうが、素の状態では速いと思ったけど」と断るつもりだったが、改めて振り返ってみようと思う。

【画像】グループA車両も掲載! R32スカイラインGT-R NISMOの全貌(全12枚)

R32に課せられたふたつの使命
 1989年、16年振りに復活したGT-Rブランドに世のクルマ好きは歓喜した。R32スカイラインGT-Rである。このR32GT-Rが掲げた開発目標は、世界トップクラスのロードカーであること。そしてそれを証明するためにレース「グループA」で他を寄せ付けない強さを持つこと、とされた。

 グループAは当時、世界的にもツーリングカーレースの頂点に位置するカテゴリーだった。ただし、あくまで市販車がベースであり、現在のスーパーGTマシンに比べれば、かなり改造内容も狭いものだった。このため自動車メーカーは、あらかじめレース仕様に改造した際に有利になるスペックを市販車に盛り込む必要があった。主なところでは、エンジンの排気量やターボチャージャー、駆動方式のほか、空力デバイスである。

 さらに、このレースに参加するためには「連続する12カ月間に5000台以上生産された4座席以上の車両」として、ホモロゲーション(公認)を取得する必要がある。しかも、5000台生産した後にFIAに申請しなければならなかった。

 レーススペックを盛り込んだクルマを作るとなると、この5000台という数は自動車メーカーにとって大きな負担となる。ところが、そこには抜け道があった。

グループA優先のエボリューションモデル
 FIAでは、正常進化版というべきエボリューションモデルの追加を認めていたのだ。しかも、その条件は「スポーツエボリューション(ES)には、500台以上の追加生産が必要」となっていた。この500台にさらに特殊なスペックを盛り込めば良いのである。

 こうした点を踏まえれば、1989年に登場したR32スカイラインGT-R(基準車)は、ホモロゲーションモデルである。エンジンは2568ccという中途半端な排気量を与え、大きなレースタイヤを装着できるようなワイドなフェンダーやエアロパーツを装着。さらに600ps以上の大パワーを路面に叩きつけるための電子制御トルクスプリット4WDシステム「アテーサE-TS」などを盛り込んだ内容となっていた。

 翌1990年には500台限定で「GT-R NISMO」を追加する。これが500台を生産すれば良いスポーツエボリューション(ES)にあたる。

 エンジンにはレース仕様にした際に600ps以上を確保できる大容量のメタルターボを採用。空力デバイスとしてサイドシルプロテクター、リヤの小型スポイラーなど基準車とは異なるエアロパーツを装着。さらにインタークーラーラジエータの冷却性能を高めるフードトップモールやフロントバンパーダクトを追加した。

 また、レースには必要とされない装備の簡略化も行われた。ABSの廃止、エアコンとオーディオの未装着、リヤワイパーの廃止などである。ちなみにこの時代、ABSはまだレースフィールドでは必要のないものとされていた。

日常ではNISMOの本領は発揮できない
 
専用エアロをR32 GT-Rの標準グレードに装着する人も多かった
 さて、冒頭の「ノーマル状態のGT-R NISMOは遅い」という話の理由は、大容量メタルターボによるところが大きい。グループA仕様ではカムシャフトやバルブタイミング、抜けのいい排気系(いわゆる直管マフラー)を使って総合的にチューニングできるので、大きなメタルターボでも中低速からレスポンスよく使えるのだ。

 しかし、これが市販状態となると、触媒や消音機を装着した細い排気管となる。さらにカムシャフトやバルブタイミングも環境性能やアイドリング時の安定性などを考慮し、性能を優先したスペックにはできない。ノーマルのGT-R NISMOは最大加給圧も基準車とほぼ同じ設定だったので、中低速でのレスポンスは悪いうえに、高回転域でも思ったほどのパンチ力がなく、遅いと感じたのだ。一方、基準車はレスポンスのいいセラミックターボを採用しているので、日常的に使うシーンでは優れているというワケである。

R35にも受け継がれたNISMOの存在価値
 総括すると、当初の開発目標である「世界トップクラスのロードカー」はホモロゲーションモデルの基準車で達成し、「グループAレースで他を寄せ付けない強さ」を達成するためにスポーツエボリューション(ES)のGT-R NISMOが存在したと理解すべきだ。

 それは現在のR35GT-Rにも同じようなことが言える。基準車は世界トップクラスのロードカーとしてGTカー路線を極め、ニュルブルクリンクで世界最速の量産車を目指すのが現代のR35GT-R NISMOの立ち位置である。30年以上前に確立したR32スカイラインGT-RのDNAは最新のNISSAN R35GT-Rにも脈々と受け継がれていると言える。
酒呑童子

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