変わってしまった。

こういうクルマ、フェラーリと呼ぶべきなのか?

元々、フェラーリと言えば(バンク角が何度でも)基本V12、フェラーリミュージックと言われるハイトーン、そしてピニンファリーナのデザイン。2座でも2+2でも、FRでもミドシップでも良いのだ。

エンツオの死後、変わってしまったように思う。ピニンファリーナでなくなり、デザインは単に図形を貼り付けたようなモノが増え、厚く長く広く重くなっている。60年代フェラーリみたく、レース直系を思わせるエクイップメントもない。エンジンも馬力任せで、排気量を増やすばかり、吸気排気管が太くなったからか、フェラーリミュージックも失われたように感じる。

別に、レース他の競技レギュレーションありきに開発されるコトはある。

例えば、288GTOは当時企画されたグループBに向けた開発だったし、F40や348らはレースに出た。今でも、488系はGTレギュレーションに合わせたモノだが。

しかし、エンツオ死後、単に名前を引き継ぐばかりの派生が増えた。単なるビジネスで出たクルマ、レースとの関連は薄いクルマばかりだ。速さはエンジンパワー任せ、パワーは排気量任せや過給任せ、スタイリングは裸の王様状態、醜さを咎める声は内部にも外部にもない。

もはや、存在しているだけだ。

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出来過ぎのフェラーリ!? 家族で楽しめてオープンにもなる!
5/25(火) 7:30 Yahoo!ニュース
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Kazumi OGATA
昨年9月に発表された、フェラーリの2+2モデル「ポルトフィーノM」が日本上陸を果たし、ついに試乗する機会を得た。語尾に記された“M”は、2017年秋にデビューしたポルトフィーノのマイナーチェンジ版という意味で、イタリア語でModificata、英語ではModified(モディファイ)を示し、過去にも同じような表現でフェラーリは度々マイナーチェンジ版をリリースしている。

美しいスタイルの「使いやすい」フェラーリ。走りや内装の画像を見る(写真14点)

これまでの筆者の経験から察すると、フェラーリのマイナーチェンジというのは、大抵は改善が多く、反省点を改良してくるモデルがほとんどだったが、このポルトフィーノMの場合はやや違う。冒頭から結論を言ってしまうと、正常進化版であると同時に、最終形らしく、見事なまとめ方が強く印象に残った。

今回行われた変更点は主に3つある。まず、フロントに搭載される3.9リッターV型8気筒ターボエンジンは20ps向上させて620psにパワーアップ、次にドライブモードのマネッティーノにRaceモードが追加されたこと、さらにギアボックスが7速から8速に改められた点である。その他には、エクステリア&インテリアのデザインに若干ながら手を加えたことも挙げられるが、個人的にはADAS(先進運転支援システム)がオプションで用意されたのがもっとも驚かされた部分だ。

走り始めて真っ先に進化を感じるのは、微速域での乗りやすさだった。以前もけっして悪くはなかったが、ポルトフィーノMはわずか1200rpm程度でも十分なトルクが得られるだけに街中での扱いやすさが際立つ。これは単に1速追加したのではなく、SF90ストラダーレと同様の手法で造られたオイルバス式デュアルクラッチ機構をベースにした新ユニットということに加え、クラッチのトルク制御をより効率化させているため、変速する際のショックが抑えられているのが主な理由だ。

そのぶん、エグゾーストサウンドはやや曇ったように感じられるが、これは汚染物質基準を満たすために採用したGDP(ガソリン・パティキュレート・フィルター)による影響と思われる。もっとも低速域でフェラーリらしい“快音”を求めるのは遠い過去の話だから、音さえ気にしなければ、これほど扱いやすいフェラーリはないだろう。

20ps上乗せされた3.9リッターV型8気筒ターボエンジンは、そのパワーアップされた数字よりも8速化されたこととの相乗効果のほうが強く印象に残る。燃焼室の充填を最適化するためにバルブリフト量を増やしたほか、軽量な中空パイプとスプリングを改めるなど細部にわたって変更したこともあり、レスポンスも向上。そのうえ、8速化が功を奏し、高回転域にいくに従って全域でトルクの恩恵を預かれる印象だ。

これはバリアブル・ブースト・マネージメントの搭載に加え、35%増加したトルクデリバリー、そしてソフトウェアが書き換えられた効果だとフェラーリは主張する。しかし、その最たる“真価”を知るには、やはりサーキットやワインディングということになるのだが、今回は残念ながらその機会は設けられず、街中とわずかな高速道での試乗に留められた。とはいえ、タイミングを見て加速を試みると、さすがにRaceモードへの期待が膨らむ。

その加速感やトルクフィールは、新世代“ターボ・フェラーリ”の完成形とも言いたくなるほど、熟成した印象だ。もはや、ポルトフィーノの原型ともなったカリフォルニアTでの失敗を忘れさせてくれそうなほど、改善と進化の跡を体感できる。実際、ここまで記した以外にも詳細にわたり改善策を施しているのだが、逆にそうした策を意識させずに、官能的に進化を体感させるのがフェラーリの真骨頂。それを思うとポルトフィーノMの官能性は、エグゾーストサウンドを除けば、すべて極めた印象すらある。

もちろん、コーナリングもしかり。高速道での試乗ゆえにタイトターンなどは試せなかったものの、フェラーリの主張どおり、アクセルワークに対してステアリングの舵角に正確性が増したように感じられるし、ブレーキペダルの移動量が約10%減少したことで反応が素早くなったことなど、スポーツ走行には重要な部分にさらなる進化が見られるから、乗れば乗るほど、サーキットに向かいたくなった。

正直に言わせてもらうと、今回は、ほんの試し乗り程度。これくらいでフェラーリの進化を語るのは実質不可能だ。機会が設けられただけでも有り難いのだが、どうも腑に落ちない点もないわけではない。などと、帰路の首都高でACCをONにした後、我に返ってそう思ってしまった。ちなみにこのACC、言うまでもなく機能的には問題ないが、他社とは違ってスイッチをダッシュボード側に配置しているのが微妙。もっともオーナーになって慣れてしまえば問題ないのかもしれないが、複数台所有する人の場合は、やや不満に思うかもしれない。

そして敢えて付け加えるなら、純内燃エンジンを搭載したフェラーリはこれが最後になるということ。すでにフェラーリは2022年までに全体の60%はハイブリッド化すると発表しているように、噂されるSUVや、F171というコードネームで開発が進められるF8トリブートの後継車はV6ハイブリッドとなることから、いずれポルトフィーノに代わる次期FRモデルもほぼ同じパワートレインでデビューすると予測できる。となれば、ポルトフィーノMの価値が分かるはずだ。今買って損はない、もっとも身近なカジュアル・フェラーリである。

文:野口 優 Words: Masaru NOGUCHI 写真:尾形和美 Photography: Kazumi OGATA
Octane Japan 編集部

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