クルマの顔としてのフロント、売上に直結する?

クルマのフロント、顔という意味の見掛けも空力や冷却効果やヘッドライトなど保安部品のレイアウト表現体でもある。

スポーツカーなどの趣味のクルマはかなり美的要素、セダンやバンなどの実用性重視のクルマは機能的要素、ステーションワゴンやミニバンなどはマニアックな見た目要素など、求められる要素は均一ではない。

スポーツクーペなどのフロントなら、デザインで優れている/引かれないなど印象あるが、ミニバンやワンボックス見たら、どれも金ピカメッキだらけで、何が秀逸かわからずドン引きしてしまう。ホントに、ベルファをアルファが大逆転したのはデザインのせいか?単に、ネッツ店に対してトヨペット店の巻き返しじゃないの?

ミニバンやワンボックスなどは、デザイン良いとかでは売れないョ!

 

 

 

 

 

 

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クルマの顔つきは、どこまで売れ行きに影響するのか
6/13(月) 12:05 Yahoo!ニュース
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クレイモデル製作の実例
 デザインには、人の心を動かす力がある。それはクルマであっても同じで、これだけ自動車市場が充実して性能や品質が粒ぞろいの中にあっても、デザインは売れ行きを決める重要な要素であり続けている。

【画像】斬新すぎたホンダ・インテグラ

 だから、というわけではないがカーデザインの現場は、現在もけっこうアナログな部分が残っている。まずデザイナーは新型車のイメージをラフスケッチで描いていく。紙に色鉛筆で描く人もいれば、ペンタブレットを使ってモニターを見ながら線と面を創り上げていく人もいる。どちらにせよ、最初はデザイナーの手描きだ。

 そこからイメージが決まってくると実際の寸法や機能を考慮したデザインへと、デザイナーは詳細に描き込み仕上げていく。そして5分の1程度のスケールでクレイモデルを製作し、立体モデルとしてさまざまな角度から眺める。こうやってデザインが定まってくると、実物大のクレイモデルを製作するのだ。

 現在ならPC上で上下左右360度回転させてスタイリングを眺めることもできる。20年ほど前からクレイモデルレスの工程を採用するメーカーも出現し、トヨタなどは100%クレイモデルレスでデザインが完成されている。一方で、マツダ三菱ふそうなど、未だにクレイにこだわるメーカーも少なくない。

 人間の感性に訴えかける部分は、リアルなモデルで研ぎ澄ませたいというこだわりもあるが理由はそれだけではない。なぜならスケッチと違い、3Dモデルには正確な寸法が必要であり、そのためにはクレイモデルを作成する方が効率がいい場合もあるからだ。

 クレイモデルレスのシステム開発にはかなりのリソースを割く必要がある。市販のソフトウェアそのままでは、自動車メーカーの求めるクオリティには達していないのである。

 クレイモデルの製作自体は1930年代にクルマのデザインに持ち込まれてから、大きくは変わっていない。ただし作業を効率化できる工程はかなり機械化、自動制御が導入されている。

 例えば5分の1のクレイモデルで検討した後に、原寸大のクレイモデルを作る際には、スケールモデルを採寸して大型の切削機械で全体のフォルムを削り出していく。手作業ではとてつもない労力となる工程を機械化することで、時間と労力の削減を実現している。

 昔は定盤の上で作られたクレイモデルを型取り用のゲージなどを使って寸法取りしていた作業も、三次元測定器を使うようになってからはポイントごとに当てるだけで測定が可能になった。現在は3Dスキャナーをクレイモデルの表面に当てるだけで、精密な測定が瞬時にできる。

 こうしてラフスケッチから生まれたデザインは図面となり、金型を作り出せる環境へと続いていくのである。

特にフロントマスクはクルマにとって一番重要だ
 クルマのデザインで最も気を使うのは、やはりフロントマスクであろう。クルマを見た時にまず印象に残るのはフロントマスクであることが圧倒的に多く、そのクルマのイメージを決定付けるものとなる。

 人間でも第一印象が評価の9割を占める、といわれている。ギャップ萌え、というのもあるが、基本的には第一印象の評価を変えるのは大変だ。

 とはいえクルマは工業デザインであり芸術作品ではないから、当然のことながら機能のために盛り込まれているデザインもある。

 ボディでいえば、以前紹介したピラーやウインドウの形状、ドアハンドルやミラーなどは機能を追求しつつもデザインとの両立が求められる。プレスライン(メーカーによってはキャラクターラインと呼ぶ)は平面的なボディにメリハリを与えるだけでなく、剛性を高めるためにも盛り込まれている。

 フロントマスクでは、機能的にデザインに影響を与えるファクターとしては剛性ではなく空力性能や冷却性能といったもので、さらには灯火類など盛り込まなければならない制約もある。

 そしてこれまで発売された中でも、フロントマスクにより不人気となってしまったクルマは少なくない。代表的なものとしてはホンダ・インテグラの二代目前期モデルが挙げられる。

 これはグリルレスに丸型4灯ヘッドライトを組み合わせるという大胆なデザインで、北米市場では受け入れられたかもしれないが、日本では奇抜すぎて抵抗を覚える人が多かったようだ。2年後のマイナーチェンジでは、フロントマスクを横長のヘッドランプとフロントグリルを与えた先代のイメージに戻すほどの大手術を行ったのだった。

 グリルレスというデザインは空力性能を優先し、冷却性能は従来あるべき位置のフロントグリルではなく、アンダーグリル(バンパーの下に備えるグリル)で冷却性能を確保して、バンパーより上は後方へと空気を受け流すことを狙ったものだ。しかし、機能よりも特異なデザインが先行してしまい、敬遠されるケースが目立つ。

 グリルレスのデザイン自体はクルマの黎明期から登場している。しかし近年の成熟した自動車市場では、目新しさを狙ったデザインとして時折挑戦されてきたが、話題にはなりつつもヒットに結び付いたことは聞いたことがない。

 EVが続々と登場している現在、グリルレスは市民権を得てきたように思えるが、まだまだ違和感を覚える人も少なくないようだ。

大きくて立派なグリルが人気を博すワケ
 近年、軽ハイトワゴンやコンパクトミニバン、ミニバンで人気を集めてきたのが、フロントグリルを大きくしてヘッドライトなども強調した、通称オラオラ顔と呼ばれるフロントマスクだ。

 どうせ買うなら高そうに見えた方がいい、強そうに見える顔つきに魅力を感じる……。そうしたユーザーを積極的に取り込もうとしている意図が、その背景に見てとれる。

 クルマに乗ると性格が荒くなる、という人もいるが、そうした人はこうしたクルマを選ぶ傾向にあるのではないだろうか。心理学でドレス効果と呼ばれる、身に付けるモノで振る舞いが変わるのはクルマにおいても通じるのだから、あおり運転が社会問題となっている現在、自動車メーカーも今後は配慮していく必要があるだろう。

 フロントマスクが売れ行きにいかに影響を与えるかを端的に証明しているのは、現在のトヨタ・アルファードヴェルファイアの販売台数の違いであろう。両車はデザインを除いて基本的に同じクルマで、いわゆる兄弟車種だ。その中で、先代までは常に過半数を占めるほど人気だったヴェルファイアが、現行モデルでは何とアルファードの10分の1程度にまで落ち込んでしまった。

 先代まではトヨタの販売チャンネルごとに専売車種が設けられ、ヴェルファイアトヨタ ネッツ店だけで販売されており、アルファードトヨペット店という老舗の実力店が多いチャネルで扱われていた。それにも関わらず、ヴェルファイアの方が売れていたのは、偏にフロントマスクのデザインがユーザーに支持されていたからだ。

 現行モデルでは、先代で人気を博した薄いヘッドライトを二段にレイアウトしたスタイルを踏襲しつつ、全体的にスクエアでエッジの効いたフォルムに仕立てられた。アルファードとの棲み分けのために若々しさを盛り込んで、比較的若年層にウエイトを置いたクルマを目指したのだろうが、販売の方は振るわなかった。

 これはヴェルファイアのフロントマスクが良くないのではなく、アルファードのデザインが秀逸過ぎた、ということだろう。それくらい、現行のアルファードのフロントマスクは良く出来ている。まるで中世の騎士が身に付けた兜を想わせるような、堂々としたフロントグリルを中心としたマスクは、幅広いユーザーに支持されて大ヒットとなったのである。

 しかも発売後7年を経過したLLサイズのミニバンでありながら、未だ乗用車の販売台数で10位以内(2022年5月は5位!)をキープしているのは、驚異的としかいいようがない。

 これぞデザインの持つ力であり、クルマに対してはお金をかけてもいいという、クルマによってステータスを得ているユーザーの心を掴み続けることを可能にするのだ。クルマ社会のヒエラルキーを形成しているのは、ブランドや価格だけでなく、デザインの影響力が非常に大きいのである。

(高根英幸)
ITmedia ビジネスオンライン

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