XVLはローレルやセフィーロであって、スカイラインではない!

XVL自体が、日本市場に於ける2.5~3.5リッターのV6を積む3ナンバー用=無差別級FRのプラットホームだった。E46までのBMWの車体は、1.8~3リッターの直4~直6を搭載するモノで、一回り小さい。

テコの原理で、車体寸法が広く長いと旋回も安定も良い。車重要素を抜きに考えれば、デカけりゃ良いのは当たり前なのだ。抜け抜けと、飛躍的に嵩の増えた車重をパワー&トルクで動かすクルマになった。確か、このクルマから水野サンだったハズ。

このクルマ唯一の良さは、Q45アクティブサスペンションから引き継いだ、"姿勢変化を抑える"、"伸びない"サスペンションをパッシブ的ダンパーで再現したコトだけだと思う。

この方向を伸ばすなら、スカイラインなどではなく、ローレルやセフィーロであるべきだった。

5ナンバーサイズでの運動性やスペース効率を追求した、R32までのスカイラインとは全く異質な車体になった。というか、日本のクルマ作りを残らず肥大方向に舵取りしてしまったクルマだ。

 

 

 

 

**********************************

たしかに不人気だった……でも日産車を世界のステージへ!! いま再評価すべきV35と革新的プラットフォーム
2022/09/17 11:05 ベストカーWeb12

1/5
Next
すべてみる
全5枚
スカイラインの価格・グレード・レビューなどの情報を見る
V35スカイラインや、Z33フェアレディZで採用されていた、日産のFR-Lプラットフォーム。現行V37スカイラインや新型フェアレディZ(RZ34)にもその改良版が引き継がれている、日産が誇る名プラットフォームなのだが、世間ではあまり評価されていない。

なかでも、そのプラットフォームを搭載したV35スカイラインの国内での評価はいまいちで、「もっとよさを知ってほしい」と思うモデルのひとつ。もちろんスカイラインとしての大きな転換点でもあったが、間違いなく国産車の完成度はグッとアップさせた存在だった。

たしかに不人気だった……でも日産車を世界のステージへ!! いま再評価すべきV35と革新的プラットフォーム

日産のFR車が転換期にきているいま、V35スカイラインとFR-Lプラットフォームのよさを振り返ってみよう。

文/吉川賢一、写真/NISSANINFINITI

BMW対抗馬「XVL」がスカイラインになるのは必然

2001年登場の11代目日産 スカイライン(V35型)。エンジン、型式番号、テールランプの意匠……何から何まで変わったスカイラインはお世辞にも市場に受け入れられたとはいえなかった

V35スカイラインが国内登場した2001年当時のネット上のコメントをみてみると、直6エンジンの廃止(V6エンジンへ移行)や丸目四灯テールランプの廃止、上方向へ膨らんだ野暮ったいスタイリング、フロントセクションのカッコ悪さ、価格上昇など、否定的なコメントが非常に多い。

V35スカイラインは、日産が、1999年の東京モーターショーで発表したコンセプトカー「XVL」が源流だ。

XVLは、「21世紀の理想のプレミアムスポーツセダン」として開発されたモデルで、2850mmという後席を重視したロングホイールベースや、パワフルな3.5L V6エンジン(当時のBMW3シリーズは最大でも3.0Lだった)など、BMW3シリーズ、メルセデスCクラスといった、ドイツ製高級セダンとガチンコ戦えるよう開発されていた。

もともと、日産の北米向け高級ブランドINFINITIの新型セダンとして開発されたXVLだが、90年代末といえば、日産が倒産危機に陥ったことで、ルノーからやってきたカルロス・ゴーン氏による大胆な「断捨離」が行われていた時代。

高級FRであるXVLと、国内専売スカイラインの後継車の2車種を開発することは困難だったのだろう、急遽、「XVL」の企画とスカイラインが統合されることになったのだ。

そのため、歴代スカイラインが踏襲してきたアイコン的なデザインを織り込む余裕はなく、2004年のマイチェンで丸目四灯を復活、フロントグリルデザインも変更されたものの、一度離れた顧客が戻ることはなく、国内のスカイラインファンからは、前述のように、否定されるモデルとなってしまった。

■海外BMW並の性能で大きく評価されていたV35

日本市場での不評とは裏腹に北米ではインフィニティ G35として販売され大ヒットした

だがV35は、INFINITI「G35」として販売された北米では、「BMWイーター」といわれるほど大ヒット。INFINITI史上、最も売れたモデルとなった。

日産が調査したところによると、ヒットの理由は、「パフォーマンスはBMWと同等以上、でも価格が大幅に安い」ことだったそうだ。「いいものはいい」と評価してくれる北米市場の気質が、G35がヒットした理由の一つでもあったのだろう。

当時、日産栃木実験部のエンジニアであった筆者も、栃木工場で生産された大量のG35が、キャリアカーに乗せられていく姿を毎日目にしていた。

BMW3シリーズ(E46)は当時、「世界一のハンドリングを持ったスポーツセダン」として有名だった。

前後重量配分は50:50、ショートオーバーハング、低車高でアイポイントが低く、ズシリと重たいダイレクトなハンドリング特性が魅力で、乗り心地は多少犠牲になってはいたが、「スポーツセダンの見本」として、世界中のメーカーが、このモデルのハンドリングを目指していた。

そんなBMW3シリーズ(E46)を目指して開発された、G35(=V35)も、コーナリング性能がしっかりと磨きあげられており、当時、筆者も実験部内で乗り比べをさせてもらったが、BMWはフロントからクイックに曲がる特性であるのに対し、V35はリアがどっしりして安心感が高い、という印象。

G35では、サスペンションが硬い方向で調整されていたことと、グリップの高いタイヤを装着していたこともあり、日本向けのV35よりも乗り心地は悪かったが、そのぶんBMW3シリーズに肉薄するダイレクトフィールが得られていた。

当時、運動性能設計の駆け出しエンジニアだった筆者は、日本車でここまで運動性能が優れたセダンがあるのかと、驚いたことを覚えている。運転好きには、BMWのもつ俊敏性の方が好まれたが、後席乗り心地を含めた全体のバランスは、V35の方が優れている、という意見もあった。

国内の何十倍も売れ、INFINITIを確固たるブランドへ成長させ、そして、日産を支えてくれたG35(=V35)。ちなみに、チーフビークルエンジニアは、かの有名な水野和敏氏だ。

■重量物をホイールベース内に収め、ヨー慣性を最小化したパッケージング

2001(平成13)年発売の11代目スカイラインV35型。全長はライバルと同等だったが、2850mmというロングホイールベースはライバルよりも長く、後席スペースは最も広かった

日産がV35へ取り入れた最大の工夫が、「FMパッケージ」だ。

重たいV6エンジンを、エンジン重心点がフロント車軸の真上に来るようにレイアウトすることで、フロントオーバーハングにあった重量物を遠ざけてヨー慣性を低減、また、縦置きエンジンとトランスミッションをつないだドライブトレインの高さを、可能な限り低く配置し、車両重心高の低下を狙った。

これらは全長が短いV6エンジンと、ロングホイールベース化によってパッケージングに自由度が生まれたことで実現ができたことだ。

ただ、ロングホイールベース化は、車両安定性の向上に大きく寄与する反面、操舵の初期応答にはネガティブに働く。そのためV35では、前輪を前方に出してオーバーハングを短くし、重量物は極力、ホイールベースの内側に置いている。

また、タイヤを車両四隅へ配置した分、車体の曲げ剛性やねじり剛性も向上、タイヤが発生する力を車体が遅れなく受け止められるよう、強靭な車体構造とした。

リアサスペンションには、新開発のマルチリンクサスペンション(QI-2)を採用。

QI-2は、前後剛性は低く、横剛性やトーチェンジ特性は高いという優れたリアサスで、V35の後継車であるV36はもとより、Z33Z34など、以降の日産のほとんどのFR車に採用されている(ジオメトリ修正やブッシュ特性はその都度、再チューニングされている)。

基本的なポテンシャルが高いマルチリンクなので、どんなクルマにも合わせ込むことができ、バッテリーEV「アリア」にも、QI-2w(「w」はワゴンタイプのこと。ショックアブソーバーとバネが同軸配置なのでフロア高を下げたいワゴン向け)が使われている。

こうしたアイテムを押し込んだFR-Lプラットフォームは、V35スカイライン(INIFINITI G35)をスタートとして、ホイールベースやサス形式は改良されながら、その後の日産の後輪駆動車の「礎」となって受け継がれている。

現行型であるV37スカイラインも、リアサスは新型(RM1型)へと入れ替えられているが、プラットフォーム自体は、改良を加えつつ、使われている。

■まとめ

リアサスペンションに採用された新開発のマルチリンクサスペンション(QI-2)は、以降の日産のほとんどのFR車に採用されている

このように、技術的には素晴らしいものを織り込んだV35だったが、第2世代(R32~R34)スカイラインの海外での大人気ぶりを見ると、V35での大転換は正解だったのか、非常に悩ましいところではある。

現在の日産FR車の惨状を見ると、もしXVLの流れと並行して、R34スカイライン直系デザインのR35スカイラインが出ていたら、どんな現在になっていたのか、と考えてしまう。

**********************************