スーパーGT、GT500戦略

日本のスーパーGT、GT500でも300でも、ウエイトハンディーがある。今までトヨタ強くてウエイトハンディーいっぱい負って、今回はニッサンGT-Rに惨敗した。

しかし、それらを補う手段を考えてないのか?レース何十年やってるの?そんなノウハウもないの?

フツ~に考えて、ウエイト100キロ負わされると思ったら、ダウンフォースを100キロ減らすとか、タイヤを耐荷重上げるとか、あるんじゃないの?

他に、リヤウインドウを負圧で開くようにしたら?フロントインテークから取り入れたエンジンルーム内の空気を、フロントタイヤ後方左右から抜く以外に、コックピットを通してリヤウインドウからリヤウイング方向に抜いたら?

また、トレッドを拡げる意味で、タイヤを細くする手もあるのでは?

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GRスープラ鈴鹿予選敗因は“3~5度低い路温”と空力特性/「通話の9割が関谷さん」だった携帯電話【トムス東條のB型マインド】
8/31(火) 14:46 Yahoo!ニュース
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トムス 東條力エンジニア
 スーパーGTのGT500クラスを始め、国内の各カテゴリーを最前線で戦うトムス。そのチーフエンジニアである東條力氏より、スーパーGTのレース後にコラムを寄稿いただいています。

【写真】第3戦決勝では、接触によりフロントスプリッターが破損していたKeePer TOM’S GR Supra

 第5回となる今回はスーパーGT第3戦『FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 300km RACE』の分析と、レースエンジニアとドライバーとの間の“コミュニケーション術”という2本立てでお届けします。強いチームを作り上げるためのドライバーとの付き合い方は、もしかしたら一般企業にお勤めのあなたにも、参考になるかもしれません。

 まずはニッサン勢が表彰台を独占、とくに予選日はトヨタ勢に厳しいものとなった鈴鹿戦について、エンジニアの視点から鋭く分析します。

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 オートスポーツweb読者みなさん、こんにちは。トムスレーシングのチーフエンジニア・東條です。東京オリンピックが終わったと同時に天気が崩れ、スーパーGT第3戦鈴鹿大会は不安定な曇り空の下、ドライコンディションで行われました。

 予選ではダンロップNSX-GTが速く、64号車Modulo NSX-GT、16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTのワン・ツー、決勝ではニッサンGT-Rの表彰台独占。23号車MOTUL AUTECH GT-R、3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rの順でミシュランのワン・ツー、3位には#24リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(ヨコハマ)が入りました。おめでとうございました。

 ブリヂストン勢は総じて苦戦。最上位は1号車STANLEY NSX-GT NSX-GTが4位でシリーズトップへ。我らトムスは、36号車au TOM’S GR Supraが12番手から怒涛の追い上げを見せて5位入賞、37号車KeePer TOM’S GR Supraは10位と苦戦しました。

 レース序盤の大きなクラッシュでヒヤッとする場面がありましたが、ドライバーは無事でした。レースオペレーションが良く、直ぐにFCY、その後SCへ。大きなアクシデントにも関わらずコースの復元作業はとても早く、安心してレースを続けることができました。感謝します。

■GRスープラ勢、予選苦戦の理由
 さて、GRスープラが、全車Q1落ちを喫してしまいましたね。

 36号車、37号車、14号車ENEOS X PRIME GR SupraはSW(サクセスウエイト)が重い事情もあって、パフォーマンス低めの見積もりなのですが、それにしても力不足は明らかでした。しかし、これには理由があります。

  8月の鈴鹿ですから、タイヤにとっては最も厳しい条件となります。コース特性である高荷重とアグレッシブな路面に、日射による高路面温度が重なることから、タイヤには非常に高い耐久性が求められるのです。いわゆるソフトとかハードとかの呼称がありますが、8月の鈴鹿にはエクストラハードが必要です。

 ちなみにソフトとかハードとか、そういう名前のタイヤは残念ながらありません。

 タイヤのコンパウンドには、1年3組24番の吉田ハナさん、3年2組15番の林タケシさんのように、それぞれクローンはいるものの、個別呼称での管理がなされています。一般的には適応温度が低く路面へ喰い込みやすいものをソフト、高温耐久性が高く剛性や摩耗に優れたものをハード呼び、5月の富士でハードと呼ばれていた3年2組15番の林さんは、8月の鈴鹿に来たらスーパーソフトと呼ばれるのです。学校が変わればニックネームも変わることがあるじゃないですか。そういうことです。

 これを踏まえ、想定される路面温度から、温度レンジの異なるコンパウンドを2種類用意するのが標準的な戦略です。トムスでは25度から50度オーバーをカバーしつつ、耐久性が高く若干高温側へ寄せた硬めの選択をとりました。

 予選日は朝から曇天が続き、決勝も雨交じりの天気予報。公式練習で2種類のタイヤをチェックしたところ、25~30℃の路面ではソフトに優位性があり、温度的には最下限でした。

 予選と決勝を見据えても高温域に達することは無いとの判断から、トムスは2台ともソフトを選択したのです。推測になりますが、気象条件から考えてもGT500全般において、そのような選択が多かったと考えられます。

 予選の路面温度は30度。私たちのタイヤが本来の性能を発揮するには、3~5度ほど温度が足りなかったのです。そしてグリップを高めるアイテムのひとつにダウンフォースがあるのですが、GT500の3車種を見渡した時、GRスープラはそのレベルが若干低いと考えています(空気抵抗少なめで最高速度に優位な特性)。

 トヨタ勢で云えば、コンパウンドそのものはトムスと同じであったり、あるいは違っていたりするものの、温度レンジに着目すると同様な状況にあったと思われます。路面温度が低く、タイヤの発動をわずかに逃したエアロ特性が、予選敗因のひとつであると考えています。

■37号車はフロントスプリッターを破損
 決勝前のウォームアップ走行では、路面温度が40度まで上昇しました。充分です。36号車、37号車は本来のグリップを取り戻し、レースペースに自信を持つことができました。温度もダウンフォースも本当にわずかな差でしかないのですが、時には勝敗を分ける程大きな要因となるのです。

 レースではソフトコンパウンドが性能を発揮しました。36号車、37号車ともに後方スタートでしたが、序盤からトップが見える位置でレースを形づくり、第2スティントへつなぐことができました。

 ペースに余裕があった36号車は、関口雄飛選手が1号車を捉えつつも超燃費戦略をとってピットストップ時間を大きく短縮したのですが、発進時にエンストがあって2秒ほどのロスが生じました。ピットタイミングではベストを逃して1号車に逆転され、集団に埋もれた第2スティントへ。しかし、坪井翔選手のペースが抜群で、大きく順位を上げることができました。

 一方で阪口晴南選手から平川亮選手へつないだ37号車の第2スティントは大苦戦。集団後方で争うことになり、接触でフロントスプリッターを損傷したことによるダウンフォース不足が重なり、充分なグリップを発揮することができなかったのです。

 36号車と37号車で明暗が分かれるレースとなってしまいましたが、ベースラインとしてはどちらも好調であることに変わりはありません。次戦SUGOへ向けて、エンジニアとドライバーは虎視眈々と準備を進めています。

■ドライバーとの相互理解には「最低1年」
 さて今回は、エンジニア(ENG)とドライバー(Dr)の、コミュニケーションのとり方について、考えてみたいと思います。

 走行中、情報のやり取りはラジオで行うわけですが、なるべく話しかけて欲しくないDrがいれば、いつでもどこでも構わず情報が欲しいDrもいます。燃費やコース状況等、決まりごとの他、どのような情報が欲しいのか事前に共有しています。

 ほめて伸びるDrも確かにいて、<速い>とか<カッコいい>とか、そういうフレーズは悪くないです。また、接触やコースアウトがあった時の第一報は、必ず過小評価なので注意が必要です。

 車両開発やタイヤテストをする上で最も重要なことは、速いラップタイムと状況の把握です。

 車に起きている事象を最初を知るのはDrで、コンディション変化やアドバンテージの有無などの判断はENGの仕事です。周囲のあらゆる状況をふまえたうえで、ドライビング中に起こったこと感じたことを聞き出し、がらがらポンとかみ砕いて次のアクションへ移るのです。

 ただし、レースの直後は注意が必要です。互いに戦闘モードが抜けきれず、正確性に欠けるからです。少し時間をおいて、冷静になってからの方が良いです。

 セッション中にはスタッフへの伝達も多くあります。それ故、ラジオのヘッドセットには、Drと話すスイッチの他に、Drには聞こえない秘密のスイッチがあって、大人は上手に使い分けることができます。

 レース中の交信は、聞き取れたらラッキー程度に考えておいた方が安全です。意図をとり違えてしまうことが致命傷になりかねません。必要最小限に抑えるのが賢明です。

 タイヤテストや開発テストでは走行時間が長く、時にセッションは8時間以上にも及びます。各種ミーティングもあり、ENGは一日中喋り倒します。冷えたビールだけではなく、喉スプレーや飴ちゃんは必需品ですね。

 Drには感じたことを、そのまま簡潔に伝えて欲しいです。同じ事象を感じていても、Drによって表現は異なります。複数のドライバーがいても、それぞれの感覚や表現をENGは一つにまとめる能力が必要です。双方が正確にリンクするのには、最低でも1年程はかかるのかもしれません。

 そういう意図もあって、普段から距離を縮めることは大切だと思います。関谷(正徳)さんは、15歳先輩です。御殿場在住ということもあり、現役のころは毎日昼食にお誘いいただきました。セットアップやタイヤのこと、時には私事情についてもよく話したものです。携帯電話を初めて購入したのはその頃で、通話の9割が関谷さんだったように思います。

(土屋)武士や(脇阪)寿一は10歳ほど下に離れていましたが、友人とか同僚のような距離感。年齢ではさらに下のアンドレ(・ロッテラー)や(中嶋)一貴も、年の離れた弟みたいな感覚です。

 現在、主力のドライバーは、雄飛や亮を筆頭に若い人達へ。ENGも然り、自分の子どもよりも年下の世代に移っています。LINEを多用して時間を気にせず連絡を取り合えるようになりました。直接会わずともコミュニケーションは密になっているのかもしれません。

 昨日の友は明日の敵、移籍が頻繁なこの業界には機密事項が多く、皆が本音で話すということでもありません。それでも、いち早く良い成績を残すには、DrとENGの間に隠しごとはない方が良いと思っています。


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