何故、高級車はFRか?テコの原理とシャフト結合だ。

何故、高級車はFRか?まず、クルマをレイアウトの観点で、2WDとして考える。

2WDのクルマのレイアウトとしては、FF、FR、ミドシップ、RRの4つと考えられる。(フォークリフトみたいなミドシップのフロント駆動などは、割愛する。)

FFとミドシップ、搭載スペースをコンパクトに纏めるため、基本はエンジンを横置、平行してミッションを置き、デフに繋がる。エンジンもミッションも、タイヤ回転と同じか逆回転になり、振動を抑えるのが厳しい。駆動輪が、荷重のあるフロントかリヤかで多少違う程度だ。また、FFもミドシップもエンジンを縦置しているモノもある。制振の上では良いが、省スペースの観点では意図をハズれる。

RRでVWやポルシェは、縦置のエンジンとミッションを使用して来た。横置FF的なエンジン&ミッションでのRRはないが、制振の上で問題ある塊を後軸以後に置くメリットは、スペース効率しかない。

FRのメリットは、エンジンと駆動輪を離すコトによるテコの原理とシャフト結合による制振、ミッションを前に置くか、後ろに置くかでも重量配分を調整できる。馬力やトルクが大きくなっても、シャフト結合により容量に余裕がある。90年以降、V12フェラーリミドシップをやめ、FRに転換したのも、一因としてある。

 

 

 

 

 

 

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なぜ高級車はFRレイアウトなのか? その独特の乗り味とは
4/12(火) 15:45 Yahoo!ニュース
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マツダが発表した新しいラージ商品群の第1弾となるCX-60
 マツダがFRの新しいラージ群プラットフォームを採用したSUV、CX-60を発表した。これに対し、新開発された直列6気筒エンジンと合わせて「時代に逆行している」という見方をする声も聞かれる。

【画像】最新のメルセデス・ベンツSクラスのパワートレイン

 もちろん登場を歓迎するコメントも少なくなく、セダンに対する期待を含めて、ネットではさまざまな記事や意見が溢れている。では、今回のポイントの1つであるFRとはいったい何なのだろうか?

FF主流の中で、FRが残っているのはなぜ?
 FR(フロントエンジン・リアドライブ)という駆動方式は、クルマの黎明期から存在する最も基本的なシャーシレイアウトだ。ボディの前にエンジンを置き、後輪を駆動する方式だ。しかし今では主流は完全に、前輪を駆動するFF(フロントエンジン・フロントドライブ)になって久しい。

 エンジンを横置きするFFは、駆動部分をフロントに全て置けることから軽量コンパクトであり、広い居住空間と安定感の高い走りを実現できるという特徴がある。

 FRは高度成長期には軽自動車にも採用されていたが、それは普通車をサイズダウンしたような設計のアプローチや機構の小型化が難しかったという技術的な障害のためだった。だが設計技術や工作技術、材料の進化によって、部品や機構の小型化が可能になり、それによりコストダウンも進んだことで、FFは乗用車で主流となった。

 その結果、FRは前輪が操舵、後輪が駆動というタイヤの役割分担を明確にして余裕を持たせるだけでなく、ボディサイズに余裕があるクルマにのみ採用されていくことで、ゆとりある走りを高めていくことになるのだ。

 Lサイズセダンを世界市場で見渡してみれば、メルセデスBMWもFRがベースであるし、キャデラックはかなり前からFFへとレイアウトを大胆に転換したのだが、近年になってFRを基本へと戻す動きを見せている。それは大きなボディサイズだからこそ生かせるFRの魅力と、FRでなければ生み出せない乗り味が高級車には欠かせない、と判断しているからだろう。

 今や世界中の乗用車の主流がFF車であるにもかかわらず、FRが生き残っている、そして再び見直されつつあるのは、FFレイアウトでは得られない領域に自動車メーカーが商機を見出しているからなのだ。

FFのポテンシャルに限界も
 横置きFFの場合、エンジンと平行に変速機が備わり、ディファレンシャルギアを介してドライブシャフトを回し、フロントタイヤを駆動する。この仕組みには、ちょっとした悪癖も存在する。そこには進行方向を軸とする力の伝達はなく、全ては車体横向きの車軸方向、すなわちピッチング方向の力だからだ。

 発進時、エンジンの力は変速機によって回転数と引き換えに駆動力を高めて、車体を動かし加速させるのだが、動こうとする時や加速する時には、タイヤが地面を蹴るのとは逆向きの反力が発生する。これは駆動力と釣り合う力ではなく、発進時の抵抗と釣り合うものだ。

 従って反力は動き出す瞬間が最も大きく、車速が上昇していくほどに加速度が小さくなり反力も減少していく。そして定速走行に移り、慣性力も手伝って反力は極めて小さくなる。反力がゼロになるのは、加速も減速もしないパーシャルな領域から走行抵抗分だけ減速される一瞬の領域だけで、減速中はエンジンの反対方向に反力がかかることになる。

 例えば加速途中にアクセルを戻してしまうと、クルマは結構な衝撃を伝えてくることがある。それはエンジンブレーキがかかる(ATではそれほど大きくない)だけでなく、反力が逆向きになるからだ。

 ちなみにATのトルクコンバーターは、そういう衝撃すら吸収してくれるから、滑らかな走りを実現するためにはトルコンは欠かせないデバイスだ。

 それでも大きな反力には耐える構造と吸収できる仕組みを備える必要がある。そこでエンジンマウントを工夫して、トルクロッドにより前後方向の反力から支えていくことになる。

 1990年代には振動の解析技術が進み、液体封入型のエンジンマウントも登場することでエンジンが発する振動はほとんど車体に伝えられなくなってきた。トルクロッドのブッシュも容量や形状などが工夫されていくことで、反力を受け止めながらも衝撃は吸収するという相反性も高めていった。

 クルマに発生するピッチングは、他にもボディ形状やオーバーハング、重量配分にサスペンションのジオメトリーなどなど、さまざまな要素が絡み合って発生する。クルマを開発するエンジニアたちは、それを丹念に改善することで、FFの悪癖を解消させていったのだ。

 ピッチングを誘発する反力を抑え込むことで、横置きFFは単に軽量コンパクトなだけでなく、広い居住空間と安定感の高い走りを実現し、ミドルクラスまでの乗用車ではカバーするポテンシャルを身に付けたのである。

 こうしてFF車は一般的になり主流になり、そこから4WD車も開発されることで横置きレイアウトはますます主流となっていく。

 昔はトルクステアやステアリングのキャスターアクション(クルマが直進状態へと戻るようにする動き)などに問題があったFF車だが、自動車メーカーのエンジニア方の努力により、われわれドライバーが普通に運転したくらいでは、駆動輪がフロント/リアのどちらにあるのか感じないくらい、FF車のハンドリング性能は洗練された。

 その一方で、FF車ならではの生産性の高さや軽量性、燃費性能の高さもますます磨きが掛けられて、世の中の乗用車のおよそ9割はFF車(FFベースの4WDも含む)になった。

 しかしFF車の走りを洗練していくほどに、それはFRとの素性の違いを感じさせることにもなる。より上質を目指していくと、横置きFFというレイアウトの弱点を認識させられることになるのだ。

優雅でゆとりある動きはFRならではの素性の良さ
 FRのメリットの1つは、FFに比べて前後の重量配分を均等化しやすいことだと一般的にいわれている。しかしそれは電動4WDが普及している現在では、最早メリットと呼べるものではない。では、FRのメリットとは何だろう。

 前述の反力に関してだけでもFRは有利だ。縦置きエンジンと変速機が作る駆動力を、デファレンシャルギアで90度向きを変換してドライブシャフトに伝えることでリアタイヤを駆動しているため、反力の大半はリアデフケース回りに掛かることになるのだ。

 もちろん駆動力が変換されるように、反力も向きを変えて変換される部分もあるが、全ての反力がパワーユニットに伝えられるわけではなく、分散される。FRでは反力への対策は非常に控えめで済む。

 アウディがFFでも縦置きにこだわった理由はここにもある。小型車では圧倒的に全長方向にコンパクトに仕上がる横置きではなく、縦置きのエンジンと変速機にすることで走行中の加減速に対して車体が安定方向にあることが利点だったのだ。

 後にフルタイム4WDを開発するためにも、この縦置きレイアウトは役立ったが、衝突安全性の確保もあってボディサイズに余裕があったことから横置きにしてコンパクトにする必要がなかったのだ。

 そして加減速での車体の落ち着きだけでなく、走行中の安定感を高めてくれる効果もFRというレイアウトの魅力になっている。

 エンジンのクランクシャフトや変速機のインプットシャフト、カウンターシャフト、メインシャフト、そしてプロペラシャフトといった車体の中心を貫く大きなシャフトが、走行中に回転することで発生するジャイロ効果により、車体の安定性が高まるのである。

 車体が大きくシャフトのサイズも大きいクルマほど、安定感へ貢献することになる。それゆえ、大型高級車において走りの質感をこれ以上ないほどに高めるには、FRレイアウトを基本とすることが理に適っているのである。

FRプラットフォームの可能性とその未来
 マツダのラージ群プラットフォームは、洗練された乗用車の走りとスポーティなハンドリングを両立させることが目的らしい。そういった意味では人気のSUVを第1弾としてリリースするのは当然ながら、その後に控えるセダンやクーペなどにも当然期待がもてる。

 さらにトヨタも次期ラージプラットフォームはマツダ製をベースとするのではないか、という情報もある。またスバルも、同様にマツダのプラットフォームを利用する可能性もある。

 サイズに余裕があるラージプラットフォームであれば、各社独自のパワーユニットを組み合わせるようなことだって実現しやすい。直列6気筒水平対向エンジンという、対極にあるようなエンジンを、同じプラットフォームで搭載することも可能なのだ。

 最後に、FRレイアウトの無駄は余裕、ゆとりを生むだけではないことをお伝えしよう。かつて取材した工場で、こんな話を聞いたことがある。メルセデス・ベンツのSクラスが衝突事故に遭って運ばれてきたそうだ。オーナーは幸い軽傷だったが、ボディの損傷は大きかった。

 驚くべきことは、ボディの前面が潰れているだけでなく、エンジンが押し込まれたことで変速機やプロペラシャフトを介して、リアアクスル上にあるデファレンシャルギアがバラバラに破壊されていた。つまりデフが衝撃を吸収して破壊されることにより、衝撃を吸収していたのである。

 そこまで損傷が激しければ当然、全損扱いになるのが通常のケースだが、このSクラスのオーナーは「自分の命を守ってくれたクルマだから」と修復を依頼したそうだ。

 キャビンを守る用心棒のような役割をすることさえあるFRレイアウト。高級車にとって乗員を守ることは重要な要素だけに、案外こんなところも採用の秘訣であるのかもしれない。

(高根英幸)
ITmedia ビジネスオンライン

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