バブル後の迷走は、ニッサンやホンダだけじゃなかった!

バブル期、割と何を出しても売れたせいで、クルマ作りを甘く見て、日本や世界の市場対応したスペック設定が疎かになった。80年代終盤から、税制が大排気量車にユルくなり、3ナンバー2.5リッターがおトクになったとはいえ、ソレはカネだけの話。車庫や駐車場や道幅が、広くなるワケではない。ソレを、ニッサンやホンダだけでなく、トヨタでも勘違いした。

トヨタセラ、このインセクト型ドアは、ランボルギーニカウンタックのドアとは全くコンセプトが異なる。

カウンタックは、剛性確保の必要からサイドシルやセンタートンネルを高く取るため、ドア側面が小さく、上にスペースを設けないと乗降困難だった。車幅広いため横開きは×、フロントを軸にスイングアップさせた。おかげで、側方への張り出しは皆無だった。

セラは、ただのお飾りドア、ソレっぽく上にハネ上がれば良いと、ヒンジをピラーに付けたため、乗降時に上方にも側方にも張り出していた。この愚ドアは、マクラーレンF1他に引き継がれた。

ちゃんとしたクルマとして、出して売る気があれば、SW20型MR2と共用した、より先鋭化したミドシップスポーツ、ペラペラ鉄板溶接モノコックでも、高いフロアトンネル&高いサイドシルでカウンタック型のスイングアップドアのクルマにすべきだった。

安直にFF派生車種にしたせいで、売りはドアだけ、安かろう悪かろうなクルマになった。

唯一のインパクトはCM、吉川晃司&布袋寅泰のコンプレックス「BE MY BABY」が使われたコトだけだった。

 

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こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 時代に翻弄された斬新過ぎるガルウイングドアのセラ
2023.08.23 12:02掲載 ベストカーWeb 3
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これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、1990年代に華々しく登場したトヨタスペシャルティクーペ、セラについて紹介していこう。

こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 時代に翻弄された斬新過ぎるガルウイングドアのセラ

文/フォッケウルフ、写真/トヨタ

■ショーカーそのままに市販化された超個性派コンパクト

1987年、晴海で行われていた第27回東京モーターショートヨタブースで、小型のスペシャルティカーのコンセプトモデルが披露された。

「AXV-II」と名乗ったそのクルマは、フロントからルーフ一体のドアガラスとし、リアハッチまでガラスで覆われたグラッシーキャビンのスタイルに、ガルウィングドアを装着した小型車のスーパーカーとして注目を集めた。好評を博したこのAXV-IIは、ほぼそのままの姿で「セラ」というネーミングで市場へ導入される。

ベースになったのは1987年の東京モーターショーに出展されたAXV-II。1989年にはセラとして公開され、翌年正式発売となった

セラが誕生した背景には、次世代のモータリーゼーションを担う若者層の心を捉えるモデルを新たに開発するというトヨタの取り組みである「ヤングプロジェクト」があり、実際に開発に携わったスタッフは、柔軟な発想をする若手が中心だったと言われている。

グラッシーなキャビンによって、乗り込むだけでフルオープンのような開放感が味わえることや、カウンタックのようなガルウイングドアの採用などは、それまでのトヨタ車ではありえない試みだった。

一見、普通のスポーツクーペのように見えるが、キャビンスペースがほぼガラス張り。そしてドアを開ければガルウイング式と、まさにスペシャルなクルマである

まさにバブルの申し子。セラは、未曾有の好景気に浮かれた社会背景があったからこそ生まれたクルマと言っていい。しかし、モーターショーの雛壇に並ぶショーカーではなく、市販するとなればさまざまな制約が求められる。

たとえば、ガルウィングドアやボディ本体の剛性を確保したり、仮に事故を起こして転倒した際に乗員をどうやって守るか。さらにドア開閉時の操作性や悪天候時の対処といった日常的な用途における利便性など、自由な発想を具現化した裏には、開発陣の並々ならぬ研究の跡が垣間見られる。

大きなウインドシールドが連続曲面でつながるグラッシーなキャビンがもたらす開放感はオープンカーのそれに匹敵するものだった。外界と隔絶しているため一般的なオープンカーのように風を感じることはできないが、ルーフ部にまでまわりこんだガルウィングドアとサイドガラス、大きな3次曲面のリアガラスを組み込んだパノラミックハッチによって、天候に左右されずに抜群の開放感が享受できた。

斬新なスタイルを眺め、クルマに乗り込むたびに、非日常や意外性が感じられるのは、セラを手にしたユーザーだけが手にできる価値だったと言えるだろう。

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