中庸を得た歌詞、そして時期・・・3月9日

レミオロメン「3月9日」は元々、友人の結婚に際して作られ、歌われた。しかし、今では3月9日という時期の問題と、結婚に偏らない心理や情景描写された歌詞がそう思わせるのだろうか?

ミュージックビデオでは、まだ幼さの残る堀北真希が親戚の結婚で揺れる心情を演じたのではなかったか?

Z世代では、コレを卒業ソングに位置付けた。きっと、ミュージックビデオは切り離し、曲や歌詞を聞いて判断したのだろう。曲や歌詞の味わいに、絶対の正解はない。味わう側がそう思えば、ソレが正解になる。時期と曲と歌詞の相互作用によるモノであろう。

 

 

 

 

 

**********************************

レミオロメン「3月9日」はいつから“卒業ソング”に? 普遍的な歌詞がもたらす無限の解釈
3/9(水) 12:02 Yahoo!ニュース
 203
 
レミオロメン『3月9日』
 今年も“3月9日”がやってきた。

 例えば、夏が近付いてきたら夏ソングを、クリスマスが迫ってきたらクリスマスソングを、というように、それぞれの季節やシーズナルイベントの到来に合わせて、それに関連する楽曲を思い起こし、実際に街中で耳にする機会が増えていく。同様に、毎年3月9日にレミオロメンの「3月9日」を思い出し聴く人もきっといるはずだ。

【写真】「3月9日」をカバーしたLittle Glee Monster最新インタビュー

 年度の終わりである3月は、“別れの季節”というイメージが強いかもしれない。より具体的に言えば、学生にとっては“卒業”の季節であり、ビジネスパーソンの中にも、新年度のスタートを前にしたこのタイミングで、今の環境から“卒業”する人も少なくないだろう。そうしたイメージが重なったからだろうか、まさに3月というワードをタイトルに冠した「3月9日」は、いつからか小中学校、高校などの卒業式の場で歌われる定番の“卒業ソング”となった。ちなみに同曲は、2005年に放送されたドラマ『1リットルの涙』(フジテレビ系)における合唱シーンでも用いられた。同ドラマでの起用は、楽曲が大きな存在感を持つ一つのきっかけとして挙げることができる。だが、それが一時的なブームとして終わらなかったのが「3月9日」という楽曲の凄さでもあるのだ。

 先日発表された、Z世代が選ぶ『卒業ソングTOP10』(Simeji調べ)では、あいみょん「桜が降る夜は」、YOASOBI「ハルカ」、yama「春を告げる」といった新世代アーティストたちの楽曲を押さえて、「3月9日」が1位に輝いた(※1)。おそらく、Z世代(同アンケートの対象は10歳~24歳の男女)の人の多くはリリース当時に同曲をリアルタイムで聴いていたわけではなかったはず。つまり「3月9日」は、同じくランクインしたアンジェラ・アキ「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」や、いきものがかり「YELL」と並んで、今やJ-POPのスタンダードナンバーとして歌い継がれている、ということだ。ではなぜ、「3月9日」はいくつもの年数を重ねていくなかで、定番の“卒業ソング”となっていったのだろうか。

 有名な話ではあるが、「3月9日」はもともと“卒業”をテーマとして書かれた曲ではなく、レミオロメンのメンバー3人の友人の結婚を祝うために作られたものであった。(堀北真希が出演する「3月9日」のミュージックビデオでも結婚式のシーンがある)その友人が結婚式を挙げる日が3月9日であり、それにちなんで同曲のタイトルも「3月9日」になったという。

 改めて歌詞を読み返してみると、たしかに直接“卒業”を描いた言葉が用いられていないことに気付くはずだ。また、ラストのサビ前における〈この先も 隣で そっと微笑んで〉という一節などは、この楽曲が“結婚ソング”として生み出された証の一つであるように捉えることができる。作詞作曲を手掛けた藤巻亮太は、具体性を含んだ描写を避けながらも、普遍的な“新しいはじまりの季節”を描いていることに気付く。その最も象徴的な一節が、2番のBメロ〈新たな世界の入口に立ち/気づいたことは 1人じゃないってこと〉という言葉だ。一般的に“卒業”というと“別れ”が想起されることが多い。しかし、“卒業”を“新しいはじまり”と前向きに捉えた時、「3月9日」という楽曲に“卒業ソング”としての意義が宿るのだ。

卒業ソングの文脈を持つに至った普遍的な歌詞
 〈瞳を閉じれば あなたが/まぶたのうらに いることで/どれほど強くなれたでしょう/あなたにとって私も そうでありたい〉というサビの一節を振り返ると、〈あなた〉という普遍的な二人称のワードは、これから人生を共にする“(結婚の)パートナー”とも、卒業後に別々の道を歩む“友人”とも捉えられることに気付く。「3月9日」は、そうした様々な解釈を可能とする奥行きと余白を秘めているからこそ、“結婚ソング”という本来の意味合いを超えて、“卒業ソング”としての文脈も持ち合わせるに至ったのだと思う。

 このように、作り手の本来の意図を超えて、その楽曲が新しい意味合いを持つことはポップミュージックの世界では決して珍しいことではない。ここでは“パートナー”と“友人”という例を挙げたが、さらに言えば聴くリスナーの数だけ、〈あなた〉の捉え方があって然るべきかもしれない。楽曲のメッセージをどう受け取るか、もしくは、楽曲がその人の、その時々の人生にとってどのような意味を持って響くか。そこには無限の解釈があり、それこそがポップミュージックの奥深さではないだろうか。

 「3月9日」は、今やJ-POPのスタンダードナンバーとして、数々のアーティストによってカバーされている。この2022年には、Little Glee Monsterがカバーしたバージョンがリリースされ、大きな話題を呼んだ。こうしたシーンの動きもあって、曲の存在感は年を重ねるごとに強まっているように思える。藤巻が描いた景色はとても普遍的なものであり、その必然として、「3月9日」はこれからもいくつもの時代を超えて、“新しいはじまりの季節”を彩り続けていくはずだ。

※1:https://simeji.me/simeji-ranking/backnumber/2022_78/
松本侃士

**********************************